超人と人魚が同居するそうです。

一匹狼の雇い主

一話『はじめのはじめ』

痛い。

暗い。

怖い。

終わりのない暗闇が、ただただ広がっているだけ。

そこに意味はない。

そこに、僕がいるだけ。

僕が閉じ込められているだけ。

僕が痛がっているだけ。

僕が怖いだけ。

意味はない。

意味は無いはずだ。

意味は…無いはず…なのに。

君はなぜ…僕を助けるの…?

駄目だよ…そんなことしたら…君まで捕まっちゃうよ…

やめて…やめて…

………………

なんで…やめないの…?

嬉しいのに…涙が出てる…?

………………

「ねぇ、君はこんなところに、ずっといたい?」

え……?

「嫌なんだったら、一緒に来て!私と一緒に、湖で暮らそう!」

そう彼女に言われたのが、すべての始まりだった…










「おはよ。」

「あ、おはよー。」

僕の名前はカイ。
自分が何なのかわからないところ以外は、普通だと思う。
今日も朝、普通に起きたし。

「朝ごはん、できてるよ。」

この子はシロ。
僕を助けてくれた、人魚の女の子。
人魚と言っても、下半身が魚のやつではなく、普通に泳ぎがうまいだけの女の子に見えるが、本人曰く人魚らしい。

「今日も練習?」

「もちろん!全部できるようになるまでやるんだよ!」

「え〜…」

練習というのは、魔法の練習だ。
今日は風魔法の練習らしい。
正直、魔法の練習はあまり好きではない。新しい魔法を研究するのは楽しいが、魔力を使うので疲れる。

でも、魔法ができない僕にシロは教えてくれているのだから、感謝しないといけないな。
そう考えていると、いつの間にか朝食を完食していた。

「ほら!食べ終わったんなら早く行くよ!」

「待ってよ!僕泳ぐの遅いんだから〜!」

僕らの家は、アイカ森の湖の底にある。
そのため、家から出るためにも家に入るためにも水面まで、水面から泳ぐ必要がある。
魔法の練習は外でするため、早めに外に出ないと遅れてしまう。

「待ってってば〜!じゃあルカ、行ってくるね。」

ルカというのは、家で飼っているイルカの名前だ。
「ルカ」と呼ぶと
「キュイッ!」
と返事をしてくれる。
今日も元気だ。

普段は水面でジャンプしたりしているので、いつか人間に見つからないか心配だ…

「行ってきますっ!」

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