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死に損ないの異世界転移

ねこまたぁ

第9話 エルフの村

 六種族の中で最も歴史が長く、平和を願い、武器を持たない種族がいる。その種族の平均寿命は四桁で、更に鋭く尖った耳を持つ。
 彼らの種族はエルフという種族だ。そして彼らの都市国家は基本的に森に覆われている。
 エルフ族の都市国家はちゃんとした政府のようなを持たない。例えば獣人族なら王が君臨し王政を敷いているが、エルフ族は政府のようなものがあまり確立されていない。それぞれ小さな村の集合体でしか無いのだ。
 故にエルフの代表者は元首を選ぶ投票は行うものの、あまりそういったことに関心の無い彼らは、何も考えずに一番の年長者に投票するため、その年長者という事になっているが、特に何かする訳でもなく、椅子に座っているだけのような状態だ。

 ルーナがもたらした情報は、そのエルフ達の村、しかも俺ら二人を保護してくれた村から火の手が上がっているとの情報だった。
「と、とにかくエルフ族に連絡して、彼らの軍隊を出して貰おう!」
 そう提案したが、バルドゥルさんやギュンターさんはあまり浮かない顔だった。
「期待はしない方がいいッスよ?」
「なんでですか?ギュンターさん」
 ギュンターさんは深刻そうに続けた。
「エルフ族は本格的な軍隊を持たないッス。中央から派遣されてる少数の部隊と、各村ごとに自警団がある程度ッス…」
「つまり…」
「今我々からエルフ族に対して情報を提供したところでエルフ族は動かないッス。動かしたくても多分軍隊が言う事を聞かないッス…」
「じゃあここから兵を出そう!」
「それこそ無茶ッス!クーデターの直後ッスよ?それこそ治安の維持で限界ッス!」
 八方塞がりか…誰かものすごく強い人がいれば…あっ…
「名取…さん…?」
「道案内が必要ね」
 ヤバい行く気満々だ、確かこっちに来てすぐの時に、魔法をぶっ放したいなんて言ってたような気がしなくも無い。
「ミオさんの戦闘力なら問題無いかもしれないッスけど…」
「それなら、ギュンターさんに頼んでも大丈夫ですか?」
「じ、自分っスか?!」
「えぇ、移動中に新しい魔法も教えて欲しいので、お願いします」
「ああ!もう!わかったッス!」
 結局二人と、水魔法の得意な者数名でエルフの村に急行する事が突発的に決まった。
 その旨をルーナ伝えると、
『分かりました!こちらももうすぐ現場に到着します!』
と返事が返って来た。それとほぼ同じタイミングで名取達も出撃した。


 森の焼ける匂い。建物が焼ける匂い。そして、エルフ達が焼ける匂い…そこには地獄が広がっていた。
 そこにあったはずのエルフの村は炎に焼かれ、そこに住んでいたエルフ達は次々と魔族に殺されていた。
「なんてこと…」
 一部の武器を持ったエルフが応戦していたが、もはや時間の問題だった。
「突撃だ!エルフを救い出し!村を鎮火する!魔法が使える者は積極的に鎮火作業に従事せよ!」
 ルーナが号令をかけると率いられていた獣人族の部隊がエルフを襲う魔族に突撃を開始した。
「ルーナ様」
「どうしたの?マクスウェル」
「奴らの一部は魔獣と一緒にいた取り巻き連中です。何体か見た事のあるヤツがいます」
「じゃあ…こうなったのは私達の…」
 ルーナがそう言いかけると、マクスウェルはそれを遮った。
「それ以上は言ってはいけません。今回の事態に我々の非はございません。自信を持ってください」
「そうね…それよりも、今は目の前の事に集中しないと!」
「その調子です。殺し損ねた魔族を一匹残らず殺し尽くしましょう」
 真顔でそう言い切ったマクスウェルに、さすがのルーナも少々戸惑いを隠せなかった。


「ああ!チクショー!むしゃくしゃするなぁ!」
「やめて下さい…命だけは…」
「うるせぇ!オメェはな!これから熱い熱いって言いながらのたうちまって死ぬんだよ!じゃあな!」
 そう言って指をパチンと鳴らすと、そのエルフの少女に四方八方から火が押し寄せ、その身体を焼き尽くした。
「まだだ、まだ足りねぇ。もう何人か殺さねぇと気が済まねぇ」
 すると横から色気のある声が聞こえてきた。
「魔王軍の師団長がそんな短期でやってられるの?」
「うるせぇ!リリスは黙ってろ!こっちはな、頼まれて造ってやった魔獣がな!たった二日で殺されちまったんだぞ?しかも人間ごときに!」
「あら?そんな欠陥品を造ったイフリートが悪いんじゃない?」
 そうリリスが挑発すると、目の色を変えたイフリートがリリスの胸ぐらに掴みかかった。
「てめぇ俺様の事を舐めてるのか?」
「それ以上私に触るなら魔王様に報告するわよ?」
「チッ!」
 イフリートがリリスから手を離すと、リリスは
「それじゃあね、早めに帰ってくるのよ」
 とだけ言い残し、黒い円状のゲートから何処かへと去っていった。
「ムカつく女だぜ!おい!お前!もっとエルフを連れてこい!」
「申し訳ございませんがイフリート様、もうこの村のエルフはほとんど狩り尽くしてしまいました」
「なんだと?じゃあ次だ!一番近い村はどこにある!」
「ここから北西方向に一つございます」
「そうか、ならそっちの村に行くか」
 イフリートがそう言って翼を広げて飛び立とうとすると、突然後ろから声が飛んできた。
「待て!これ以上すき勝手はさせない!」
 その声の主は真っ白な猫の耳と尻尾が生えていた。
「なんだテメェ…死にてぇのか?」
「はっ………」
 その白猫は急に怖気付いて、何も喋らなくなってしまった。
「ルーナ様ここは私が…貴様か村を焼いたのは…」
 そう言ったのはマクスウェルだった。
「そうだ、だからどうした?こっちはなぁ手塩にかけて造った魔獣がだった二日で殺されてなぁイライラしてんだよ」
「魔獣?…二日?…まさか、あの熊の魔獣はお前が!」
「なんで知ってるんだ?まさか俺様の魔獣を殺したのはテメェらだな!ぶっ殺す!」
 イフリートはそう言うと同時に火炎弾をルーナとマクスウェルの方向に放った。
「なっ早い!」
 戸惑っているマクスウェルと違い、ルーナの対応は早かった。
「水よ!」
 ルーナがそう言うと、一瞬にしてイフリートの火炎弾を相殺した。
「おうおう!なかなかやるじゃねーか!」
 イフリートの目は輝いていた。イフリートにはルーナが自分にとっての好敵手になる事が、この一戦ですぐに分かったのだ。
「よし!ならこれならどうだ!」
 そう言って一回り大きな火炎弾を放ったイフリートの顔は、どちらかと言えば“笑顔”だった。
 ルーナは瞬時に応戦したが、少し遅れた。イフリートはそれを見逃さなかった。
「隙ありぃ!」
「まずいっ!」
 ルーナが気付いた時にはその懐にイフリートの姿があった。その手には既に火の玉が完成しており、あとはルーナに当てるだけ、その段階まで来ていた。しかし。
「させるか!」
 二人の間に割って入ったのはマクスウェルだった。マクスウェルはイフリートの攻撃が直撃し、衝撃で近くの木に体を叩きつけられた。
「チッ!邪魔が入ったか」
「マクスウェル!」
「おいおい!他人に気を使ってる暇なんてあるのか?!」
「ぐっ…」

 その後もイフリートとルーナの間で魔法の打ち合いが続いた。しかし状況はイフリートの攻撃をルーナが受け止めて続けるという、イフリートの一方的な展開だった。
 だが、およそ一時間ほど経った時、状況は変わった。
「もう魔力が…」
 そう言ってルーナは地面に崩れ落ちた。
そこにイフリートの無情な声が降り注ぐ。
「当たり前だろ?こっちは魔族だぞ?魔力勝負でお前らが俺様に勝てるはずねーだろうが!」
「うっ…もういい…撤退よ…総員撤退…殿しんがりは私が…」
「で、ですが!」
 一人の兵士がそう言ったのに対し、答えたのはイフリートの方だった。
「チッ!せっかく大将がそう言ってるんだ、早く逃げたらどうだ?大人しく命令には従った方がいいぞ。それに今退くなら追わないでやる!ここにいる大将の勇戦に免じてな!」
「で、ですが…」
「早く!」
「ルーナ様…」
 その兵士はルーナに向かって敬礼をすると、周りの兵士をまとめ始めた。
「さて、お前の戦いぶりには俺様も感心した。この俺様にこれだけついてきたんだからな。だからお前を一瞬で殺してやる。痛みも感じない速さでな」
 そうイフリートは言うと、人差し指を立てて、その上に火を集め始めた。
「ちょいと時間がかかるが、どうせ死ぬんだ。構わんだろ?」
「こんな所で死ぬのか、姉さん…ごめんなさい…いつも迷惑ばかりかけて…」
「さぁ心の準備はいいか?!死ね!」
 イフリートはその指先に集めた炎の塊をルーナに向かって投げつけた。
 その時だった。
「ルーニャ!」
「はっ!姉さん!」
 動けないルーナを押しのけたのはミーニャだった。
 そしてそれと同時に、ミーニャはこの世界から姿を消した。

つづく





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