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死に損ないの異世界転移

ねこまたぁ

第7話 反旗

「相変わらず田村君は鈍感ね」
 気が動転している俺と相対して平然としているのは、一緒に転移してきたクラスメイトの名取 澪だった。
「ど、どういう事だよ!」
「今までの敵の動き方、あまりにも正確に襲撃してきたと思わない?」
「つまり…」
 つまり名取が言いたいのは自分達のすぐそばに内通者がいたという事だ。確かにミーニャが俺達を迎えに来る前から襲撃に対する予防線を張っていたにも関わらず、大胆な動きを取っていなかった辺りから推測すると、内通者がいる事は分かっていたが誰だかは分かっていなかった様にも思える。
「そう、内通者はフランクリンだったという事よ。昨晩は彼が私達の位置を発信し続けていた。そうでしょミーニャ」
「その通りだにゃ。今回の一件でやっと割り出せたにゃ。魔物に襲われたのも、森に魔獣が出現したのも、夜に敵部隊の襲撃を受けたのも、全部フランクリンが糸を引いてたにゃ」
「夜に襲撃?やっぱりそういう事だったのね」
「あっ…まぁミオちゃんも薄々感づいてたとは思ってたにゃ」
 やはり名取の事だ気づかないはずが無い。
「だが、この遺体はどうする?」
「安心して下さい」
 そう答えたのはルーナだった。
「すでに忌引きの届けは出しています。しばらく実家に帰っている事になっていて、その道中の不慮の死にする事になっています」
「用意周到な…」
「よし、内通者はもういないはずにゃ!総員、決行は明日の夕方、私達討伐隊が最も離れたタイミングだにゃ!」
「「「はっ!」」」


 一夜が明けた。俺と名取は王都に残って、クーデターに加担する事になっている。一方ミーニャ達は獣人族の辺境で魔獣討伐および敵勢力の引きつけだ。
 すでにミーニャ達は出発していた。王国軍総勢約千人+募集に応じた義勇兵や金で雇われた者が数百名いる。その内600人程度はミーニャの息のかかったクーデター派である。
「ミオ殿、カズユキ殿ワシらも準備を始めますぞ」
「わかりました」
「了解だぜ」
 今回動員するクーデターの部隊は総勢500名ほどで、対する王都および王城の守備隊は数千人にも登る。
 作戦は以下の通りである。まず各所に散らばった部隊が王都を撹乱する。王城から王都に兵を集中させたタイミングで数十名の精鋭部隊が王城に突入し、陥落させるのだ。
 倒すべき目標は、獣人王ギーク…ではなく、彼により派遣されて来ている政務代行エトムントである。ギークは交易中央都市にいるため、獣人族の都市国家のある程度をエトムントに任せているのだ。その彼を拘束又は殺害してしまえば獣人族の都市国家は反ギークになびくだろう。
 そして名取と俺はこの作戦で精鋭部隊と一緒に行動する。名取は俺たちが王城を制圧した事を宣言し、国民達に理解を求めるのだ。名取の卓越した演説ならば、異世界であろうとも大衆をひきつけられるだろう。
 対する俺は『肉壁』である。まぁ死なないからね…それにしてもバルドゥルさん、俺の扱い雑すぎるよ…

 昼の王都の賑わいもおさまり始めた頃、準備していた連絡魔石が輝き始めた。
『こちら討伐隊のルーナです。ただ今魔獣との戦闘が始まりました。順次そちらも行動をお願いします』
「バルドゥルさん!討伐隊が戦闘を開始したらしい!こっちも動こう!」
「相分かった!作戦開始!伝令だ!伝令兵は連絡魔石で伝達を開始せよ!さて、我々も突入の準備を始めますぞ!」
「「了解です」」
 ついに王都奪取の作戦が始まった。伝令を受けてすでに至る所で陽動のための騒ぎが起きている。各所から駐屯兵が騒ぎの鎮圧のために駆り出されている。今なら王城も手薄になってるはずだ。

「最短で行くのじゃぞ!ギュンター!」
「任せといて下さいっス!」
 バルドゥルさんにそう言われたのは三等魔導士官のギュンターさんだ。ミーニャとルーナは二等魔導士官だが、一つ階級が違うだけで、かなり差があるのだと言う。
 そんな彼は次々と札に魔力を込めると、壁に貼って入り口を作り、その建物の対角線の場所に出口が来るようにしている。そこに精鋭部隊が続き、王城までの最短距離を駆け抜けているのだ。
「よし!到着っス!」
 到着いたのは王城の東門だった。王都のつくりは、王城の周りに城下町が広がっている形になっている。中でも南門は一番大きく、警備も頑丈だが東門は比較的警備の手薄な場所だった。
「よし、一気に行くぞ!突入!」
 バルドゥルさんが号令を下すと、精鋭部隊はあっという間に東門を制圧してしまった。あれっ?『肉壁』要らなくないっすか?

 その後は一瞬の出来事であった。精鋭部隊は1人も脱落する事もなく、かつ敵の犠牲者も最小限に抑えながら王の間までたどり着いた。ここまで来る直前で一度激しい抵抗にあったが、肉壁作戦が功を制し、敵を殲滅する事に成功した。ちなみに俺はその抵抗で弓矢で三回は殺されている。
「後は王の間にいるエトムントを拘束して、兵達を帰順させれば終わりじゃ。最後まで気を抜くんじゃないぞ」
「「「はっ」」」
「では…カズユキ殿一番槍を頼みますぞ」
「でっすよねー!もういい!どうにでもなれ!」
 吹っ切れながら王の間に突入すると、案の定四方八方から矢が飛んできて、途端に記憶が途切れた。

「おっ目が覚めたかの?」
「あぁ…作戦は無事終わったのか?」
「無事にエトムントを拘束しましたぞ。兵達も名取殿の呼びかけに対して次々と帰順しとる。国民からの理解もあったようで、我々は彼らに支持されておりますじゃ」
「じゃあ作戦は成功したって事でいいのか?!」
「ええ、無事に成功したわ。ミーニャ達も手筈通り明日には帰還するらしいわ」
 そう言って横槍を入れてきたのは、敵対勢力と国民に対して演説を行った後の名取だった。
「おっ名取もご苦労さん」
「この程度どうって事ないわ」
「いやお二人さんの活躍無くしてこのクーデターも成功はしなかったじゃろう。犠牲者が少なく済んだのも、事後処理がスムーズに進んだのも二人のおかげじゃ」
 なんかこの世界に来てから始めて褒められた気がする。

 バルドゥルさんやギュンターさん達がしばらく事後処理をしていると。とある人物が現れた。
「こ、ここでいいのか?シェンカー」
「左様でござますハーブ様」
 まだ幼い容姿の男の子は、現王ギークの弟にしてよわい五歳の次期王になる予定のハーブ殿下である。そして横にいる丸々太ったおじ様は、この先ハーブ殿下の宰相になる予定のシェンカー大公というわけだ。
 あくまでも直感というか、個人的な経験則でしかないが、俺達が帰還した後にもう一悶着ありそうな二人だった。

 俺と名取は特にやることもなく、城の中の部屋で待機をしていた。しばらくすると誰かが扉をノックしてきた。
「失礼しますぞカズユキ殿」
 入ってきたのはバルドゥルさんだった。
「どうかしましたか?」
「実は一つ頼み事を頼まれてほしいのじゃ。人手が足りんくてのう」
「あぁどうせ暇だし問題ないですよ」
「たのもしいかぎりですじゃ。では早速なのじゃが、兵舎に戻ってこの部屋にあるこの魔石を持ってきてほしいのじゃ」
 そう言って渡されたのは兵舎までの地図と兵舎の見取り図、そして…
「何ですかこの魔石は?連絡魔石とはまたちょっと違うような…」
「玉音魔石じゃ。これをその都市国家の元首が使い、専用の装置に繋げば玉音放送ができる代物じゃ。ちなみにわしが今持ってるのは使い物にならないやつじゃ」
「何でそんなもんが一兵舎にあるんですかね?」
「ミーニャ殿を甘く見ない方が身のためじゃぞ?」
 あぁ…はい…ミーニャが勝手に作ったんですね…
「とりあえず分かりました。可及的速やかにとってきます」
「頼みましたぞ」

 王都は歓喜に満ち溢れていた。皆心のどこかで不安を感じていたのだ。魔族の侵攻の兆しや交易の停滞など、思う所があったのであろう。
 それにしても人がすごい。お祭り騒ぎだ。
「この路地を入って行けば近道か?」
 バルドゥルさんからもらった地図を頼りに、俺は兵舎へと向かった。
 兵舎に着くと兵舎の中もお祭り状態になっていた。
「よくやった!」
「知ってたら俺も参加したんだがな!」
 なんて声がそこら中から聞こえてくる。俺が参加していた事も兵舎内に広がっていて、俺に対するねぎらいの言葉も少なくない。
 適当に対応しながら、例の部屋に着いた。
「この扉か?」
 見取り図にはこの扉の向こうに魔石があると書いてあった。しかし。
「あれ?開かないな。すみませ〜ん誰か〜」
「あっ召喚者の方ですね。お話は承ってます。今鍵を持ってきますよ」
 やはり大事な物なだけあって警備も厳重だ。
「はい、この鍵になります。バルドゥルさんによろしくお願いしますね」
「分かりました。しっかり王城まで持って行きます」

 例のブツを手に入れ、王城に戻る途中だった。
「おいあんちゃん!おい!お前だよお前!」
「えっ俺?」
「そうだよお前だよ!あんちゃん!」
 見ると今まで見た事の無い外見をしていた。それは背が小さく、色黒のおじさんのような姿をしていた。
「ドワーフ?」
「あぁそうだ、俺はドワーフ族だ。だがそんな事はどうでもいい。なぁあんちゃん。命が惜しかったら金目のもの出せや」
「その…命とかはどうでもいいんですけど、ちょっと渡せない物がありまして…」
 どうせ生き返るから命なんてどうでもいい。だがこの魔石だけは絶対に渡せない。
「あ、あぁん?舐めた口ききやがって!もういい!死ね!」
 あぁまた死ぬのか。今日だけで四回目だぞ?そう思った時だった。
「いてっ!だ、誰だテメェ!」
「少しは抵抗したらどうなの?」
「名取?!なんでこんなところに?」
「バルドゥルさんが最近治安があまり良く無いからって危惧して、私を派遣したの」
「そ、そうだったのか。でもなんで場所がわかったんだ?」
「索敵魔法」
 そうでしたね。あなた、ただでさえチーターなのに、魔法まで使えるようになっちゃったんですよね。
「す、すごいな…もう習得したのか…」
「ええ、まあ」
 他愛ない話をしていると、話の元凶が再び騒ぎ始めた。
「おい!なんだテメェら!よくわかんねぇけど、とりあえず二人とも死ね!」
 ドワーフが襲いかかろうとしてくると、名取が両手を合わせて前にやり、凛とした声で何やら唱え始めた。
「大地に眠る魔法の力よ、私に火の力を授けたまえ」
 するとどうだろうか、なんと名取の手のひらの周りに火が集まり始めたのだ。
「これが魔法なのか!」
「静かにして。まだ慣れてなくて難しいんだから」
 火は次第に増えていき、ついに名取の腕の周りを回って渦を作り始めた。
「くらいなさい!」
「なっ…」
 名取の魔法が発動し終わると、先程のドワーフは跡形もなく消し飛んでしまっていた。
「めちゃくちゃ強くないっすか?」
「これでも初級クラスの魔法らしいわ」
「んんん?!これよりもっとすごいのか?」
「ええ、今のの十から二十倍ってギュンターさんから聞かされてるわ」
 これよりもっと強力な魔法が使えるなんて、はっきり言って想像出来なかった。それよりも、自分に魔法の適性がない事を心底恨んだ。

 なんとか王城に戻り、バルドゥルさんに魔石を渡した。その時だった。
『緊急連絡!緊急連絡!』
 普通の連絡魔石から聞こえてきたのは、ルーナの声だった。

つづく







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