楽しむ異世界生活

フーミン

45話 Sランク冒険者

冒険者ギルドの奥には闘技場と呼ばれる施設があった。
 スタジアムのような形で、観客席に囲まれて丸いエリアがある。


「この真ん中で戦闘が行われます。レムさんは決闘の経験はありますよね? ルールは同じです」
「そうですか。それで僕と戦う相手は誰ですか?」
「相手は魔獣です」


魔獣というのは、魔力によって突然変異した獣。
 しばらく待っていると、闘技場の真ん中に大きな牛のような生き物がやってきた。


「ブルです。一応ギルドで飼われている魔獣の1つです」
「そのブルというのを気絶させたら良いの?」
「はい。レムさんなら出来ると思いますよ」
「ケルミアはずっと見てる?」
「私のSランクになりたい」


いや、ケルミアがSランクは難しいだろう。
 確かに10万も魔力があればSランクに慣れないこともないけど、戦闘能力が低すぎる。


「Sランク冒険者とパーティを組んでいれば、同じ依頼を受けることはできますよ。
 命は保証できませんが」
「ケルミア、無理にSランクにならなくて良いんだよ」
「……分かった」
「じゃあ、行ってきます」


砂で出来たエリアの真ん中へ進む。ブルは1人俺に対して威嚇しているようだ。
 闘技場に大きな声が響く。


「では! 戦闘開始!!」


その合図と共に、身体強化をしたブルが大きな角を向けて突進してくる。
 速度はあんまりないが、威力はなかなかのものだ。
 俺が横に避けると、ブルも進行方向を変えて突進してくる。


「っ! 厄介だな……」


どんなに動いても、追ってくるブル。後ろに回り込めたら動きを封じることはできるが、俺の速度だと不可能だ。


「だとすると策は1つか……」


俺は全身の魔力をフルに活用して身体強化する。動きを止めて、ブルの方へ構える。
 突進してくるブルを受け止めて投げる。これが1番無難な方法だろう。
 周りにいる観客がざわつき始めた。
 ブルの突進の威力はなかなか強い。だが、俺の身体強化した力の方が更に強いだろう。
 お構い無しに突進してくるブルが目の前に迫っている。


「ふっっっ!!!」


ブルの角を両手で掴む。
 それでも動きを止めないブルに押されつつあるが、全力で後ろの壁に投げ飛ばす。
 身体強化した俺の体に、軽々と投げ飛ばされたブルは、後ろの壁に当たって気絶した。周りから大きな歓声が聞こえる。
 このくらいなら別に大丈夫だろう。


「勝者レム!!」


戦闘が終わると、ケルミアが真っ先に俺の方へ駆け寄ってきて抱きついてきた。


「ちょっ、苦しい苦しい」
「これでSランクじゃん! 凄いよ!」
「おめでとうございますレムさん。やはりSランクの実力を持っていたのですね」


後からやってきた受付嬢が握手を求めてきた。


「別にこのくらいなら楽勝ですよ」


ブルも相当な力を持っていたようで、極普通の冒険者があの突進を受けたら、全身バラバラに吹っ飛んでいただろう。
 歓声を浴びながらギルドの中へ戻って、冒険者カードをSランクへと更新させる。


『レム様のファンが沢山増えたようですよ』
『そんな物までいるのか?』
『ええ、レム様は美しさと強さを備えているので当然でしょう』


冒険者ギルドから出ると、様々な冒険者に握手を求められた。それほどSランク冒険者が珍しいのだろう。
 しっかりと握手に受け答えして、なんとか宿屋へと帰る。
 宿屋にまで冒険者が集まった時はどうなるかと思ったが、宿屋の店主が追い払ってくれた。


「レム姉、人気者だね!」
「人気になると、それを恨む者もでてくるから気をつけないとね」


それを一度学園で経験したからな。
 知名度が高くなると、命を狙うものもでてくる。
 今後、Sランクの依頼を受けることになるが、依頼を受ける度に冒険者が集まってくるだろう。
 その中に命を狙うものがいなければ良いがな。

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