楽しむ異世界生活

フーミン

38話 冒険者登録

街は、岩やレンガで出来ているな。
 人生2度目の街。城から出てきた俺達を見てくる人達の視線には慣れない。


「ケ、ケルミアちゃん。どうしようか……」


広い街並みに、どこに何があるか分からない俺は混乱してしまっている。


「冒険者登録するんじゃないの? 探そ?」
「そうだね……」
『相変わらずレム様の人嫌いは治りませんね』
『いつか治さないとね……』


なんとか街の中を歩き始める。
 だが、街にいる人たちは武器を持っていたりで。話しかけたら切りかかってきそうな感じがして、話しかけることができない。
 しばらく街を歩いていても、ずっと同じ方向へ向かって歩いてる人が、俺達を付けてるんじゃないか気になってしまう。
 そんな感じでビクビクしながら歩いていた時だ。


「あっ! レムさん! 俺だよ俺! 覚えてる?」
「あぁ〜っ!! ユウキさん!」


学園で会った勇者だ。ミルネスト王国で偶然会うとはな。
 俺が叫んだことによって、人の視線が集まってしまった。


「ちょ、ちょっとどこか休めるところで話そう……」
「? そうだね。冒険者ギルドで話そうか」


なんとも有難いことに、俺がユウキさんに話そうとしていたのが冒険者ギルドの場所だ。これでユウキさんには用が無くなったな。
 ユウキさんについていくと、剣の模様が描かれた看板を見つけた。この目の前の建物が冒険者ギルドだろう。
 ユウキさんと一緒に、ギルドの中に入る。その中には大勢の冒険者達が座って話したりしていた。


「ケルミア、怯えなくて良いよ」
「う、うん」


厳つい武器を持った男達に怯えるケルミアを、安心させてユウキに話しかける。


「その〜冒険者登録したいんだけどさ。どうしたら良いかな?」
「えっとね〜。あそこに女の人がいるでしょ? その人に話しかければ手続きしてくれるよ」
「分かった。行ってくる」


猫耳の女性の元へ、ケルミアを肩車して向かう。
 ケルミアは犬耳だが、猫耳も可愛いな。


「すいません。冒険者登録をしたいのですが」
「はい、冒険者登録ですね。冒険者カードを作成するには10銀貨必要ですが、お持ちでしょうか?」


あぁ〜金が必要なのか。ここであの黒いカードは役に立つのだろうか。
 指輪に魔力を込めて、目の前の空間からカードを取り出して受付嬢に渡す。


「えっ、えっと王族の方でしたか! では、無料でカードを作成していただきます」


ワタワタとカードを確認して、カードを戻された。
 別に王族ではないんだが、無料になるのなら良いだろう。


「では、コチラのシートにお名前と年齢。使える魔法の属性をご記入ください」


そういって渡されたのは、白い紙2枚と鳥の羽で出来たペンにインク。
 俺とケルミアは、近くの椅子に座って書くことにした。


「ケルミア、自分で書ける?」
「逆に書けないってどうなの」


それもそうか。
 俺は名前の欄に 『レム』と書いて、年齢は16歳。使える魔法の属性か……。別に全部書かなくても良いよな。
 『火』と書いて、ケルミアが書き終わるのを待つ。
 周りの冒険者から、変な目で見られているが特に絡まれる気配もないな。


「ケルミア書いた?」
「書いたけど……魔法使えない場合はどうするの?」


魔法が使えない? それって魔力が無いってことなのか?


『いえ。魔力はあっても、属性魔法を使える人は少ないです。
 ケルミアちゃんは普通でしょう』


そうなのか。


「じゃあそこは何も書かなくて良いよ」
「分かった」


そうして俺とケルミアの紙を、受付嬢に渡す。


「はい、レム様とケルミア様ですね。
冒険者カードが作成されるまで少々時間がかかりますので、椅子に座ってごゆっくりとどうぞ」
「はい分かりました」


また椅子に座って、カードが作成されるのを待つ。
 周りの冒険者が、チラチラと俺達の方を見ているが、何なのだろうか。


「レムお姉ちゃん、私魔法使いたい」
「じゃあ今度、魔法の使い方を教えるね」


といっても、人に教えるのは苦手なんだけどね。


「あ、それとレムお姉ちゃんって呼ばれると気まづいから、レムで良いよ」
「じゃあレム姉で」


なんかラムネみたいだな、ブフッ……
 心の中でラムネにツボってしまった俺であった。
 しばらく待っていると、受付嬢がカウンターから出て、俺達の方にやってきた。


「お待たせしました。こちらが冒険者カードになります。
 ギルドで依頼を受ける時や報告する時はこのカードを見せてください。
 依頼を達成していくと、このカードに魔力が貯まります。一定の量が貯まるとランクアップ試験を受けることができます。
 ランクアップすると受けられる依頼の種類が増えるので、頑張ってください。
 ランクは全部で、F、E、D、C、B、A、Sとなっていて、Sが最高ランクとなっております。
 他に質問はありますか?」


ん〜聞きたいことは特にないな。


「では、これからの活躍を期待しております」


受付嬢はそういって、カウンターの奥へ戻っていった。
 これで俺も冒険者か。普通この年齢なら学園生活を送っている年齢だけど、夢の冒険者生活だ。学園なんて行ってたまるか。
 ふと、周りに目をやると2人の冒険者が俺の目の前に来ていた。


「なんですか? ケルミアが怯えてるじゃないですか」
「へっへっへ。アンタ、今冒険者登録したばかりだろう?
 決闘っていうの知ってるか? 冒険者同士が賭けをして戦うやつだ。
 勿論、受けて立つよな?」


決闘? いや、俺はやる気は全くないんだが。


「逃げんのか?」


逃げると言われたら、やらざるを得ない。


「いいよ受けてやる。
もし君が負けたら、有り金を全てもらうよ」
「へっ、よく言うぜ。お前が負けたらその指輪も服も武器も、全て貰う。賭けの変更は無しだ。
 おい! いまから決闘する!」


男は周りの冒険者に声をかける。
 すると、冒険者達は慣れたものなのか、テーブルや椅子を移動させて丸いエリアを作る。
 その中で決闘をするのだろう。

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