楽しむ異世界生活

フーミン

37話 褒美

随分と静かな食事になり、俺はとても気まづくてあまり食べれなかった。
 今日のところは家に泊まってもらって、明日国に返そう。


「レム様は、ずっとこの家に住んでらっしゃるのですか?」
「はい。いつか冒険者になろうとは思っているのですがね」
「そうなのですか! では、私の国で冒険者になりませんか?
 私を助けてくれたお礼に、歓迎いたしますわ」
「それは嬉しいですね!
では、明日姫様をお届けしてから早速冒険者登録しようと思います」


どんな歓迎が待っているのだろう。
 国のお姫様の命を助けたお礼……楽しみだな。


『レム様。なるべく早く国に行ったほうが、お礼も大きくなりますよ?』
『何!? じゃあ今日届けないと損じゃないか!』


今日届けた方が特するのなら、すぐに行かないとな。


「姫様! やっぱり今日国に帰りましょう!」
「良いのですか?」
「ええ! 姫様も早く帰りたいようですし」


ミルネスト王国とやらは、一体どんな国なのだろうか。
 俺が昔、父と行った国の街はほとんどが木製の建物だったからな。


「では! さっそく帰りましょう!
 お父様、お母様、とても美味しかったですわ。
 レム様、行きましょう!」
「えっ!もう行くの!?」
「はい! 早く転移を!」


うっ……綺麗な顔が目の前まで迫っている。
 仕方ない。
父と母に行ってきますと伝えて、俺は姫とケルミアと共に、ミルネスト王国の城に転移した。
 転移した先は、随分と装飾品が豪華な部屋。


「私の部屋ですわ!」


エレナ姫の部屋だったようだ。
 姫は懐かしむように部屋の中を見て回ると、俺の手を掴んで奥のドアへ向かった。


「どこに行くんですか?」
「お父様に、帰還の報告とレム様の紹介ですわ!」


勢いよくドアを開けた先には、鎧を着た兵士達が沢山いた。


「ひっ、姫様! 無事だったのですね!」
「姫様!そちらの方はどなたですか!」


兵士達は、いなくなった姫の突然の出現に驚いているようだ。
 しかし姫はそんな事など気にする様子もなく、迷路のような城内の扉をどんどん開けて進んでいく。
 そして、なにやら豪華な扉を開けた先には……


「お父様ぁ〜っ!!」
「エレナァ〜っ!! 無事だったのかっ!」


と、威厳ある白い髭の男性と抱き合っている。
 俺も家に帰った時はこんな感じだったんだろうな。
 ケルミアが俺の顔を見て微笑んでいる。大人になったなケルミア。


「お父様! あちらの方々が私を助けて下さり、ここまで連れてきてくれたのですよ!」
「おぉ〜! 本当に感謝する!! エレナを助けてくれてありがとう!
 名はなんと申す」
「レム様といいますわ!」
「レムか! お主の働きには感謝する! いや、感謝してもしきれん!
 褒美をやろう!」


来た! お目当ての褒美!
 俺は褒美が目当てで姫様をここに連れてきたんだ。きっと凄いものに違いない!


「レムよ、ついてきなさい」


エレナとその父は、恋人のようにくっつき合いながら奥の部屋に入る。
 俺とケルミアもついていくと、そこは高価な物が置いてある宝物庫であった。


「さて……エレナを助けてくれたお礼に、この五つの中から好きなのを2つ選びなさい」


エレナの父が出したのは、輝いた剣に高価そうな杖。謎のイヤリングに指輪。そしてガーターベルトだ。
 明らかにイヤリングと指輪は気になる。
 イヤリングは、綺麗な装飾が施してあり、ハートの形をしている。
 指輪はシンプルな銀色の指輪だ。


「そのガーターベルトはなんですか?」
「おおっと! これはエレナの物だった。
これだこれだ」


エレナ姫の……ゴクリ。
 そんな物はいい。エレナの父が取り出したのは黒いカード。


「それはなんですか?」
「これは、この国の一部の商品や宿屋が無料になるカードだ。王族は1人1枚持っている」


無料!? じゃあそれを貰おう。
 確か2つ選んで良いんだったな。


「そのイヤリングと指輪は、どういった効果が?」
「このイヤリングを付けていると、どんな相手も魅力する魔道具だ。
 この指輪は、アイテムボックスだな」


なるほど、便利性で考えたら指輪だろう。


「じゃあ、そのカードと指輪でお願いします」
「そうかそうか。指輪は利き手とは反対に付けるのだぞ。
 魔力を通すと、目の前に空間が現れる。そこに持ち物をいくらでも詰め込めるからな」


ということは左手か。
 ネロの指輪とアイテムボックスの指輪、2つ付けることになったな。


「あの、レムお姉ちゃんだけじゃなくて私も欲しいです」


あ、ケルミアの事を忘れていた。


「そうだのぅ……。この指輪はどうじゃ? 魔力を通すと透明になる事ができる」


なっ! 夢の透明人間になれるのか!?
 覗きし放題じゃないか! ……いや、俺女だから女湯に行けるんだ……。
 俺には必要ないな。


「ケルミア、良かったね」
「うんっ!」


俺とケルミアは、なかなか良い物を貰って大満足だ。


「そのカードがあれば、宿屋は無料だ。
しばらくこの国でゆっくりしていくと良い」
「ありがとうございます。そうします」


俺とケルミアは城の外に案内されて、ついに街にやってきた。

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