楽しむ異世界生活

フーミン

32話 お別れ

流石にこんな能力を使って本気を出したら世界征服なんてあっという間に出来てしまう。
 神様に本気を出せと言われたけど、やっぱり俺には無理だろう。


「レムちゃん。これからはどうするの?」
「どうするって……?」
「この学園の女子生徒の数名が、ガーゴイルによって殺された。
 そうなってしまった以上、学園にいる安全性が疑われてしまっている。
 このままだと、この学園の生徒は皆いなくなってしまう」


確かに、また魔物達に侵入されて人が殺されてしまったら不味いな。それに……
 俺は、生徒達の死体に目をやる。
 あの良いお尻をした女の子も殺されてしまっている。
 これ以上、可愛い女の子を死なせる訳にはいかない。俺がなんとかして、全世界の美少女も守らないといけないな。
 やはり、神様の言う通り本気を出した方が良い。


「その、《時空旅行》とやらで過去に戻って女子生徒達を救うことはできないのかい?」


あ、そうか。それに場所も選べるから確実に救えるな。


『残念ですが。スキルを獲得する前に時空移動するのは不可能です』


まじかよ……。期待してしまった。


「どうやら、スキル獲得前に戻ることはできないらしい」
「そうなのか……。魔王軍、絶対に許さない」
「魔王軍? さっきのガーゴイル達は魔王軍だったのか?」
「ああ、野生のガーゴイルは普通集団で行動することはない。
 あれほど統率のとれた魔物達だと、魔王軍と考えた方が良い」


なるほど。
 美少女を守るためには、魔王を倒さないといけない訳か。
 ……くそっ、あんなに可愛い女の子達を……よくも……。
 俺は魔王軍に対する怒りに、拳を強く握る。


「レムちゃん、、辛い気持ちも分かる。でも、いまは生き残った皆で力を合わせよう。」


そうだな。いつまでも同じ場所で立ち止まってちゃ駄目だ。
 次の1歩を踏み出すために、動き出そう。


「……俺、これから、何したら良いんだ……?」
「そうだな。ここの学園は信用が失われていずれ潰れるだろう。
 となると、それぞれ自分の目的に向かって、自力で努力しないといけない」


なるほど。となると、俺はまず家に帰った方が良さそうだな。
 俺の第1の目的は『楽しむ』事だ。家に帰って、今回の出来事を話して……。そこからどうするんだ。


『街に行って、冒険者になるのが無難だと思います』
『冒険者か。確かにそれなら金も稼げるし、仲間も見つかるから良いな』


アキヒトとユウキはこれからどうするのだろうか。


「2人はこれからどうしていくんだ?
 俺は1度家に帰って、今回の件を報告した後、冒険者になろうと思うんだけど」
「冒険者か……。俺は帰る家もないからな。俺も街で冒険者として生きるか」
「俺はいままで通り、勇者として頑張るよ」


それぞれ目的は決まったようだな。
 さてと、ケルミアちゃんはどうしようか……。
 結構俺に懐いてるし、別れるのは辛いが。家に帰らせるしかないか。


「ケルミア! 起きて!」
「ん……んん? あ、レムお姉ちゃんおはよう」
「ケルミアちゃん。僕は家に帰るけど、ケルミアちゃんも家に帰る?」
「帰る……? 私、レムお姉ちゃんと一緒にいたい」


どうしたら良いのだろうか。ケルミアちゃんの親に何も言わずに冒険者にさせるのは不味い。
 アキヒトとユウキに助けを求める目線を送るが。ニコッと笑ってカーテンの外へ行った。
 あの勇者、絶対子供苦手だろ。


「ケルミアちゃん、お父さんやお母さんに会いに行かなくて良いの?」
「私のお父さんとお母さんは、この学園に来る前に魔物に襲われて死んだの」


ふぁっ。両親が死んだ!?
 だから俺に有り得ない程懐いていたのか。それは悲しいな。


「じゃあ、僕とずっと一緒に来る?」
「うん!」


よしよし。ケルミアちゃんに寂しい思いは絶対にさせないぞ。
 部屋に戻って準備をした後、家に帰るか。


 俺はワクワクしながら、ケルミアと共に部屋に転移した。
 散らかった部屋を片付けながら、制服や着替え。下着などを大きなバッグに詰め込む。
 その作業に、ヤンキー達も何人か手伝ってくれて、早く終わった。


「レムさん! 帰ってしまうのですか!?」
「うん。シャール、元気でな。いつか冒険者になって再開できると嬉しいよ」
「レムさん……。これまでお世話になりましたっ!」
「「なりましたっ!!」」


ヤンキー達は、バッグを背負った俺とケルミアに、頭を下げる。
 こいつらとも、随分と長い付き合いになったが、今日でお別れか。特に大事な存在でもないけど、別れるとなると寂しいな。


「最後にお前達に、僕から伝えたいことがある」
「……」


ヤンキー達は、頭を上げて真剣な表情になる。


「いままでお前達と過ごした学園生活は、随分と楽しかった。
 僕は街に行って冒険者になる。お前達も立派な冒険者になったら、いつか再開する時がくると思う。
 その時が来るまで、絶対に死ぬな」
「「……ありがとうございますっ!!」」


頭を深く下げて、涙を流す者までいた。
 俺がこいつらにとって、どんな存在かは分からないが。目の前で別れを惜しまれ、泣かれるのは俺にとっても、感極まるからな。
 目頭が熱くなるのを感じながら、俺は「またな」といって、ケルミアと共に家へと転移した。

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