楽しむ異世界生活

フーミン

26話 世紀末集団

「ね、ねぇケルミアちゃん。僕とお話しようよ」


ヤンキー達が俺の部屋に入る時と同じような事言ってる気がする。


「アンタ、裏番長なの……?」
「だから違うよ。勝手にそんな噂が広まってるけど、僕はとっても優しいんだから」


いままで誰かに乱暴した事など、ほとんど無い。
 なんとか誤解を解く為に、ケルミアちゃんに色々と話をするが、なかなか心を開いてくれないようだ。


『うぅ〜……困ったなぁ…。どうしたら良いと思う?』
『そうですねぇ……。カッコいい所を見せるとかどうでしょう。
 尊敬する相手には、心を開きますからね』


といっても、どんなカッコいい所を見せようか……。少し演技を入れるのはどうだろう。
 俺は、ケルミアちゃんを部屋に残してシャールを外に連れ出す。


「ケルミアちゃんに、心を開いてもらうためには君たちの力が必要だ」
「何をしたら良いでしょうか!」
「ケルミアを襲ってくれ」
「え?」


作戦内容はこうだ。
 ヤンキー達が、ケルミアちゃんに絡む。(なるべくオラオラ系で)
 そこを一緒にいる俺が助ける、ということだ。作戦は校内を案内する時。


「良いかな?」
「い、いいですけど。場所はどうします?」
「そうだなぁ……戦闘訓練場で良いだろう」
「分かりました! 仲間達集めて待機してますね!」


シャールは張り切って走り去っていった。
 俺は部屋の中へと戻って、ケルミアちゃんになるべく自然に話しかける。


「いまから学園内を探検しようよ」
「探検なんて子供っぽい事、したくないわ」
「あ、探検じゃなくて攻略だよ!
 学園内をダンジョンと見立てて、攻略していくんだ」
「ダンジョン……! そ、それなら行ってやっても構わないわ。私がリーダーね」


小さな胸を張って、部屋から出ていく。
 ここまでは順調だ。あとはシャールが仲間を集めて戦闘訓練場に集まるまで校内で時間を稼ごう。


「じゃあ、まずは近くから攻めていこうか」


俺はケルミアちゃんの手を握って、学園内の施設一つ一つを紹介していった。
 確実に順調に進んでいた、進んでいたはずなのだ。
 戦闘訓練場へ向かう時、他の生徒の話し声が聞こえた。


「ヤンキー達が大勢戦闘訓練場に集まってるぞ」
「抗争でもする気か?」
「あの人数だぞ……学園内に影響がでなけりゃいいが……」


さて、シャールは一体何をしでかしたのだろう。


「次は戦闘訓練場に行くよ」
「ねぇ。その戦闘訓練場って場所に何か起こってるらしいけど、大丈夫なの?」
「ん? 何が起こってるの? よく分からないけど、戦闘訓練場を攻略したらダンジョン制覇だよ!」


ケルミアちゃんに悟られないよう、知らないふりをする。
 玄関で靴を履いて、戦闘訓練場へと向かう。


「……ひっ!!」


戦闘訓練場には、100人。いや、それ以上のヤンキー達が集まっていた。
 シャールの目は、『レムさん!やりましたよ!!』と、嬉しさを隠しきれてないようだ。
 俺はシャールに怒りの視線を向けて、集団の元へ向かう。


「あ、アンタ! もしかしてアイツらの所に行くの!?
危ないよ!逃げようよ!!」


ケルミアちゃんはとても焦った様子で、それでも俺の手を離そうとしない。
 しばらく校内を探検して、俺の近くが安心という事が分かったのだろう。


「大丈夫。あいつらがダンジョンのラスボスだよ」
「らす…ぼす? なんだか分からないけど、あんなの勝てっこないよ!」


ある程度近づいたところで、ケルミアちゃんにしゃがんで視線を合わせる。


「大丈夫。一緒にダンジョンを攻略しよう!
 僕がケルミアちゃんを守る。安心して僕のそばにいるんだよ」
「う……わ、分かった。死なないで!」


死ぬはハズがないのだが。俺はヤンキー達の元へ歩みを進める。


「ヒャッハー!! 可愛い小娘が2人ィ!兄貴!! こいつら食っちまいましょうぜ!」
「ヒャハハハハ!! お前らやっちまえ!」


俺はしっかりとオラオラ系とは何なのか伝えたのだが、伝え方が悪かったようだ。
 世紀末集団が素手で俺達の元へ走ってくる。
 ケルミアちゃんは、握っている手を強く握り直す。
 学園内の窓からは、俺と世紀末集団の様子を大勢が見守っていた。


「おい……あの女の子って、裏番長って呼ばれてた人だよな? 仲間割れか?」
「いや、そもそも裏番長なのか? 小さな女の子を守ってる様にしか見えないが……勝てるのか?」
「確かレムって名前だった気がする」
「俺はレムを応援するぞ! 命があるか分からないけど……」
「レムちゃ〜ん!! がんばれぇ〜!!」


俺に対する声援が熱い。
 さて、どうやってカッコよく終わらせようか。


『レイン。身体強化してこいつらを一瞬で倒すだけで良い。一時的に制御をレインに預ける』
『分かりました!』


《レインによる自動操作が発動しました》


「ケルミアちゃん。ここで待っててね」


レインが俺になりきって、ケルミアちゃんの頭を撫でて身体強化を発動する。
 次の瞬間、ありえない身体能力で俺の理解できる範囲外の動きで、100以上もいる世紀末集団を倒していた。


「え……あれ? 何が起きたの?」


ケルミアちゃんが、目の前の光景を驚いて眺めている。
 そしてレインによる自動操作は終了した。
 さすがの俺でも驚いた。レインが本気をだしたらどこまで強くなるのだろうか。
 俺の脳内にいるレインに、若干の恐怖心を感じつつ、ケルミアちゃんに声をかける。


「ほら大丈夫。僕が全員倒したよ! 初めてのダンジョン制覇!!」
「…………凄いよレムお姉ちゃん! どんな魔法を使ったの!? 凄い!!」


ケルミアちゃんの目は、これまでと違って尊敬の眼差しをしていた。
 作戦は成功だと思うけど、『ひでぶ』といって倒れた世紀末集団は、そそくさと帰ろうとしている。


「シャール!! ちょっとこっち来い!」
「はい! なんでしょう!!」


シャールだけを俺の元へと呼んだ。
 ケルミアは、なんで倒したはずの敵を呼ぶの? と困惑しているようだ。


「ねぇシャール。流石に多すぎない? もし僕の戦力が足りなかったらどうしてくれた訳?」
「レムさんなら勝てると思って集めました!」
「そうじゃないんだよっ!!」
「す、すんませんっした!」
「謝るなら土下座だよ! 膝つけて頭を地面につけるんだよ!」
「すんませんっしたぁ〜!!」


リーダー格のシャールを、目の前で土下座させて頭を靴で踏む。
 ケルミアも一緒になって踏んでいる。


「ご、御褒美ありがとうございますっ!」


シャールはこれを御褒美と捉えてるらしい。
 校内からは大きな歓声が聞こえる。
 これで裏番長というイメージも、ケルミアからの信頼も手に入れることができただろう。


「こんなダメ男の事はほっといて、部屋に帰ろうか!」
「うん!」


ケルミアは、俺と同じ部屋というのが嬉しくて早歩きだ。
 シャール。今回は許してやるが、度を超えた失敗をしたら今よりもっと酷いお仕置きが待っているだろうな。


俺とケルミアは、沢山の生徒に囲まれながらなんとか部屋に帰ることが出来た。


「レムお姉ちゃん。凄いカッコよかったよ!」
「言ったでしょ? ケルミアちゃんを守るって」


多少のハプニングはあったものの、俺の印象は学園全体で良いものとなった。

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