楽しむ異世界生活

フーミン

25話 新入生

それから、俺が歩くと周りの生徒達は怯えるようになった。
 番長でも何でもない俺が、噂だけで怯えられるなんて悲しすぎるじゃないか。確かに俺は人付き合いが苦手だ。だからといって、人から逃げられるのは辛いだろう。
 授業を受けている時も、俺の席の周りには誰も座ろうとしない。いや、唯一ヤンキー集団だけが俺の後ろに座るのだが、そのせいで余計に人が来なくなった。
 部屋には定期的にヤンキー達が来て、悩み相談だったり強さの秘訣だったりを聞いてくる。
 俺は先生ではない。


「レムも大変だね」
「全くだ……。何もしてないのに疲れるよ」


ベッドの上で横になって、ネロに愚痴を聞かせている。
 学園内で、執事服を着たイケメンが裏番長の部屋に出入りしている。という噂も広まっている。
 噂というのは怖いものだ。


 そして今日、俺しかいない487号室に、新入生がやって来ることになった。
 先生からは女の子が来る、とだけは聞いている。
 ワクワクしながら部屋にやってくるのを待っていると、外のドアが開いてダークエルフの先生が居た。


「ほら! ここが君の部屋だから入りな!」


どうやら新入生を連れてきたようだ。


「ふ、ふん! 別に裏番長なんて怖くないんだから!」


そういって入ってきたのは、犬耳と尻尾を生やした茶髪の少女。俺がいま15歳で、この子は13歳くらいだろう。
 俺がこの学園に来てから2年も経って、随分と有名になったものだ。


「レムさん。この子、ちょっと気が強い所があるけど頑張ってね」


先生はそそくさと去っていった。
 女の子は、尻尾をピーンと立てながら部屋の中へ入ってくる。


「君、名前は?」
「っ! ……ケルミア。好きに呼ぶことを許すわ」


見た目は随分と可愛いが、性格はちょっとキツイな。


「ケルミアちゃんは、僕の事怖くないの?」
「怖いわけないじゃない! どうせあんな話、ただの噂よ!
 こんなか弱そうな乙女が裏番長なんて、信じれるはずないわ」


そう、ただの噂だ。
 たまに部屋にヤンキーが入ってくるが、ただの噂だ。
 そんな話をしていると、早速部屋のドアが開いて、リーダー格の男が入ってきた。
 この男の名前はシャール。見た目、髪をオールバックにした知的ヤンキーみたいだ。全然知的じゃないけどな。


「レムさん! これから新しい生徒が部屋にやってくると聞いて、俺もやってきましたよ!」


勢いよく入ってきたヤンキーに、ケルミアは体をプルプルと震わせている。
 どうやらヤンキーとつるんでる事で、俺が裏番長だと確信したようだ。


「ん? その子が新入生ですか? 怯えてるようですけど」
「シャールが来たからだよ」
「えっ! 俺何かしました!?」


シャールのことは置いておいて、


「ケルミアちゃん、怯えなくて大丈夫だよ。
 僕は裏番長じゃないからね」


そういって、撫でると気持ち良い頭を撫でる。
 こういう所はネロに嫌というほど教えられたからな。犬と猫が同じかは分からないけど。
 ケルミアは、最初気持ちよさそうにしてたが、すぐに我に返り俺の事を睨んできた。
 こりゃあまた、随分と厄介な同居者ですな。

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