楽しむ異世界生活

フーミン

24話 ヤンキー集団

部屋に入って鍵をかける。ドアをこじ開けるような事はしないだろうからな。
 しばらく待っていると、ドアがノックされた。なんともご丁寧な喧嘩の売り方だな。
 俺はドア越しに声をかける。


「何か用ですか?」


ドアの奥から、ヒソヒソと話し声が聞こえた後。


「レムちゃん。俺とお話しようよ」


と、低い声が聞こえてきて、ドアの奥からは小さな笑い声が聞こえる。


「ドア開けてくれないかな?」
「ごめんなさい。忙しいから後からにしてくれますか?」


ドアを開けたら一斉に部屋に入ってくるのだろう。
 なるべく大事にならないように、俺は部屋の中で時間が過ぎるのを待つ。
 なぜ待つのかと言うと、この前の事件から職員達が定期的に俺の部屋の前に来るのだ。


しばらくすると、ドアの奥に人の気配は無くなっていた。


「はぁ……人と関わらないって疲れるな」
「レムなら喧嘩売られても大丈夫なんじゃない?」
「駄目だよ、勝てると分かってて相手と戦うのはイジメに近い」


部屋の中でリラックスしていると、またドアがノックされた。
 ヤンキーだろうか。


「何ですか?」
「レムちゃん。私隣の部屋のアリスって言うんだけど、友達になりたくて来ちゃった。
 できればドアを開けてくれないかな?」


女の子! 女の子から友達になってくれると最高じゃないか!
 俺はすぐさまドアを開ける。


「おぉ〜開いた開いた。失礼すんぜ〜」


なんと、ヤンキー達もいたようだ。
 そして喋っていた女の子もヤンキー集団の仲間だったようだ。
 しまった……女だからって警戒しなかった。
 ヤンキー達はゾロゾロと部屋の中に入ってきて、クローゼットやバッグの中を漁っている。
 プライバシーの侵害だぞ。


「よぉレムちゃん。俺達がなんでここに来たか分かるか?」
「検討も付きません」
「お前のそういう態度がムカつくからだよ。
 真面目に勉強受けてて馬鹿馬鹿しいんだよ、お前はよぉ」
「まともに授業を受けないで、成績も下位にいる人達の方が馬鹿だと思いますけど」
「んだとゴラァ!! おいお前ら!こいつ好きにしていいぞ!」


やはりヤンキーは1人じゃ何もできないようだ。
 男達は一斉に襲いかかってきた。だが、一対複数人の戦闘も、夢の中で経験している。
 まず、多数に囲まれたら魔素を一気に集めて、放出する。そうすることで、男達は少しだが吹き飛んで距離ができる。
 その隙をついて、身体強化を足だけに使用して、ヤンキー達が持っている武器を奪って地面に置く。


『いまの速さは自己最高記録ですよ!』
『おぉ! ついにあの記録を上回ったか!』


なんて内心喜びながら、倒れている男達を見下す。
 男達の武器は俺の足元に置いてあり、全員の動きが固まっている。
 小さな脳で状況を理解しようとしているようだ。


「なん…だ今の……?」
「見て分からなかったんですか? 武器を使って襲ってこようとしてきた貴方達の武器を奪っただけですよ」


俺が馬鹿にも分かりやすいように説明してやった。
 しかし、まだ理解出来ていないようだ。


「はぁ…それだから馬鹿なんですよ。
貴方達はたった1人の生徒に負けたんです」


それを聞いた1人の男が立ち上がって殴りかかってきた。
 こいつがこの中で1番戦闘能力があるようだから、こいつがリーダーだろう。見せしめにボコるか。
 迫ってきている拳を左手で受け止め、右手で顔にビンタする。
 それだけでも男は、受け止められた驚き
と、ビンタされた衝撃で立ち尽くしている。
 しばらくして、叩かれた頬を抑えながら後ろへ1歩下がった。


「す…済まなかった!! 俺達が悪かった!だからこれ以上仲間を侮辱するのはやめてくれ!
 どうか! 俺達をアンタの舎弟にしてくれ!」
「あ、兄貴!!」
「何も土下座しなくても!!」


ヤンキー集団のリーダーが、俺に土下座したことによって、周りの男達も、俺を騙した女子生徒も驚いている。
 勿論、俺も驚いて口を開けているのだが……。


「済まなかった……。俺達はアンタの実力を見誤っていた。
 アンタこそ俺達のリーダーに相応しい、どうが舎弟にしてくれ。
 いや! 下僕でも良い!」
「え、いや……ちょっと…………そういうのは……」


俺はオロオロしてリーダー格の生徒の頭をどうやって上げさせようか悩んでいた。


「と、とりあえず顔を上げてくれるかな?」


俺がそう言うと、ちゃんと顔を上げてくれた。
 今、2人とも膝をついて向かい合っている状態だ。そんな光景を、周りの男達は輝いた目で見つめている。


「えぇ〜っとその……。舎弟とか下僕とか、そういうんじゃなくて、普通に接することってできないの?」


俺がそういうと、周りの男達は。


「俺達を平等に扱ってくれるのか!?」


なんて言って驚いている。
 目の前にリーダーはと言うと、俺の顔を見つめて唖然としている。


「僕はただ、友達ができるだけで良いんだ。
 これからは、普通に接してくれるかな?」


俺が男にそういうと、男は俺の手を掴んで。


「ありがとう! そして済まなかった!
おいお前ら! レムさんにはこれから敬意を払って普通に接するんだ!良いな!」
「分かりました兄貴!!」


と、そこまでは良かったのだが。
 次の日の朝、俺が学園内のヤンキーに会うたびに、頭を下げられて。


「レムさん! おはようございます!!」


なんて言われるようになった。
 結果、俺にあるあだ名がついた。そのあだ名というのが。


《清涼の裏番長》


と呼ばれることになった。

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