楽しむ異世界生活

フーミン

13話 学園到着

 ついに来てしまった。
目の前には大きな建物が立っている。
 そして大きな校門があり、その横に2人の門番がいる。
 俺は胸ポケットから学生証明証を取り出し、門番の元へ向かう。


「ん? どれどれ……。新入生か。
随分と早いな。ちょっと待っていろ。
 おい! 新入生が来たから職員呼んでこい!」
「ああ、もう来たのか」


もう片方の門番が職員を呼びに校内へと向かった。


「レムちゃんか。随分と若いのに、一人で来たのかい?」


鎧を着ていて顔はよく分からないが、優しそうなおじさんという印象は分かる。


「いえ、さんに……使い魔のネロと来ました」
「黒猫の使い魔たぁ珍しいな」
「ただの猫じゃなくて魔族猫だよ」
「なっ!? この猫喋るのか?」


ネロに人前では喋るなって言うの忘れてた……。


「は、はい。とても賢いですよ」
「そりゃスゲェなぁ……。
それにしてもレムちゃんは可愛いね」
「そんな事ありませんよ。きっとこの学園にはもっと可愛い子がいるでしょうね」


どんな可愛い子がいるのだろうか。
 俺は妄想の中へと入っていきそうになったが、おじさんの声で我に帰る。


「いや、レムちゃんはずば抜けて可愛いよ。
きっとモテモテだろうね」
「あはは……」


そんな会話をしていると、さっきの門番さんが職員らしき女性を連れてきた。


「貴方がレムさんね」
「はい。よろしくお願いします」


薄暗い肌に尖った耳に紅い眼鏡をかけたこの女性はダークエルフだろう。
 学生証明証を見るとニコッと笑って


「それじゃ、いまからレムちゃんが泊まる部屋に案内するわね」


そういって手を差し出された。手を繋げということだろう。
 こういう事にはいい加減に慣れたので、しっかり握って職員の後についていく。
 門の中に入ると、広い庭が視界に広がり、綺麗な緑が心を癒す。


「ここは学生達が育てている花や木があるんだよ。綺麗でしょ」
「不思議な力を感じますね」
「だろう? 魔法を使って育てているんだ」


そうして、遠くから見えた大きな校舎が目の前に来ている。
 玄関から校内に入る。
 懐かしいような匂いに、前世を思い出す。


「レムちゃんが泊まる部屋は、同時期に転入してきた生徒がいるから。仲良くしてね」


構内をしばらく歩き、同じ扉が沢山ある場所へと来た。
 扉の上には番号が書いてある。
 廊下を歩いていると、部屋の中から話し声がする。
 ばったり生徒と出くわさないかビクビクしながら、自分の部屋らしき場所に来た。


「レムちゃんの部屋は487号室。中に1人生徒がいるから仲良くね。
 しばらくしたら先輩が来るから、学園内を案内してもらうと良い」


職員の人は、ドアをノックして開ける。
 俺が部屋に入ると、ドアが閉められた。
 部屋の中を見ると、ローブを深くかぶった生徒がいた。


「えっと、こんにちは〜……」


自分から話しかけるのには勇気がいる。
 なんとか話しかけて生徒へと近づく。


「あれ?」


少し近づくと、俺は何かに気づいた。
 こいつとはどこかで会った事がある。しかしそれを思い出すことができない。


「君が新入せ……え?」


生徒が顔をこちらに向けると、見覚えのある真っ白い目。
 

「あっ! もしかして酒場で会った魔眼持ちの!」
「ソルナントです」


以前とは少し違って、心を開いているソルナントと、しばらくぶりの再開であった。

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