楽しむ異世界生活

フーミン

7話 武器購入後帰宅

「ねぇそこの君」
「!? ……は、はい」
「さっきの見てたでしょ」
「……見てません」
 

あれ? レインは見てたって言ってたけど。


「本当に見てなかったの? 君、魔眼持ってるんでしょ?」
「なっ、なんでそれを……?」
『レム様、どうやらこの方は貴方を恐れているらしいです』


ふむふむ。確かに目の前で人を殺そうとしてたんだし、恐れられても仕方ないか。
 まずは相手に心を開いて貰わないといけないね。


「名前は?」
「……ソルナントです」
「ん〜……もしかして男?」
「はい」


……。心を開かせるにはどうしたら良いんだ……。
 コミュ障の俺が頑張って人に話しかけているのに、話すだけじゃダメなのか!
 

「あの……。何か用でもあるんですか?」
「えっと、友達になりたいなと……」
「友達……。僕なんかが友達になんてなれませんよ。簡単に人を殺そうとする事ができる人となんて……」


ん〜……やっぱり無理か……。


「そっか……。良ければ顔だけでも見せてくれない?」
「……僕の目を見ても怖がりませんか?」


目? 魔眼を持ってる人の目って何か違うのか?
 まあ、滅多に俺が怖がることなんてないんだけど。


「大丈夫だよ」
「分かりました……」


男の子はゆっくりとフードを脱ぎ、俯いていた顔をこちらに向ける。
 肝心な目はと言うと、ほとんど真っ白で、真ん中に小さな黒い丸があるような感じ。
 男の子はすぐにフードを被った。


「かっこいいじゃん」
「そんな事…ありませんよ」
「それじゃっ。またいつか会えると良いね。さよなら」


俺はそういって、父親の元へと向かった。
 すでに冒険者達も戻ってきていて、椅子に座って会話をしている。
 俺は父の横に来て、服を引っ張る。


「あっはっはっは! ん?どうしたレム」
「いつまで話してるの」
「ん? まだ〜……もうすぐ日が暮れるな。それじゃっ、お前ら。またいつか会おうな」
「おう! その時はレムちゃんも可愛い大人の姉ちゃんになってるだろうな!」


冒険者達に別れを告げて、酒場を出る。
 随分と長く暇な時間が終わり、ついに俺の目的である買い物の時間だ。
 買うのは勿論、剣だ。
 武具が売ってある店に入ると、体の大きい白いヒゲを生やしたおじさんがいた。


「あぁらっしゃい」
「この子が持てるくらいの剣ってあるかな?」
「ん? そんな小さい子に武器なんか持たせるのか?」
「こう見えても剣の腕前は超一流ですよ」
「はっはっはっ! じゃあ大人になったら楽しみだなぁ! 色んな意味でな……」


ちょっとこのおじさん危ないね。
 早いところ剣を買って店を出よう。
 店の中を見渡すと、棚や壁に掛けてある剣や杖。盾や弓矢など。様々な武器が並んである。


「そうだなぁ。超一流となるとそこの剣はどうだ?」
「おいそれは重すぎるからってただの飾りになってる奴だろ」
「超一流なんだろう? はっはっはっ! お嬢ちゃん、持ってみな」


おじさんが指を指した剣は、特に装飾もされていないが、白くて鏡のような刀身が美しい。
 俺はグリップを両手で持って持ち上げる。
 それなりに重さはあるものの、身体強化をすれば片手で持てるくらいだ。


「お父さん、これ買いた…い……?」
「おいおいおい。あんたの娘さんの力はどうなってやがる」
「ははは。天才娘ですからね。……驚いたなぁ。……それでこれはいくらだ?」
「いや。こんな重たすぎる剣なんて持てるヤツがいなかったから、値段なんて付けたこともねぇよ。特別に無料だ」


なかなか良さそうな剣を無料!
 大きさもそれなりにあるし、これは俺愛用になりそうだな。
 父は「良かったな」なんていって頭を撫でて、店を出る。
 こんな剣を無料で貰って、何も買わずに店を出る。っておじさんに悪いことしたかな……。
 立派な冒険者になったら恩返しでもしよう。


 日が落ちてしまい、いまから街の外に行くのは危ないらしいので、宿屋に泊まることになった。
 フカフカのベッドに、久しぶりに父親と眠る。
 父の匂いは案外臭くなかった。加齢臭でもするかと思ったがな。


ーーー


次の日、俺のお願いによりパンをいくつか買って、馬車に乗って家へと帰る。
 勿論、帰りも半日くらい時間がかかって暇だったので、買ってもらった剣を鞘から取り出して眺めていた。
 家に帰ると、母メリアが昼食を用意してくれていた。


「ただいま」
「おかえりなさい」


1人きりで寂しかっただろうに。今日は沢山甘えてやろう。

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