楽しむ異世界生活

フーミン

5話 街到着

 何事もなく街に到着した俺達は馬車を降りて、門の前へと向かう。
 門の前には門番が2人立っており、冒険者である証拠のカードを見せなければならない。
 父がバッグの中からカードを取り出し、門番に見せるとすんなり街に入ることができた。


「迷子になるとあぶないから手繋いで歩くぞ」
「えぇ大丈夫だよ」
「駄目だ。危ない人だっているんだからな」


仕方なく手を繋いで歩く。
 周りの冒険者達から優しい笑顔を向けられながら、見知らぬ街を歩いていく。
 手繋いで良かった。
 視線から避けるために父の後ろ側へと移動する。


『レム様は人が苦手なのですか?』
『苦手っていうか。相手から変な風に見られてないかなとか、変に思われてないかとか、そういうの凄い気にしちゃうんだよね』
『なるほど……。どんな人からも好意的に見られるスキルがありますが、獲得しますか?』
『それって魅力みたいなの? 流石にそれはいらないよ』


それにどんどんスキル獲得しすぎても、使い道に困るしね。竜の力みたいに。
 しばらく歩いていると美味しそうな香りが漂ってきた。
 どこか懐かしい匂い。あたりを見渡すと、パンがあった。


「お父さん! あれってパン?」
「おっ! よく知ってるなぁ。そうだ、パンだぞ。後で買ってやろう」


異世界にもパンがあるという事は、米もあるって事か?
 だとすると、食事も楽しみになってきたな。
 街中には色んな香りがあって、匂いを嗅いでるだけで暇潰しができた。


「泥棒だ〜! 捕まえてくれぇ〜!!」


突然、後ろから大きな声がして、振り返る。


「どけぇっ!!」
「うわっ!」


2人の青年が大きな袋をもって横を駆け抜けていった。
 泥棒か。いまの2人は結構若かったな。


「追いかけなくて良いの?」
「ああいうのは、あまり関わらない方が身のためだ。さぁ、もうすぐ酒場に着くぞ」


目的地に着くらしいので、二人の青年の事は忘れることにした。
 少し歩いていると、酒臭い二階建ての家があった。


「懐かしいな……」
「入らないの?」
「あぁ、入るさ」


父は、少し笑みを浮かべて酒場の扉を開いた。
 酒の匂いも一層強まり。中からはお祭り騒ぎのように声が上がっている。


「おおぉ!! ルーデル来たのか!」
「あぁ! 娘のレムを自慢しにな!」


父はそういって俺を抱き抱えた。
 大勢の人に囲まれて、俺は緊張して何も出来ずにいた。


「かぁ〜っ! 羨ましいぜこんちくしょう! レムっていうのか。よろしくな!」
「よ、よろしくお願いします」


 顎髭を生やした筋肉質のおじさんは、俺の頭を優しく撫でると、ふと何かを思い出したのか、テーブルにあるバッグの中を漁り出した。


「ほれ。昔ルーデルが使ってたローブだ」


随分と使い古されたフード付きのローブだ。


「なんでお前がそれ持ってんだ?」
「ルーデルがローブ壊れたから修理しといてって頼んだんだろう」
「あぁそういやぁそうだったな。このローブはレムにやろう」
「え?良いの?」
「ああ。お前はいつか立派な冒険者になるからな。俺からのプレゼントだ」


ありがたくローブを貰って、さっそく着てみると、サイズは大きいが安心感がある。
 街ではこれを着ておこう。
 そうして、ルーデルは椅子に座って酒を注文した。
 普段家で酒は飲まない父が、今日は珍しく飲むとは驚いた。
 

「それでルーデルよぉ。魔法は使えるようになったのか?」
「あぁ〜……一応医療魔法を少しだけな」
「はっ! 俺はもう攻撃魔法覚えたっての!」


攻撃魔法というのは、俺がこの前使った火の玉とかそういう類の物だろう。
 おじさんは、手の平を上にかざして眉間にシワを寄せる。
 だんだんと空間が歪み、氷が生成される。


「はいはい、凄い凄い」
「んだよもっと驚けよ〜! ここまでするのに3年かかったんだぞ!」


 氷魔法! まだ炎以外は使ったことがないな。
 試しにやってみるか。


両手をかざして、氷のイメージをする。
 イメージが強いほど魔法の生成も早いようだ。
 なんとか小さな氷の粒を生成することができた。


《魔法スキル:氷属性を獲得しました》


無事にスキルも獲得したな。
 あとは練習して大きさを自由に……


「……ん?」


周りの冒険者達が、俺の手のひらの上にある氷の粒を、目を見開いて眺めていた。


「お、おい。レム。いまどうやったんだ?まさか魔法で出したんじゃないだろうな?」
「えっと、試しに魔法を使ったみたらできた……みたいな?」


何か不味い空気が流れている。


「おいおい! もしかしてお前魔法の才能もあるんじゃねぇのか!?」
「すげぇなぁ!!」


突然、周りの冒険者達のテンションがあがる。


「凄いぞレム! 剣の才能も魔法の才能もあるなんて、流石俺の娘だ!天才だなぁ!!」


父までもが笑顔になり俺の頭を撫でる。
 いや、イメージさえできれば練習して出せるようになると思うけど。
 そんなに凄いことなのか?


『《竜の力》の《魔力操作安易化》のお陰ですよ。普通見た魔法をそのまま使える人なんて存在しません。流石レム様です』


あぁそういうことか。
 父に、髪をボサボサになるまで撫でられた。

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