楽しむ異世界生活

フーミン

4話 とんでもないスキルがあった

 昨日、随分と早く寝てしまって心配だったが、丁度日が登り始めた頃に目が覚めた。
 1階に降りると、父が出掛ける準備をしていた。
 大きなバッグに、色んなものを詰め込んでパンパンになっている。


「おぉおきたか。レムも忘れ物のないようにな」
「別に持っていくものないから良いよ」
「ん? 年のために木刀持っていった方が良いんじゃないか?」


木刀は魔法で消滅したのだが、そんな事を言ってしまったら魔法の練習をしていた事がバレる。


「ごめんなさい。無くしました」
「そうか。じゃあ街で新しい剣を買ってやろう」


元からそのつもりだったが、父から買ってやると言葉が出たし、正直に礼を言おう。


「ありがとう!」


そうして、父の準備も終わり、母に行ってきますと告げて家を出る。
 外には既に馬車があって、1人の護衛と1人の御者がいる。
 父と俺は馬車に乗り込み、向かい合って座る。
 護衛の女兵士は馬車の後ろにいるようだ。
 すると、馬車が動き出した。


「初めて見る馬はどうだ?」
「ん?」


あ、そうか。この世界に来てから馬は初めてだったな。


「なかなかの筋肉でしたね」
「はっはっはっ! 最初にそこに目が行くか! 流石レムだな」


そこで会話は終了した。
 もっと何か話すことはないのか?


「あの、お父さん」
「ん? どうした?」
「街に着くまで半日はかかるんですよね?」
「あぁそうだな。暇か?」
「えぇ……まあ…」


半日も外の景色を眺めてるだけなんて、どんな時間の無駄使いだ。 
 何か本でも持ってくりゃ良かったな。


「暇潰しになる物は持ってきてないしなぁ……。我慢するか横になって眠るかだな」
「じゃあ寝ます……」


俺は仕方なく椅子に横になり目を閉じる。
 馬のカポッカポッという規則的な足音と適度な揺れで眠く……なるはずがない。
 なんせついさっきまで寝ていたんだ。


『レム様、暇なら何か私に出来ることをしましょうか?』


おっと、レインがいたな。
 レインなら声に出さずに目を閉じたまま会話ができる。
 今のうちに色々と聞いておこう。


『前から色々とスキルを獲得してたけど、それを確認する方法はないのか?』
『では! スキル確認 と念じてください!』
『分かった。 スキル確認』


《ステータス表示スキルを獲得しました》


というアナウンスと同時に、脳内に情報が流れ込んでくるのが分かった。


ーーー


《竜の力》
《レイン》
《魔力操作:改》
《魔法スキル》
《魔法スキル:火属性》
《魔力伝達》
《ステータス表示》


ーーー


ん? この《竜の力》ってのはなんだ? いつ獲得した?


『竜の力は、レム様が転生されてから最初から持っているスキルです。詳しく知りますか?』
『ああ頼む』
『ええ、竜の力によってもたらされる能力はですねーーー』


ーーー


竜の力

ー魔力量UP
        ー魔力操作安易化
ースキル安易獲得
ー部位竜化
        ー鱗追加一部のみ
                 ー翼追加
ー竜化一定時間、全身に鱗と翼が生え、魔力量も大幅にUP


ーーー


なんじゃこりゃ!!!
 とんでもない能力を知ってしまった気がする。


『流石レム様ですね。竜の力で空を飛び回ることも、鱗によって攻撃から身を防ぐこともできますよ』


そう言われても、あまりに強力すぎて使いどころに困る。そして見た目まで変化してしまうとすると、父ルーデルに変な目で見られて嫌われてしまうかもしれない。
 これは本当に奥の手だな。


『いざと言う時に、少しくらいは練習しといた方が良いですよ。特に鱗追加は部位を選べますから。バレない程度に発動できます』


 まあ1人でいる時に試してみよう。
しばらくは保留だ。
 それと脳に一気に情報が流れてきたせいなのか眠くなってきた。


『レイン。俺はしばらく寝るから、もし周りに異変があったら起こしてくれ』
『はい。滅多にそんな事はありませんけどね』


 そして俺は、街につくまで一眠りすることにした。

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