楽しむ異世界生活

フーミン

2話 魔法とスキル

毎日のように身体強化の制御を練習して、ついに剣の指導をしてもらう事になった。
 

「いつものように身体強化してくれ、次に利き手で剣を持って、上から下に勢いよく振ってくれ」
「わかりました師匠」


師匠なんて呼んで修行感を出している。父はやめてくれと言っていたが、俺は何かを教わる時、目上の人にはそれなりの態度で接するからな。
 言われた通りに、思いっきり木刀を振る。
 ヒュン といった風切り音と共に、地面の草が揺れる。


「お、おぉ……よく出来たな。次はもうちょっとゆっくり振ってみてくれ」
「分かりました」


言われた通り、ゆっくり振る。
 ブォンという音が聞こえる。


「どうでしょうか」
「まずいなぁ……もしかしたらお父さんを超えてしまったかもしれないぞ……」


いや、それはありえないだろう。
 まだ子供だ。師匠を超えるなんて事はまだ程遠い。


「そんな事無いですよ。僕は師匠に教わったとおりに練習したんです」
「だがな。俺なんかが剣を振ってもヒュンなんて音はしない。ましてやレムの剣筋は早すぎて見えなかった……」


師匠は少し落ち込んだ様子で俺の木刀を眺める。
 そんなに落ち込まれても困るのだが……。もしかして転生した時に貰った能力なのだろうか。
 師匠を超えるなんて、あってはならない事だ。
 次からは力を更に制御しないとな。


「師匠。今日はもう帰りましょう」
「あ、ああそうだな」


ーーー


家に戻ると、父の様子に気づいたのか


「あら父さん。落ち込んだ顔して、剣の修行で何かあったの?」
「なっ! 俺がレムに指導してたのバレてたのか!?」
「そりゃ毎日コソコソしてるもんだからバレるわよ。それで何かあったの?」


流石、母の目は誤魔化されないか。


「お父さんが、『超えられたかもしれない』なんて言って落ち込んでるんです」
「あら、そんなに鈍ったのかしら。あの頃は強かったのにね、ふふ」


母メリアは、クスッと笑ってそういった。
 

「そうか鈍ったのか……。まあ素振りばっかりしてたからな」


実際には鈍ってないと思うのだが、そういう事にしておこう。
 

 父は少し気が楽になったのか、顔も明るくなった。
 その日は、修行の事について語りながら夕食を食べて、眠りについた。


ーーー


次の日の朝、母に魔法を教えてもらおうと早起きして、朝食を作っている母の元へ向かった。


「お母さん。魔法の練習したいんだけど、ダメかな?」
「ん〜……実は私、魔法苦手なのよねぇ〜」


てっきり父は剣術が得意で母は魔法が得意かと思ったが違うのか。


「私は剣術も魔法も苦手でね。お父さんが少し医療魔法を使えるんだけど、教えるとなると……難しいわねぇ」
「えぇ……」


これじゃ肝心の魔法が使えないじゃないか。
 異世界といったら魔法だろう。
 俺は顎に手をやり、脳を回転させる。
どうしたら魔法が使えるのか。


学校……。


「学校には行けないの?」
「学校は10歳からよ」
「えっと……今、僕って何歳だっけ?」
「9歳。明後日が誕生日になるわ」


もうすぐ行けるじゃないか!


「じゃあ学校に通って魔法を習いたい!」
「でもね、学校はここからじゃ遠いの。それにお金の問題もあるし、あの学校は宿泊制だからねぇ……」


そうか。1度学校に行ったらすぐには帰ってこれないと。
 それは困るな。なんせ俺は人見知りだ。
転生して産まれてきたばかりから一緒にいる親なんかは大丈夫だけど、知らない人となるとキツイ。


他に方法は何がある。
 家庭教師。それも金銭的にダメだろうか。
とすると、独学でやるしかないようだ。


「じゃあ諦めるよ」
「ごめんねぇ……」


仕方なく二階にある自室へと入り、魔法の使い方について脳内で考える。


どうしたものか。身体強化と似たような感じでイメージするのだろうか。
 しかし、体内から体外に出すとなると少し違うのだろう。


《思考補助スキルを手に入れました》


「ふぁっ!?」


突然脳内にアナウンスのような声が響く。
 

「な、なんだ今の……」
『思考補助スキルというのは、貴方様にさずけられた能力の一つです。元いた世界にある人工知能と似たようなスキルです』


転生してくる時を思い出すな。
 しかし、思考補助スキルといったか。これがあれば魔法の使い方も分かるのでは?


《魔法スキルを獲得しました》


おお、よく分からんが魔法スキルとやらを手に入れたな。思考補助スキルというのが勝手に入れてくれたのか。
 魔法スキルについて詳しく教えてくれ。


『魔法スキルを獲得した事により、魔法の使用が安易になりました。使用方法は魔法を発動させたい部位に集中して、魔力を集めるイメージをしてください。イメージによって様々な物が出現します』


魔力を集める、となると。空気中の魔素を使用するのか?


『魔素を集めるには、体内の魔力を特定の部位に集めないとできません』


魔力は魔素を集める能力があると……。
 ということは、身体強化してる時も体の周りには魔素が集まってるのか?


『はい』


おぉ〜! 随分と便利だな、思考補助スキル。
 前世にあった人工知能とやらよりも優秀なんじゃないか!?
 とりあえず右手の手のひらを上に向けて、魔力を集中させる。


《魔力操作:改を獲得しました》


「イメージイメージ……火の玉とか?」


火の玉をイメージしていく。
 すると、だんだんと右手の上にある空間が歪み始めて、小さな炎が浮かんだ。
 時間をかければかけるほど、火の玉のサイズも大きくなる。
 熱さは、右手には感じないが、顔や左手を近づけると熱く感じる。
 右手に魔力が集まっているからだろう。


《火属性:魔法スキルを獲得しました》


しばらく火の玉を眺めていると右手が疲れてきた。


『魔力を長時間、特定の部位に集め続けると、相当な不可がかかります』


なるほど。
 火の玉を消して右手を休める。
さすがにこれ以上は右手を使うとキツイし、今日はここまでにしておこう
 肝心の魔法を使うことができるようになり、良い気分になっている。
 まだ時間帯は昼にもなってないし、思考補助スキルさんと会話でもしよう。
 というか思考補助スキルって一々呼びにくいな。
 思考は脳でしてるから、レイン。ブレインのブを抜いたレインでどうだ?


《思考補助スキルはレインに改名しました》
《名を授かったことによる感情を獲得しました》


感情?


『名を付けていただきありがとうございます!レム様!』


うわぁお。無機質な声から元気の良い声に変わったよ。
 某 結○ゆか○の滑らかになった感じだ。


「いやいや、名前くらい付けないと呼びにくいからね」
『これからもどんどんサポートさせて頂きますので!宜しくお願いします!!』
「はいよろしく。あと敬語は使わなくて良いよ」
『いえいえ!それはできません!! レム様は絶対的存在。スキルはスキル使用者の下につくものですから!』
「絶対的存在の言うことが聞けないの?」


冗談交じりで言ってみた。


『うぐっ! ……スキルはスキル使用者に対し敬語を使わないといけないんです。スキル界の常識ですから!』


スキル界ってなんだスキル界って。
 まあ良いけど。
 レインさんにはこれからお世話してもらわないとね。


その後、レインと話しているうちに敬語が移ってしまったのは内緒。
 適当にこれからの事について雑談していたら、母に 「何独り言いってるの?」って言われたのも内緒。
 別に声に出さなくても良いんだけど、会話するとなると声に出さないと違和感があるからね。


父は街に買い物に行っていて、昼食は俺と母て食べ終えた。
 もうすぐ父が帰ってくる頃だが、俺は家でじっとしているのもなんだし、森を探検する事にした。

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