楽しむ異世界生活

フーミン

1話 才能

 それから毎日、似たような生活を送った。
 成長が早いからなのか、眠気もとてつもない頻度で襲ってくる。
 ほとんど寝てたからどれだけ月日が経ったかは分からないが、なんとかハイハイはできるようになった。


「レムちゃん。パパのところにおいで」


そういってデレデレの顔をした父親が両手を広げる。
 俺は四足歩行で父親の元へと向かって、抱えられる。


「よくできまちたねぇ〜! ルーデルでちゅよ〜」
「ちょっと〜、まだ名前なんて言えないでしょ〜」
「う〜えう……」


舐めてもらっちゃ困るぜ……ふっ


「ちょっ! 今パパの名前言ったよ!?」
「うっそ!? レムちゃん! ママの名前は メリアだからね!!」
「えいぁ」


うまく喋れないのがもどかしいが、少しずつ成長していっている。
 俺の父親ルーデルは、橙色の短髪。体は筋肉質でスポーツ万能といったところだろうか。
 母親メリアは、黒髪に青い瞳が特徴で、とにかく美人だ。


 「私たちの顔をまじまじと見てどうしたのかしら」
「きっと顔で名前が分かるように覚えてるんだな。流石は俺達の子だ」


そんな話を聞いてると、また眠気が襲ってきて眠ってしまった。


ーーー


それから何日経過したかは分からないが、会話もできるようになり、立つこともできるようになった。
 見た目も母親に似て黒髪。目は赤色だ。


「あらレム。おはよう」
「おはようお母さん。お父さんは?」
「父さんなら外で木刀の素振りをしてるわよ」


父ルーデルの職業は剣士。身体の魔力の循環が早く、身体能力が高い人は剣士になるようだ。


「見学してきても良いかな?」
「良いけど、遠くにはいかないようにね?」
「分かってる。行ってきま〜す」


俺は玄関のドアを開けて、森に佇む一軒家の裏庭へと向かう。
 裏庭に近づくと空気を切る音が大きくなる。


「ん? どうしたレム?」
「僕も剣術を習いたい」
「まだお前には早いぞ?」
「それでも良いから教えて!」
「んんしかし……母さんには内緒だからな?」


俺は大きく頷いてルーデルに剣術を教えてもらうことになった。
 といっても、まずは魔力の循環を早くして身体能力を強化する事からだ。


「良いか。全身の力を抜いて、魔力が通っているのをイメージするんだ」


言われた通りに、イメージする。
 しばらくすると全身が涼しくなってきた。


「お父さん。涼しくなったけど、そこからどうするの?」
「ちょっと走って家の壁に触って戻ってきてみてくれ」


家の壁の方へ行くために、1歩大地を蹴る。


「うわぁっ!?」


家の壁に方へと吹っ飛び、盛大に頭をぶつける。
 しかし身体能力を強化しているからなのか、そんなに痛くはなかった。


「いてて……お父さんどうだった?」
「驚いたな……レム!もしかしてお前剣士の才能があるかもしれんぞ! 身体強化を無事に制御できるようになったら、剣術の指導をしてやろう!」


その日から、母親にバレないように身体強化を制御する特訓が毎日続いた。
  たまに怪我をする時もあるが、父親に医療魔法で回復してもらった。
 いつか魔法も使いたいな。

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