不良な俺の趣味が女装な件。

フーミン

13話 百合の芽



「すっごい……」
「アイちゃん凄く可愛くなってるね」
「サクラちゃんも綺麗……」
 目の間で百合の花が咲きそうな雰囲気になっており、2人のメイクをしてやった俺はとても満足している。


「ね! 僕のスマホで写真撮って!」
「えっ? うんいいよ」
 アイにスマホを渡されたのでカメラを開く。女子のスマホを持つのは多分これが初めてだ。
 一瞬見えたホーム画面がホモホモしい画像だったのは見ないふりをしよう。


「ちょっとマコちゃんのポーズリスペクトで」
「いいね〜!」
 アイは唇に指を当てて上目遣いでこちらを向く。サクラは少しM字に股を開いて両手で隠すようなポーズ。


「ちょっ……そのポーズは刺激が強いよっ?」
 男の俺には刺激の強すぎるポーズだ。


「マコちゃんの方が凄いよ〜ね? サクラちゃん」
「うんうん。マコちゃんの写真を男子に見せたら皆それをオカズにするくらいだよ」
「そっ、そんな事言わないでっ!」
 本人がそれをオカズにしているのだからあながち間違ってはいないのだが、それを俺の前で言われると色々と恥ずかしい。


「じゃ、じゃあ撮るよ?」
 火照った顔を覚ますように深呼吸をして、画面に写る2人の姿に意識を向ける。


「はい……チーズ」
 本当にどうでもいいのだが、この掛け声を1人で言ってると恥ずかしくなってきた。チーズってなんだ。


「綺麗に撮れた?」
「うん」
「後でSNSでマコちゃんにも送るね!」
「あ、ありがとう」
 2人は恥ずかしそうに叫びながら自分達の写真を見てはしゃいでいた。


 そんなに恥ずかしがるならあんなポーズ取らなくて良かったんじゃ、と思うのだが……やっぱり乙女心は分からない。
 いや、人の事は言えないな。


「僕モデル目指そっかな〜」
「私も保育士の夢諦めようかな」
「わ、私別にモデルじゃないよ?」
 2人が俺の影響で将来の夢を変えてしまっているみたいで、咄嗟に引き止める。


「本当に、マコちゃんがモデルじゃないのが不思議だよ〜」
「ね。こんな綺麗な子が街歩いてたらスカウトされてもおかしくないのに」
 まあ普段シズキとのデート意外は女装なんてしてないからな。スカウトなんて滅多にされないだろうし。


「マコちゃん、今度私とアイとサクラと一緒に4人で遊びに行かない?」
 突然シズキが提案してきた。


「遊びに行くってどこに?」
「映画館とか」
 え、映画館っ……!?
 ただでさえ映画館に映画を見に行った事のない俺が映画館!? それも女子3人と!?


「いいね! 僕賛成!」
「私も賛成」
「マコちゃんどうする?」
 シズキがニヤニヤ笑っているし、行かなかったら何かあるんだろうな……。


「わ、分かった……行くよ」
「決まり! じゃあ予定を決めよう!」


 俺達は映画館に行く予定をそれぞれ決め始めたのだが、普通に学校が休みの日に朝からシズキの家に集まる事になった。
 9時30分までに集まって、また俺がアイとサクラのメイクをしてあげてからバスに乗って行くらしい。


 予定も決まり、しばらく皆と一緒に買う物や食べたい物を話しながら時間を潰していった。
 外も赤くなってきた頃、サクラに俺の帰る時間を心配されたので一足先に帰ることにした。といってもすぐ隣の家なので大丈夫なのだが、俺の正体が不良のマコトだとバレない為にはそうするしかない。








 翌日学校に行くと、シズキとアイとサクラが女装した俺の話をしてワイワイはしゃいでいた。


「本当可愛かった!」
「凄く頼れそうだよね〜!」
「2人ともマコちゃんにゾッコンだね」
「マコちゃんとなら百合な関係にもなれるかも!」


 アイもサクラも、今度皆で遊びに行くのが凄く楽しみなようだ。絶対にバレないようにしないとな。


「なぁマコト」
「ん?」
 ぼけ〜っとしているとトモキに話しかけられた。


「この写真を見てくれ」
「ん…………っ!?」
 トモキが見せてきた写真には、女装した俺がお尻を突き出している自撮り写真があった。


「この前言ってたマコちゃん。可愛いだろ」
「おっ……おぉ……誰に貰ったんだ?」
「シズキだよ。今度マコトもマコちゃんに会うか?」
 うぐっ、俺が女装した俺に会うなんて絶対に不可能だ。


「いや俺はいい」
「……? なんで? 可愛いじゃん」
「た、確かに可愛いけど俺は興味ねぇ」
「ふぅ〜ん。じゃ、俺が独り占めしちゃおうかな」
 トモキはニヤニヤ笑いながら席を前に向けてその写真を眺めていた。


 トモキも完全にマコちゃんの虜になっているみたいで、色々と収集が着かない事になってきている気がするのだが、多分シズキがどうにかしてくれるだろう。
 そもそもこういう状況を作り出したのはシズキだ。まだ色々と考えているみたいだし、俺が勝手な行動をするのはやめといた方が吉だ。


 その日もいつも通り学校内で睨みを効かせて過ごし、今度遊びに行く日の服装なんかを考えていた。

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