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不良な俺の趣味が女装な件。

フーミン

1話 辞められない



『スカート捲ってパンツ見えそうで見えないような写真撮ってよ』
『えぇ……分かった』
 女装すると性格が変わる。普段は気が荒く暴力的な俺でも、女装するだけでお淑やかになるのだ。


 鏡の前に座って、少しだけスカートを捲り綺麗な太ももを露出させる。鏡に映る美少女が恥ずかしそうな顔をするから興奮までしてくる。


『なかなかいいじゃん笑』
『ありがとう』
 シズキに褒められて無意識に笑顔が零れる。


『明日休みだからそれでデートね』
『絶対に女装してないとダメ?』
『何言ってんの当たり前じゃん』
 幼い頃から好きなシズキとデートが出来るのは女装した時だけ。どうしても男の姿で付き合いたいのに、やはりシズキは"男臭い人"が苦手なようだ。


 男臭い人、といってもそういう臭いがある訳ではない。ガタイが良くてオラオラしていて、所謂あの体育教師牛島のような感じだ。
 その為、俺は女装していないとシズキとデートが出来ない。


『朝から迎えにきなさい』
『8時くらいでいいか?』
『いつでもいい』


 こうしてシズキとデートの約束をした俺は、しばらく自分の女装した姿で楽しみながら明日の予定や準備を決め始めた。






 翌朝、しっかりと女装してシズキの家に向かう。
 服装は俺のセンスによって白のTシャツと黒のレザージャケット。黒いジーンズという実にカッコいい服装だ。
 元から鍛えていてスタイルが良い、というのもある。クビレもちゃんとあるし足だって細い。こういう服は俺に最も似合う。


 服装は基本的にこういうボーイッシュな服装が多い。可愛い服はシズキに見せる時だけは着るものの外に出る時は自分のセンスで服を着るんだ。


 肩掛けバッグの位置を上げて、シズキの家のインターホンを鳴らす。


「……シズキ〜?」


 全く音がしないのでシズキの名を呼ぶ。
 勿論声も女声だ。シズキに振られた中学1年生の頃、その時声変わりをまだしていなかった俺は必死に女声の練習をしていた。
 ある日突然、喉が壊れて女声しか出せなくなった日があり、数日間学校を休んで様子を見ていた。
 喉が治るといつの間にか声変わりをしていて、低い声が出るようになってしまったのだが、少し喉を開くと以前のような可愛らしい女声を何の苦もなく出せたのだ。


 透き通った女声は、普段からも驚いた拍子に出てしまったりする事があるがその時その時で何とか誤魔化してきた。


「おいあの娘可愛いぜ」
「お尻ちっちゃ〜い……モデルさんかな」
 話声がして後ろを振り向くと、同じ高校のバカップルだった。しかし女装した俺は普段の俺とは全くの別人。


「あっこっち見た! こんにちは〜!」
「こんにちは〜」
 綺麗な笑顔で挨拶を返す。


 彼氏の方なんかは俺の顔を見て顔を赤くしている。その視線の先にいる女の正体が学校一の不良だとも知らずに。


「やっぱモデルさんだよ! って何顔赤くしてるの?」
「い、いや……あんな可愛い人近くにいたんだなっ……」
「ひっど〜い! 1番可愛い女の子がすぐ側にいるじゃん!」
「それもそうだな!」
 うん、バカップルだ。


 と、そんな事より早くシズキ出てきてくれ。今みたいに尻を見られるのは嫌なんだ。こんなボディライン出るような服とズボンを履いてきた自分が悪いんだけども……。


──ピンポーンピンポピンピンポーン
「寝てるのか……?」
 そう思いスマホを取り出した時だった。


「うるさいっ!」
──ガンッ!
「いでっ!!」
 玄関の扉が勢いよく開いて、思いっきり顔面を打ち付ける。それでも女声を保っている俺はかなりのプロだろう。


「鼻折れたらどうすんだよ……って、お前っ! なんでパジャマなんだよっ!」
「寝てたのよっ! とりあえず上がって!」
 不機嫌そうに喚きながら俺の手を掴み家の中に入れた。


「いつでも来ていいって言ったのシズキじゃねぇか」
「返事がないなら寝てるって分かるでしょ? 電話で優しく起こしなさいよ」
「今電話しようとしてたよ……」
「インターホン連打してたから流石に起きたのっ!」
 寝起きなのに随分と元気だな。まあそれが俺がシズキに惚れた理由でもある。


 シズキはどんなに大変な時でも、いつも明るく元気に突き進んでいく女だ。ただのバカだと思った事もあったが、最終的に良い結果を残しているのを見て惚れた。
 この女は他のバカな女とは違う、ってな。


「それにしても綺麗な格好してるじゃん」
「だろ? 今の私は大人のクールな雰囲気を纏ってるんだ」
 そんな事を話しながらシズキの部屋に向かう。


「って、なんで私シズキの部屋について行ってるんだ?」
「マコちゃんなら別に良いでしょ」
 マコちゃん、というのは俺が女装した時に呼ばれるアダ名だ。本名が真琴まことだから女らしく呼んでるのだろう。


「男だから襲うかもしれないぞ?」
「襲ったらどうなるのか、1番分かってるのはマコちゃんだよね?」
「はい……冗談です」
「着替えてくるからそこで待ってて」


 結局パジャマから着替えるまで部屋の外で待たされる事になったのだが、シズキの肌と布が擦れる音が聞こえてきて実に幸せな気分だ。


 着替え終わったシズキが部屋のドアを開けると「入って」とだけ言ってきたので入る。
 シズキの部屋に入るのは慣れっ子だが、やはり女の子の部屋というだけで色々と考える物がある。


 ベッドの下には何があるのだろう。あの箱の中には何があるのだろう。ってな。


「それじゃ始めるわよ。撮影会」
「はぁ〜……綺麗に撮ってくれよ」


 そうして、いつものデート前に俺がモデルとなる撮影会が始まる。シズキの好きなアングル、ポーズで撮られた写真はシズキのSNSに顔を隠してアップされるのだ。レズカップル、という設定らしい。
 その写真に対しての反応を見るのが俺の楽しみだった。


「あ、その腰エロい。そのまま」
「どっちが変態なんだか……」
「お互い様でしょ」
 でもこうしてシズキと仲良くしている時間は、俺の人生の中で1番楽しい時間でもある。これだから女装は辞められない。

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