女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

300話 別れ



パーティーが始まってどのくらい経っただろう。私はルト様に大量のお酒を飲まされて覚えてない。
 しかし、確実にテーブルの上には数字が書かれて穴の空いたカードや、割り箸の先が赤く塗られたのが混ざったくじ引きのような物なんかが散らばっていた。


 でも、何も覚えてない。


「頭が痛い……」


 パーティーってこんなにお酒飲んで倒れる行事だっけ……本で読んだ内容とは違う。


「ルト様……起きてください」
「……うん……? ………………」


 ルト様も起きないし……あっという間に終わってしまったパーティーが残念でならない。お酒の力って怖い。


◆◇◆◇◆


 1人で部屋の掃除をしていると、チヒロさんが目を覚ました。


「……何してんの。片付けは私達がするわよ」
「そ、そんな。私だってメイドですし」
「良いの良いの……って、アンタ身体光ってるわよ?」
「え?」


 そう言われて自分の身体を確認すると、確かに光っているし、更には身体が透けてさえいる。


『元の世界に呼ばれてるよ』
「嘘っ!? わ、私元の世界に戻るって!」


 そういうと、チヒロさんはすぐにルト様とサハル様、リアンさんを叩き起こした。


 そんな……皆と更に仲良くなれたのに……。


「クロア! なんとかここに留まれないのか!?」
「クロアさんっ……」
「サハル! なんとかしてくれ!」


 ルト様やリアンさんが私の手を握ってきた。私も……まだここに居たい。サハル様ならどうにか……。


「できない事は無い」
「じゃ、じゃあ!」
「でもダメだよ。クロアは本来この世界にいるはずじゃない存在なんだ。帰るべき世界に帰らないと」
「そんなっ……身体が!」


 私の身体が更に強く光出した。


◆◇◆◇◆


ルシファーとの膠着状態が続いてる中、私はやっとこの状況から打破する魔法を見つけた。
 凄く昔に手に入れた時空魔法。どうやらママとペットのアノスから手に入れたみたいだ。


 ただ、これが悪魔に効くかどうか……一か八かだ。


「……」


 魔法を発動すると、何の音を聞こえなくなった。ルシファーも身動き一つ取っていない。
 成功した……のか?


 しかし、止まっていた時空がゆっくり動き始めてきた。流石に悪魔相手に長時間と時止めは不可能らしい。
 大体4秒。この間にママを救い出すのは簡単だ。


 もう一度時止めを発動する。


「……よしっ!」


 成功したのを確認して、すぐにママの身体に触れる。そして中にいるルシファーの魂を、魂捕獲ソウルキャプチャーという転生者から手に入れた能力で引きずり出す。
 っ……なかなか出てこない。


「……なっ、何をしている!?」


 しまった! 4秒を過ぎてしまったせいでルシファーが動き出した。
 ベリアストロさんから貰った能力でルシファーの力を封じ、持っていた剣を遠くに投げて一気に魂を引きずり出す。


「何っ……やめろっ!!」


 ルシファーが私に蹴りをいれる。普通の人間ならば、それだけで全身が真っ二つになるだろう。
 しかし私は今まで出会った生物。ルシファーを含めた身体を手に入れた為、魔力を封じた者の攻撃なんて通じない。


 そのまま一気に魂を引き抜く。


「よしっ……あれ……?」
「ぅ……ん」


 ルシファーがいなくなって、ママが目を覚ますが……何かがおかしい。


「【バグ】が消えた……?」
「貴様ァァ……」


 背後では、怒りに満ちたルシファーが起き上がろうとしている。
 状況が理解できない。ママは今目を覚まそうとしている。でも、何故私の能力【バグ】が消えた? なんでいままで手に入れた力が……消えた?


 このままじゃルシファーに勝てない……死ぬ?


◆◇◆◇◆


「ぅ……ん」
『クロア! 意識はある!? 急いで起きて!』


 サタナが危険を知らせるように呼びかけてきて、俺は目を覚ます。


「……ルイ……ス?」
「ママ……」


 目を開けると、ルイスらしき少年が俺を抱き抱えていた。
 何が起きてる? 俺の記憶は確か……男に首を捕まれて……。そう、ルイスの後ろに立っているような男……っ!!


「死ね」
「ルイス危ないっっ!!」


 黒い翼を持った男が、剣をルイスの背中に突き刺す。俺はルイスを守る為、咄嗟にルイスの前に飛び出た。


「ママッ!」 
『クロア避けろっ!!』


い──でも──女─な


────
──
……


 生き……てる。
 俺はいつの間にか、黒い翼の男の首を切り落としていた。それも相手の剣を奪って。


「ママ……?」
「ル゛イ゛……がはっ!!」


 口を開けた瞬間、大量の血が出てきた。
 喉が熱い……息ができない。


「あ゛っ……かっ……」


 喉に触れると、骨のような物に指先が当たった。


「ママッ!! ダメッ! 死なないでぇっっ!!」


 この声は……ルイスだよな。ルイスは助かったのか。


 ゆっくりと薄くなる意識の中、ルイスの後ろに誰かが立っているシルエットが見えた。そのシルエットは、大きな翼を持っていた。


「に…………ぇ……」


 逃げてと言おうとしたが、既に意識はどこから遠くの場所へ言ってしまった。

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