女嫌いの俺が女に転生した件。
296話 未来の為に悪(?)に堕ちる
しばらく歩いて、ふと上を見上げると巨大な島が浮いていた。
「あれはなんですか?」
「あれ? あれは私達の国だよ。さっきまであそこに居たんだよ」
「だ、だからあんなに雲が近かったんですか……」
どういう原理で浮いてるかなんて気にしても仕方ない。私はルト様と散歩を続けた。
「あ、そこ近づかない方がいいよ」
「え?」
ルト様にそう言われた瞬間、私の足首に何かが巻きついてきた。
「えっ?」
──ズルッ
そのまま足を引っ張られて、木の高い場所に吊るされた。
「ひぃぃ! 助けてルト様!!」
身体中に蔦が絡みついてきて、更にモゾモゾ服の中で動いてるから気持ち悪い!
「魔法の使い所だよ〜!」
「助けてぇぇぇ〜〜っ!! サハル様に無理矢理子作りしてもらうように頼みますよ!!」
「それはダメ」
なんとかルト様に助けてもらい、乱れた服装を整える。
「はぁ……早く助けてくださいよ……」
「クロアは臆病だなぁ〜」
なんとか息も整って、先ほど私が吊るされた木の近くを見るが特に変わった様子はない。
「なんで近づいたらダメって分かったんです?」
「魔物を探す為に魔眼発動してるからだよ。この木は魔物だから他の木より魔力が多いんだ」
そう言われて私も魔眼で木を見てみる。
確かに、他の木とは違い禍々しいオーラがムンムンと漂っている。私も安全の為に魔眼は常に使っておいた方が良さそうだ。
「この木は倒さなくていいんですか?」
「魔物って行っても、この木は動けないからそこまでの害はない。むしろ空気中の魔素を増やしてくれるからありがたいんだよ。……魔素って分かるよね?」
「はい。リアンさんとチヒロさんに教えてもらいました!」
魔素くらい常識中の常識! それを知らないなんて時代遅れにも程があるね。
『少し前まで知らなかったのにね』
『うっ、サタナはうるさい』
サタナとは声を出さずに会話できる事に気づいて、最近は心の中で会話している。
でもたまに心の中の感情が顔に出たり、ついつい声に出して誤解を生んでしまう事もある。
「ん〜クロアは突然の戦闘に弱いな」
「そうですね……パニックになってしまいます」
ルト様に指摘されて、少しだけ落ち込む。
「最初は誰でもそうだよ。自分の力に自信を持って行こう」
「っ! はい!」
そうして私とルト様は、更に魔の森の中を歩き回って魔物と戦った。
◆◇◆◇◆
「ただいま〜。クロア借りてったよ」
城に帰ってきて、城の中心にあるホールを掃除していたリアンさんがすぐにやってきた。
「ルト様おかえりなさいませ。……クロアさん大丈夫ですか?」
「はぁっ…………はぁっ……大丈夫そうに……見えますか?」
酷かった。突然現れた魔物に追いかけ回されたり、コウモリ達が私の周りをクルクル回って怖かったし。
「水……飲む?」
「ありがとうございます」
出された水を飲み、乾いた喉が潤った。
ルト様は既に部屋に帰ってるみたいだし、私も休みたいところだけど……仕事が沢山残ってる。
「ゆ、夕食の食材買ってきます!」
「忙しいね〜」
準備してくれていたのか、リアンさんが私に籠を渡してくれたのですぐに外に出て買い物に向かった。
こんなに広いお城でメイドがこんなに少ないと致命的だと思う。
◆◇◆◇◆
ある日の朝、ルト様の部屋にミシェルさんがやってきた。
これはチャンスと思い、サハル様に報告すると感謝された。
「今から僕の魔法であの2人を発情させる。しっかり音を聞いてるんだよ」
「はい」
ルト様の部屋の前で聞き耳を立てて申し訳ないと思う。でもこの国の未来の為……ルト様ごめんなさい。
──「な、なんか暑くない? 私窓開けるね」
──「ああうん……」
効果はしっかり出ているみたいだ。サハル様の魔法は凄い。
──「んんっ……なんだろう……」
──「ご、ごめん。ちょっとお手洗いに」
ミシェルさんが部屋から出てくるようだ。
「っ!」
サハル様に腕を引っ張られて、口を抑えられた。
「静かに。透明化を使ってるから見えないよ」
「あ、ありがとうございます」
部屋から出てきたミシェルさんは、股の部分抑えて挙動不審になっていた。
「ミシェルさんどうしましたか?」
まずい、リアンがやってきた。
「あ、ああいや。お手洗いってどこだっけ。この城広くてさ」
「あぁ〜私もよく場所忘れて漏らしそうになるんですよ! えっと確かですね、──」
この城広いけどその分トイレも沢山ある気がするんだけど、なんで忘れる事があるのだろうか。
「──らへんです」
「ありがとう!」
ミシェルさんは場所を聞くと、すぐに走っていった。
「それで、サハル様とクロアさんは何をしてるんです?」
「バレたッ!?」
「ちっ……リアンは鼻が効くね」
結局ミシェルさんがお手洗いに行った事で作戦失敗となった。
早く終わらせてこの罪悪感から解き放たれたい!
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