女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

294話 メイドは辛いよ



「マジかよぉ……畜生……」
「ルト様ごめんなさい……サタナが……」


 ソファに座って泣き崩れるルト様を、私は必死に背中を撫でて慰める。


「でもこれでこの国の未来は確定だ。ルトも好きなだけ子作りできるね」
「くそぅ…………出産って痛いんだよね……?」


 ルト様が涙目で私に聞いてきた。


「は、はい……サタナがそう言ってました」
「子作りなんて絶対にしないからなっ!!」


 そのまま私のお腹に顔を押し付けてきた。
 ふ、服の腹部で涙を拭かないで……。


「でも次の魔王作らないとこの国は滅びるってサタナキアが言ったよ?」
「嘘っ!? そうなのか!?」


 私が頷くと、ルト様はさらに落ち込んだ。今度は膝枕だ。


「誰かに無理矢理させられるのと、ミシェルとする。どっちがいい?」
「……どうせするならミシェルがいい。でも嫌だ……」


 私としてはルト様を助けてやりたいけど、この国の未来も助けてあげたい。こんな時リアンさんやチヒロさんはルト様になんて言うんだろう。
 何もしてやれないのが悔しい。


「サ、サハル様。今日はルト様を休ませたらどうでさょうか……考える時間はまだ沢山ありますし」
「それもそうだね。じゃあ僕は部屋に帰るよ」


 そういって部屋から出ていったサハル様。この部屋には私とルト様しか残っておらず、ルト様は未だに私の膝枕で……寝てる!?


「ル、ルト様! 寝るならお布団で!」
「ぐすっ……一緒に寝よう……」
「だっ、ダメです! 私は仕事がっ……」


 しかし、そのままベッドまで運ばれて横にさせられた。
 はぁ……ルト様が寝てからでもいいかな。


◆◇◆◇◆


「……はっ!」


 目を覚ますと、目の前にリアンさんの顔があった。


「うわぁっ!」
「クロアさん……」


 ジト目で睨んでくるリアンさんに、何も言えずに小さくなる。


「クロアさんの分まで私が全部したんですよ」
「はい……」
「更にはルト様と一緒に寝るなんて」
「……はい……」


 どんどんリアンさんが大きく見えてきて、私のメンタルが壊されそうになる。


「罰として夕食の食材。一緒に買いに行きますよ」
「……? それって罰なんですか?」
「いいんですよ。ほら、行きましょう」


 リアンさんは既に買い物カゴを片手に持っていて、一緒に買い物に行く気満々だったようだ。
 その証拠にフワフワ尻尾がバタバタと暴れている。


◆◇◆◇◆


 リアンさんと一緒に商店街へやってきた。


「はっ、走らないでくださいっ!」
「クロアさん足遅いですよ〜!」


 リアンさんはすぐに走ってどこかに行こうとするから、私は着いていくだけで必死だ。
 色んな食材を買いながら、私はもうすぐで倒れそうになってきている。


 限界がやってきて、近くの木の椅子に座り込む。


「あれ? もう終わりですか?」
「…………」
「ごめんってば。怒んないで」


 怒ってるんじゃない。悔しいだけだ。


「でも良い運動になったでしょ?」
「……それが狙いで誘ったんですか?」
「それもあるけど、一番はクロアさんともっと仲良くなりたいって思ってね」


 逆に嫌いになりそうなんだけど、恨むことの出来ない笑顔だ。


「実はこの国って空に浮いてるんですよ」
「またからかってるんですか?」
「本当ですよ。だってその証拠にほら、雲があんなに近いでしょ?」


 ……元々の雲の高さを知らないから何とも言えない。


「そういうのいいですから、買い物終わらせましょう」
「走──」
「歩きますよ」


 リアンさんが勝手に走っていかないように、手を繋ぎながら買い物をさっさと終わらせる。


◆◇◆◇◆


 城に帰ってきた私達は、食材を調理室に運んで夕食の準備を始める。
 料理はリアンさんとチヒロさんに1から教えてもらったので問題ない。


 今のところ、3人で食事を作りながら会話している時が一番楽しいかもしれない。


「痛っ!!」
「クロアさんは包丁の使い方は上達しませんね」
「もう……何してんのよ」


 チヒロさんに治してもらうのもいつもの事だ。

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