女嫌いの俺が女に転生した件。
292話 美味しいお買い物
「これなんか似合うんじゃないか?」
「サイズ会うかな〜……」
ルト様とミシェルさんが、服屋に来て私の服を選んでいる。別に城にあるメイド服くらいで問題ないのだけれど、二人がそれを許さない。
「クロアは可愛いっていうのより、大人っぽいクールな服が似合うよね」
「ルトの故郷のモデルさんにそんなのいたよな」
よく分からない話をしていて、私にはついていけそうにない。
「さて、10着くらいあるから全部試着してみよう」
「えっ? ここでですか?」
「そうだよ。あそこに試着室があるから、ほらほら」
そのままルト様に背中を押されて、試着室というカーテンに囲まれた狭い場所にやってきた。
「ほら、服脱いで」
「あの……見られてると恥ずかしいのですが……」
「あ、出てた方が良い? じゃあ着替えたら言ってね」
そもそも試着室に2人で入って何をしようとしていたのだろう。ルト様って私やリアンさんを見る時の目が少しいやらしいからな。
とりあえずメイド服を脱ぎ、下着だけになってからこのズボンを……ん、キツい。どうやって……あ、これ外すのか。
着るだけで一苦労する。
足がピチピチになるジーパンと呼ばれるズボンと、上には黒くて柔らかい布のジャンパー。頭にモノクロのキャップを被る。
なんとか1着目の服を来たからルト様に教えなければ。……恥ずかしいなぁ。
「き、着替えました〜」
──シャッ!
勢いよくカーテンが開けられて、内心ドキッとしたけど服を来てるから大丈夫だ。
「おぉ〜! こんなポーズしてみて!」
「こ、こうですか?」
左手を腰にやって、右手でキャップの鍔の部分を掴む。そして若干俯き加減に。
「カッコイイよ!」
「似合うなぁ、流石ルトが選んだ服だ」
「ふ、二人共大声を出すと周りの人にっ!」
その後の色んな服を試着して、もう色んな意味で疲れた。
◆◇◆◇◆
服を何着か買った後、メイド服に戻って別の店へやってきた。
私とルト様は店の外にあるテーブルで待機して、ミシェルさんが店の中に入っていった。しばらく待っていると、ミシェルさんが二人分の白い食べ物を持ってきてくれた。
「あれ? ミシェルの分は?」
「僕はいいよ」
じゃあ有難く頂くとしますか。冷たそうな白い物がグルグル巻かれている。
まずは一口……冷たくて口の中でトロける。
「んん〜……こんなに冷たくて美味しいの初めて食べました」
「ソフトクリームだよ。零さないようにね」
「はい!」
何度か溶けたクリームが落ちそうになったけど、必死に舐めながら回避していった。口の周りについたクリームをルト様が拭いてくれた時は驚いた落としそうになったけど……。
「ご馳走さまでした」
しっかりとサクサクの部分も食べ終わると、ルト様も丁度食べ終えたようだ。
「それじゃあクロアはもう帰る?」
「はい。ありがとうございました」
ルト様に頭を下げてお礼を言う。
「私とミシェルはまだしばらく遊んでるから、リアンかチヒロに伝えといて」
「分かりました」
そのままルト様に自分の部屋まで転移で送られて、すぐにリアンさんかチヒロさんを探す。
◆◇◆◇◆
「……あれ、ここどこ?」
城の中を歩き回っていると、全く知らない場所にまで迷い込んでしまった。
「何してるんだい?」
「っ……あ、サハル様」
背後から声をかけられ振り返ると、サハル様がポケットに手を入れたままこちらへ歩いてきていた。
「リアンさんかチヒロさんを探していて……あっ、サハル様に伝えておきますね」
「うん?」
「ルト様はミシェルさんとしばらく話してから帰ると言っていました」
サハル様もお城の人だし、何より王子だから伝えていいよね。
「ふ〜ん……。じゃあ僕の方でリアンかチヒロを見つけたら伝えとくよ。それで、帰り道分かる?」
「えっと、分かりません……」
素直に迷っていた事を伝えると、サハルはニヤッと笑って近づいてきた。
「僕の部屋でお話しない?」
「わ、分かりました」
特に断る理由もないし、私はサハル様と話す為に部屋に転移した。
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