女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

287話 ルイスの帰宅



「ルイスく〜ん! やっぱり今日から休校になるんだって!」
「おぉ、それじゃあ帰っていいのか」


 同年代で仲の良い女の子、ハーミアが許可無く部屋に入ってきた。


「ルイス君のお母さんとお父さんって凄い人なんでしょ?」
「この前噂で聞いただろ? マ……お母さんが難しいダンジョンを攻略したって」


 私の母親、クロアは神様だ。とても優しいお母さんで、私はそんなお母さんを尊敬している。


「ねぇねぇ! 今からルイス君の家に一緒に行ってもいい?」
「ダメだろ? この世界に異変が起きてるって大混乱してるんだし、ハーミアの両親に心配させない為にも自分の家に帰るんだよ」
「きゃ〜っ! ルイス君優しいっ!」


 ハーミアは昔から何かあると私に抱きついてくる。


「ほら、自分の部屋に戻って」
「またいつか絶対に会おうね!」
「ああ」


 そういって部屋からハーミアが出ていった。


「……はぁぁぁ〜……男のフリするのいつになっても疲れるなぁ〜……」
「キュ〜」


 そのまま疲れた身体をベッドの上で休ませ、ネクロドラゴンのアノスを抱きしめる。
 そう、私はルイスという男の身体で産まれた元女子。成長していくと共に前世の記憶が蘇ってきて、知識も豊富になってきた。
 それで私はこの学園で、数学での成績はトップ。女子達にはモテモテだ。


 私のママであるクロアは、女性なのに男らしい仕草もある。そんなカッコイイママと再開できるとなれば、もう私の心はウッキウキだ。


「ふふ〜ん♪ ママとパパ元気にしてるかな〜♪」


 ご機嫌に荷物の整理をして、私は学園の外に出た。まだする事がある。




「ルイス先輩! 結婚を前提に付き合ってください!」
「俺は君みたいに綺麗な女性と付き合う事はできないよ。もっと素敵な彼氏が見つかるさ」
「素敵な女性……」


 最後に後輩の女子からの告白を断り、学園からママ達のいる家へ歩いて帰る。
 勿論アノスは頭の上だ。


◆◇◆◇◆


「ふぅ〜……ママ、成長した私を見て驚くだろうなぁ……よしっ!」


 玄関の前で心の準備を整える深呼吸をした後、インターホンを押す。


──ピンポーン


 すると、家の中から足音が近づいてきた。ママ? パパ?


──ガチャッ
「あいよ〜……誰だ?」


 出てきたのは知らない男の人だった。


「あっ、あのっ! ここは誰の家ですか?」
「誰の家って……クロアと相ぼ──」
「俺っ! ルイスって言います! ママとパパの子供ですっ!!」


 そういうと、家の奥からバタバタと音がして、こちらへ走ってくる足音が聞こえる。


「ルイスかっ!?」
「パっ、お父さん!!」


 ママじゃないのは少し残念だが、パパのリグリフに抱きつかれて私も抱き返す。ママの初恋の人……ふふふ。


「お父さん、学園が休校になったから帰ってきたよ」
「よく帰ってきたな……おかえり」
「お母さんは?」


 もうすぐママが出てくるはずだけど、家の奥から人が出てくる気配がない。その代わり大勢の人の気配を感じる。その中にママがいるのかな?


「お母さんは……その、なんだ。とりあえず家に上がってくれ」
「わ、分かった。ただいま〜」


 パパと一緒に家の中に上がると、とても懐かしい匂いがしてきた。もうあれから9年……今じゃ私も14歳だからなぁ。


 懐かしいリビングに来ると、知らない男の人や女性が沢山座っていた。


「その子がクロアの子供か」


 かっこいい女性が私を見てきた。自己紹介せねば。


「ルイスって言います。初めまして」


 そういうと、皆笑顔で拍手を送ってくれた。
 温かい場所だなぁ……ママとパパはこんな人達と交流があったんだね。


「ルイス君、君は確か転生者だったよな?」
「は、はい」
「俺は転生者のクラウディアだ。この国の魔王をやっている。よろしくな」
「よろしくお願いします」


 手を出してきたので、とりあえず握手をした。このクラウディアという女性もママと知り合い……それに魔王。本当に私のママって凄い人なんだなぁ。


「さて、リグリフ。話しても問題ないよな?」
「……どうだろうな。ルイス、今から聞くことは本当の事だ。なるべく落ち着いて聞いてほしい」
「? な、なんでしょう」


 荷物を床に置いて、クラウディアさんの前の席に座る。
 周りが急に静かになって、皆私を見守るように見つめてくる。


「クロアがな……」
「お母さんがどうかしたんです?」
「……」


 なかなか話してくれない。雰囲気からして悪い知らせなのは分かる。


「クロアが神級の悪魔、ルシファーに身体を乗っ取られた。今は別世界にいる」
「……なんだ。そんな事だったんですか」


 呆気ないリアクションを見せると、周りの人達は驚いたように目を見開いた。


「悲しまないのか?」
「悲しむも何も。その悪魔ルシファーを倒してお母さんを助ければ良いって話ですよね?」


 そういうと、更に驚いたような表情。中には私の何とも思ってないような言葉に苛立ちを覚える人まで現れた。
 でも、私にとって何の問題もない。


「……まずルイスには最初から説明しないとダメみたいだな」


 それから、クラウディアさんに神魔戦争という戦いの話を聞かされた。


◆◇◆◇◆


「──……これでもまだ助けれると?」
「当然です。だって俺、ここにいる誰よりも強いですから」


 全ての話を聞いた上でも、私は余裕を持ってそう答えることができた。


 何故なら、私の能力は出会った生き物全ての力を自分にコピー、プラスする能力【バグ】を持っているからだ。

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