女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

277話 意外な弱点



「あ、意外と丁度良い温度」
「うひゃ〜、奥まで泳ぎに行きたいな〜」


 鮫とかそういう危険な生物はいないのだと思うけど、危ない生き物とかいるかもしれないな。


「あれ、海にも魔素ってあるんだな」


 魔眼で水面を見てみると、薄らと魔素が含まれていた。つまり海の中にも魔物なんかが発生するという事だ。


「ほら深いところ行こうよ」
「うわっ!」


 サタナが海の水を掛けてきて、今まで膝下までしか慣れていなかったのに上半身が濡れてしまった。


「サタナこそ先に泳げよ〜!」
「あっ、だったら!」


 俺がサタナを水をかけ返すと、今度は腕を引っ張られて一緒に足の届かない場所まで連れていかれた。


「きゅ、急に浸かると危ないからな!?」
「平気だって。クロアは水の中で目とか開けれる?」


 ん〜どうだろうか。試してみるか。


「じゃあまずサタナから試してみて」
「分かった」


 サタナが鼻を摘んで、ゆっくりと水の中に身体を沈める。


「ぷはっ!」


 すると、すぐにサタナが顔を上げてきた。


「無理みたい。目がしょぼしょぼする……」


 なんとサタナは水の中で目を開けれないようだ。意外だな。
 余裕で目を開けて深いところまで潜れそうなイメージだったんだけど、やっぱりサタナにも苦手な事ってあるんだな。


「よし、私も試してみる」


 まあ俺は以前、湖の中に潜ったりしてたから海水も大丈夫だろう。
 海の中に顔を入れて目を開けると、綺麗なサンゴや岩の景色が広がっていた。まだここはそこまで深いところではなく、少し潜れば足も付く。
 ちょっと目を横にやると、サタナが足をゆらゆらさせて浮いているのが見えた。……足綺麗だな。


「海の中綺麗だよ」
「エリフォラとアリスは何してるんだろうね」


 そう言われてふと周りを見渡してみると、エリフォラとアリスは浮き輪に座ってプカプカと浮いていた。
 お互いに手を繋いで離れないようにしてるみたいだ。


「微笑ましいな」
「2人の所に行こうよ!」


 サタナに手を掴まれて、エリフォラ達の元に泳いでいく。


──チクッ
「んっ?」


 今何か……太ももに……。


「どしたの?」
「ああいや、何でもない」


 気のせいだろう。そもそも近くに生き物なんていなかったし、大丈夫だ。


◆◇◆◇◆


「おっすエリフォラ、アリス」
「あっクロアさんとサタナさん!」


 エリフォラとアリスは、ずっと浮き輪でプカプカと浮いているだけで泳ぐつもりはなさそうだ。


「2人とも本当に泳げないのか?」
「ん〜……分かんないです」
「多分泳げない」


 分からないなら一度泳がせた方が良いだろう。


「ほら、折角海に来たんだし海に入りなよ」
「きゃ〜っ! ゆ、揺らさないでください! 落ちますっ!!」
「え……」


 エリフォラの浮き輪をちょっと押してみると、予想以上に大きいリアクションにビックリしてしまった。


「も、もしかして……怖い……とか?」
「そん……な事はありません! なんせ私は魔王ですから! 見ててくださいね!」


 そういうと、ゆっくりと浮き輪から手を離さないように身体を海に入れていく。
 エリフォラのあまりにも真剣な表情に、ついつい手を出したくなるが辞めておこう。


「あわわ……ど、どうです? 私だってこのくらい平気です!」


 その割には浮き輪を両手でがっしりホールドして離しそうにないのだが……。


「浮き輪から手を離してみて」
「えっ……分かりました」
「頑張って、エリフォラ」


 横からアリスが応援してくれている。


「よ〜し……っ! がぼっ!?」
──ぶくぶくぶく……


 手を離した瞬間、バタバタと暴れながらあっという間に沈んでいった。


「だっ、大丈夫!?」


 すぐに引き上げると、苦しそうな顔でゲホゲホとむせている。


「す……少しは浮けると思ったのですが……ダメでした」


 本当にあっという間に沈んでいったしな。まさかエリフォラは本当にカナヅチなのか。


「そんな大きな浮き輪が胸に付いてるのに。不思議だね〜」
「こっ、これは浮き輪じゃありません!」


 サタナがちょっとからかうと、エリフォラは恥ずかしそうに胸を隠した。その間も浮き輪は絶対に話すことは無かった。


「お〜い! サタナちゃん達! 荷物とかがある場所教えるから誰か来てくれ〜!」


 あ、イザナギが呼んでる。


「じゃあ私が行くから、皆は好きに泳いでていいぞ」
「いってら〜!」


 すぐに陸に上がって、イザナギの元に到着する。


「おぉ……」
「何?」


 イザナギがまじまじと俺の身体を見つめてきた。


「綺麗な身体してるな〜って思ってな」
「サタナの方が綺麗な身体してるよ。早く付き合えるといいな」
「ははっ、ありがとな。じゃあ着いてきてくれ」


 周りの視線を感じながら、イザナギの後ろを着いて行った。

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