女嫌いの俺が女に転生した件。
271話 謎の渦出現
「それじゃあまた」
「うん! 今度は私達クロアちゃんの家に遊びに行くね!」
随分と長話が続き、既に空は赤くなってきている。皆心配しているだろうし、俺はベリアストロ達に別れを告げて家へ帰った。
◆◇◆◇◆
「ただいま〜」
「随分と遅かったな」
リグとサタナが暇そうにしていた。
「ちょっとベリアストロ達と話してきた。それでイザナギは?」
いつもならイザナギもここにいるはずなのだが、今日はどうしたのだろうか。
「何かイザナミに呼ばれたってよ。緊急の用事らしい」
「緊急ね……夕食いつする?」
そういうと、バッとサタナが立ち上がった。
「クロアが帰ってきたことだし、夕食作って寝よう!」
「……なんかサタナ疲れてる?」
今日のサタナは少し疲れてるような感じがする。
「実は俺もなんだが、今日は魔力が勝手に減ってる気がするんだ」
魔力が勝手に減るだと?
「それってイザナギが呼ばれた事と関係してる?」
「ああ、多分何かが起きてるんだろうと思う。でもまあ、いずれ知らされるだろうから大丈夫だろう」
そうか……魔力が勝手にねぇ。
ふと、魔眼で魔力の流れを見てみると、空気中の魔素含め俺やリグ、サタナの身体から魔力が抜け出していた。
その魔力は窓から外に出ていっている。
「何だ?」
窓から顔を出して魔力の行き先を確認すると。
「……なんだあれ……」
上空に、大きな魔力の渦ができていた。色んな場所から魔力がそこに集まっていき、中で消えているみたいだ。
「何かあったか?」
「あ、ああ……魔力が空に吸い込まれてる……」
「何っ?」
リグが隣にやってきて空を見上げるが、魔眼を使わないと見えないようだ。
「んん〜……とりあえず窓閉めるか」
「そうだな」
「夕食作ってるから、クロアとリグはママとパパとエリフォラとアリスちゃん呼んできて〜」
「はいよ〜」
あの渦の正体は何だろうか。単なる自然現象……? 可能性はあるが、明らかに怪しすぎる。イザナギが帰ってきたら聞いてみるか。
◆◇◆◇◆
「ごちそうさま。お母さんもお父さんも今日疲れてる?」
夕食を食べ終わり、俺はミリスとバルジに聞いてみた。
「そうねぇ……外が暗くなってきてから体調が悪いわ。もう歳なのかと思ったけれど、皆もそうなの?」
「私は問題ないけど、リグとサタナも体調悪そうだった」
「良かった。俺もまだまだ歳じゃないんだな」
歳なのかどうかは分からないけどな。
「アリスは大丈夫?」
「大丈夫」
あ、そういえばアリスは魔法も使えないようにしてあるから魔力は無いんだっけか。
「なんで皆元気が無いのかしら」
「原因は空に魔力の渦があって、そこに色んな所から魔力が吸い込まれていってるんだ。だから今は窓閉めてる」
「後で私達の部屋も窓閉めた方が良いわね」
本当に不思議な現象だなぁ……誰かが意図的にやったとしても、あんな大きな渦をどうやって作り出したのだろうか。そもそも魔力で魔力を吸い込むなんて、俺でも方法が分からない。
「2人は今は大丈夫か?」
「うん。窓閉めたら良くなったよ」
「吸い込まれた分沢山食べないとですね」
「クロアは魔力量が多いから大丈夫なのかもしれないな」
そうだな、でも警戒はしておいた方が良い。
あの渦が消えるまでは家に篭ってた方が良さそうだ。
それから俺達は、食器を片付けて早めに寝ることにした。
イザナギは今日は帰ってきそうにないので、明日聞くことにする。
4人で布団に潜り、渦について話し始めた。
「サタナは元神様だし何か知ってるんじゃない?」
「う〜ん……似たような現象を聞いた事はあるけど、信じたくないというか」
信じたくない?
「そんなに危ない物なのか?」
「危ないと言われれば危ないかな。でもそんな事考えたくないよ。おやすみ」
サタナは何も言わずに布団に潜ってしまった。
サタナが恐れるなんて珍しい。俺は渦に対して、不安を抱くようになった。
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