女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

270話 転生者を預けます



転生者シェイクをクラウディアの城まで連れてきた。


「随分と立派な城だな」
「魔王の城だしね」
「ん……魔王!? この国には魔王がいるのか!?」


 まさかここが魔王の国だと知らずにやってきたのか。
 確かにこの国には、魔王を崇拝する普通の人間も住んでいる。が、知能のあるオーガなんかもここに来る時見かけただろうに。気づかなかったのか。


「一応ここの魔王も元日本人だから、フレンドリーに接するように」
「何? だから日本に似たような街並みだったのか」


 納得したように顔を頷かせるシェイク。
 そうして俺はシェイクを連れて、城の敷地の中に入る。


「あっ、クロア様お久しぶりです」
「おぉケイじゃん! 久しぶり、上手くやれてる?」


 庭の花や木の手入れをしていたケイがやってきた。
 ケイは元々、別の国の王子マローンの執事をしていた転移者だ。今はクラウディアの執事として働いている。


「はい。クラウディア様からはよく褒められて、最近は色んな魔法を教えてくれるようになりました。それで、そちらの子供は?」


 ケイが俺と手を繋いでいるシェイクを見て首を傾げる。


「俺はシェイクだ」
「この子は転生者なんだ」
「転生者……では、クラウディア様をお呼びした方がよろしいでしょうか?」
「できればベリアストロも呼んでくれ」
「承知しました」


 すると、ケイは地面の中に潜るように消えていった。不思議な魔法だな。
 にしても、流石執事。ちょっと話をしただけで何をすれば良いのか理解してくれる。俺もああいう執事欲しいな。


「あっ、来た来た」


 城の方からクラウディアとベリアストロが歩いてきた。流石魔王と魔女、威風堂々としている。
 シェイクの握る手が自然と強くなった。


「なんだあの魔力は……」


 どうやら二人の魔力に驚いているようだ。


「久しぶりだなクロア。ケイから話は聞いた。そいつが転生者か」
「転生者なんてどうでもいいから、私はクロアさんとイチャイチャしたいわ」


 2人ともいつも通りの様子で安心する。


「転生者が来たっていう事を伝えにきただけなんだけど、今後とも転生者がこの国に集まってくる可能性がある」
「なぜ分かる?」
「この子はシェイクっていうんだけど、シェイクはこの国に転移者が集まっているっていう噂を聞いて着たらしい。ついさっきギルドで会った」


 すると、クラウディアは興味深そうにシェイクを見つめていて、ベリアストロは物欲しそうに俺を見つめている。


「そうか。俺はこの国の魔王のクラウディアだ。お前と同じ元日本人だからよろしくな」
「よ、よろしく」


 クラウディアが手を差し出してきて、シェイクは恐る恐るといった感じで握手をした。


「クロア。シェイクは俺達で預かっていいんだよな?」
「ああ。私の家に入れても邪魔なだけだしな。あ、でも学園には通いたいって言ってたから通わせてほしい」
「分かった」


 こうして転移者、転生者をこの国で育成していけば武力として発達するだろう。更にいえば、この国は更に充実していく。


「シェイクって前世の職業は何?」
「い、一応漁師……をやっていた」


 なるほど。じゃあ将来魚料理が増えるといいな。


「クロアさん、折角来たのだから一緒に話しましょう? 丁度ソフィアさんとワタルさんも来てるわよ」
「おっ! じゃあ行こうかな。クラウディア、シェイクをよろしくな」
「ああ」


 俺はベリアストロと一緒に、ソフィとワタルの元に向かった。


◆◇◆◇◆


「あれっ!? クロアちゃんっっ!? わぁ〜久しぶり!!」
「久しぶりですクロアさん!」


 城の裏側にある庭園のテーブルで、ソフィとワタルはお茶を飲みながら仲良く話していた。


「久しぶり2人とも〜! 元気にしてたか!」
「勿論! クロアちゃんも元気?」
「毎日元気だ!」


 俺はベリアストロと共に、空いてる席に座った。


「クロアさんが転生者を連れてきたから、ついでに呼んだのよ」
「やったぁ〜!」
「転生者ですか、珍しいですね」


 確かに、いままで転生者なんて見たことないな。俺とリグとクラウディア……それくらいだろうか。


「クロアさん、お茶をお持ちしました」
「あ、ありがとう」


 ケイがお茶を持ってきてくれた。本当に気が利くな。


「ねぇクロアちゃん!」
「うん?」
「遊ぼ!」


 なんかソフィ子供に戻ってないか?


「う〜ん……今日は仕事して疲れてるから、身体を動かすのは無理だな」
「そっか〜……じゃあリグリフ君と最近どう?」


 そうだな〜、なんか好き〜って気持ちは少なくってきたかもしれない。


「普通かな〜。ソフィはワタルとどうなんだ?」
「えぇ〜? ワタルの前で聞いちゃう〜? えへへ」
「俺も気になるから教えてよソフィア」
「ど〜しよっかな〜?」


 この2人はラブラブだな。俺ももっとリグに甘えたりとかしてもいいのだろうか。


「えっとね〜最近エッチしてくれなくなって寂しいかな〜!」
「ぶっ! そ、そういうのは……」


 ワタルが飲んでいたお茶を吹き出してしまった。
 ソフィが特殊なだけで、別に俺くらいの夫婦が普通なのかもしれない。良かった良かった。


「ねぇクロアさん」
「ん?」


 ベリアストロが俺の隣に座ってきて、ふとももに手を触れてきた。


「……もう我慢出来ない。久しぶりにいいでしょ」
「えっ、ちょっと!」


 突然抱きしめてきたから、慌てて持っていたティーカップをテーブルの上に置く。


「す〜は〜……す〜〜〜は〜……あぁっ、最高っ」
「ははは……」


 もうこういうのは慣れたもんだ。
 俺はベリアストロの頭を撫でながら、お茶を再び飲み始める。


「やっぱりクロアちゃんはかっこいいなぁ……動じない」
「そうか?」
「うん」


 かっこいいって言ってもらえると、まだ俺も男なんだなって実感できて嬉しいな。
 自然と笑みが零れる。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品