女嫌いの俺が女に転生した件。
269話 現れた転生者! お前は女神だ
適当に見つけた依頼をいくつか終わらせて、受付の女性から金貨2枚と銀貨6枚の26000マニー手に入れた。
「そういえば、マニーってギルドに預けれたっけ?」
「はい。ギルドカードを提示していただければ、預ける事も引き出す事も可能ですよ」
そう、ギルドは銀行の様な役割も持っているのだ。といっても他にしっかりとした銀行があるのだが、ギルドは冒険者として働く人達専用の銀行になっている。
「現在クロアさんは……20万マニー預けられてますね。これは冒険者登録して最初に貰える補助金と同じ金額です」
補助金……? そ、そんなのあったか?
「えっと……補助金って?」
「も、もしかして説明されませんでした?」
俺が冒険者登録をしに来た時は……確か色々と騒がしかったな。ギルドマスターまで出てきたし、受け付けの人が説明するのを忘れていたのだろうか。
「まあいいや。とりあえず26000マニー預けるよ」
「分かりました。これでクロアさんの貯金額は22万6千マニーですね」
22万6千マニーか。家にある金の方が沢山あるから、使い道は特にないだろう。もしもの時の為に預けるだけだ。
「あれ? 姉ちゃんそんな金持ってんの?」
突然、近くの椅子に座っていた男冒険者が声をかけてきた。
「俺と遊ばねぇか?」
「おい、あの冒険者クロアさんの事知らないのか」
「最近この国に来たみたいだ」
「クロアさんに手出したらどうなるんだ……」
ギルド内の雰囲気が変わった。そんなに俺って恐れられてるのか?
「知らない人と遊ぶのは苦手なんだ。他を当たってくれ」
「良いじゃねぇか。なあ」
「おいお前やめろ!!」
男冒険者が俺の肩に触れた時、別の席に座っていた冒険者が立ち上がった。
「お前なんかがクロアさんに釣り合う訳がないだろ!」
「そうだそうだ! 俺達のクロアさんに触れるな!」
「痛い目に会いたくなきゃ、いますぐクロアさんから離れろ!!」
何やら騒がしくなってきた。
俺に触れようとしてきた冒険者は、何が起きてるのか分からないような顔で、罵声を浴びせる冒険者達をキョロキョロと見ている。
「あの〜……これどうしたらいいんだ?」
「さ、さぁ……私にはどうする事も……」
困って受け付けに聞いてみたが、何もできないようだ。あまり騒がしいのは好きじゃない。終わらせるか。
「なぁアンタ、そういう訳だから他を当たってくれ」
「……もしかして姉ちゃん、どっかのお偉いさんか?」
「いや、ただの冒険者だよ」
他の冒険者達には神様だって知られてないからな。
「その人はただの冒険者じゃないよ!」
「ん?」
すると、今度はギルドの中に1人の赤髪の少年が入ってきた。誰だ?
見たところ12〜3歳くらいの若い子供のようだが、随分と立派な装備をしている。
「その人は女神様だ!!」
「え……」
突然俺を指差して、女神だと言ってきた。
「ああ! 確かにクロアさんは女神だ!」
「皆の女神様だ!」
周りの冒険者達が頷きながら、その少年の頭を撫でる。
「ちっ、違う! あの人は本当に女神なんだっ!!」
「なぁ坊や。クロアさんは夫がいるんだ。告白しようなんて考えるなよ」
「くっ……」
何やらあの少年、俺の何かを知っているようだな。
「君ちょっと来て!」
俺はその少年の手を掴んで、外の人気の少ない裏路地にやってきた。
「詳しく聞かせてくれるかな?」
「アンタ女神だろ。こっちに転生してくる時にお前と話した。忘れたなんて言わせないからな!」
転生してくる時に……まさか、イザナミの仕事の手伝いの時に対応した転生者の1人? 嘘だろ……こんなところで会うのか。
「そんな……何人も対応してたんだから、覚えるなんてできないだろ。それに転生したら姿形だって変わるんだ」
「ふん……使えない女神だな。お前に会ったら文句言ってやろうと思ってたのによ!」
胸の前で腕を組みながら、偉そうに言ってきた。
転生の手伝いをしてやって俺になんて生意気な態度を……。
「文句ってなんだよ」
「なんで俺の周りには可愛い幼馴染みがいないんだ! 普通いるだろ!」
知らねぇよ……場所を用意したのはイザナミなんだから、そっちに文句を言ってほしい。
「悪いが、私は転生の手続きを手伝ってあげただけであって、基本的な内容は別の神様が決めてるんだ」
「じゃあその神様に伝えてくれ」
「分かった分かった」
なんでこいつはずっと偉そうなんだ。親切にしてやってるのに、まるで超エリートのヤサイ人みたいだな。ヤサイ人な。
「それで、なんでお前は俺の前に姿を見せた」
「いやそんな事言われても……私は神様って事を隠して、普通に冒険者をしていただけだ。別に目的があつてとかそんなのは無い」
「そ、そうか」
しかし、たまたま転生者にあったのは何かの縁だ。何か役に立つだろうし、クラウディアやベリアストロにも伝えた方が良い。
「君、名前は?」
「俺はシェイク。能力は選んだ通り魔剣召喚だ」
あぁ〜……確か居たな。転生者の中に魔剣召喚を選んだ偉そうな男。よく覚えてないけどな。
「何しにここに?」
「そりゃ決まってる。この国に転移者が集まっていると噂を聞いてきたんだ。ついでにここの学園にも通おうと思ってな」
なるほど、もう他の国に噂は広まっているのか。ってことは、もうそろそろ転生者達がどんどんこの国に集まってくるって事だよな。
「分かった。とりあえず私に着いてきて」
「どこに行くんだ?」
「転移者を訓練してる場所に連れていく」
「そうか、分かった」
言うことは聞いてくれるんだな。少し見直した。
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