女嫌いの俺が女に転生した件。
268話 ただいまマイホーム
「皆荷物は持ったか?」
忘れ物は無いようだ。
リグによる確認が終わり、俺達は旅館の玄関にやってきた。
すると、女将さんを含めた方達が整列して待機している。まさかずっと待ってたのか。
「あ、2日間ありがとうございました。最高の旅行になりました」
リグが女将さんにお礼を言うと、全員が深く頭を下げた。
「もしも、またこちらにいらっしゃる事があったらいつでも来てください。サービスしますよ」
「あっはは、ありがとうございます」
セルフィリアの友人ってだけでここまで優遇されるとはな。それだけここの国民はセルフィリアに対する気持ちが強いのだろう。
「皆もお礼を行って帰るぞ」
「「ありがとうございました」ました〜!」
そうして俺達は旅館を出た。
玄関から外に出るだけで気温が全く違う為、早く家に帰りたくなる。
「転移ですぐ帰るよね?」
「ああ、クロア転移頼む」
皆が俺の周りに集まって、少しだけ暖かくなる。
「それじゃあ行くよ」
◆◇◆◇◆
「帰ってきたぁ〜っ!!」
「懐かしい匂い!」
「温かいですね!」
家に帰ってきた俺達は、さっそくリビングのソファに座って懐かしい空気を吸い込む。
アリスはすぐに地下の部屋に帰っていった。やはり慣れたベッドで寝たいのだろう。
リグとイザナギは、全員が投げ捨てた荷物を部屋の隅に置いて、椅子に座った。
「いやぁ〜疲れたけど楽しかった」
「そうだね〜。明日から仕事かぁ〜」
うっ……仕事……また魔物と戦う日々が来るのか。
「でも良い息抜きになりましたよね」
「だな〜……仕事。明日私1人で仕事しようかな」
1人でギルドの依頼を受けた方がマイペースにできるし、他の皆は休む事だってできる。
「あら? 皆もう帰ってきてたのね。おかえり」
「あっお母さん! お土産買ってきたよ!」
ミリスがやってきたので、すぐにリュックの中から煎餅の入った袋を二つ取り出す。
「買ってきてくれたの? うふふ、嬉しいわ」
「さっき投げたから割れてないといいけど……」
中身を揉んで確認しながら、ミリスに渡す。
「お父さんと一緒に食べるわね」
「うん」
ふとリグ達を見ると、微笑ましそうな目でこちらを見つめていた。
「なっ、なんだよ」
「クロアってお母さん大好きだよね〜」
「良い親子ですね」
そう言われると照れるな……。そりゃ母だから好きだけど……本人を目の前にして言われると恥ずかしい。
「もっと甘えてきてもいいのよ?」
「べっ、別にいいよ」
照れくさくなって、俺はすぐにリグの横に座った。
「今のクロアはリグラフ君に甘えたいんだったわね。ふふ、それじゃあ私はお父さんに渡してくるわ」
そういって煎餅を嬉しそうに部屋に持って帰った。喜んでくれたようだ。
前世じゃ親孝行なんてする前に死んじゃったからな……もう親の顔すら忘れたけど、今はクロアとしてできる事をするまでだ。
「はぁ〜……安心して眠くなってきちゃった」
「ですね。ポカポカした暖かさで眠くなります」
俺も少し眠いな。でもまだ寝るには早いしな。
「んじゃ、俺は久しぶりに妹のとこに帰るよ」
「ああうん、きっと寂しがってると思うぞ」
イザナギは立ち上がって、あっという間に消えていった。
そういえば、イザナギって能力は封じられてるのに神界とこっちの行き来はできるんだな。
「ふあぁ〜〜っ……眠いな」
俺が欠伸をすると、周りの皆も釣られて欠伸をし始めた。かなり歩いたし疲れも溜まってるんだろう。
「早いけど皆で寝よっか」
「寝よう!」
「起きた頃には夕食が待ってます」
「おい、寝る前に自分の荷物は自分で部屋に持っていくんだぞ」
俺達は荷物を部屋に持っていって、すぐに布団で眠りについた。
◆◇◆◇◆
皆が起きて夕食を食べている時も眠かったのだが、寝室に戻ると眠気が無くなった。そこで、皆が眠くなるまで次にしたい事、行きたい場所なんかを話して時間を潰していた。
次の日の朝から、俺はダンジョンで精霊のおじさんに貰った剣と少しのお金が入った軽いリュックを背負って、ギルドへ向かった。
1人で仕事をするのは初めてだ。
「あっ! クロアさん! 最近見ないのでどうしたのか心配してたんですよ」
獣人族の受付の人に懐かしまれ、以前一緒にダンジョンに潜った人とも会って、久しぶりに話をした。
仕事っていうのはこういう交流も大事だな。
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