女嫌いの俺が女に転生した件。
264話 朝から騒がしいな
「ん……もう朝……?」
窓から差し込む光で目を開ける。
「んん〜……」
目を擦りながらゆっくり起き上がると、違和感に気づいた。
「っ……」
謎の違和感を解明する為に、違和感の感じる喉と胸、そして下半身に手をやる。
あったはずのおっぱいがない。いや……胸は元々無かったような物だからそこまで重要……じゃない事はない。
しかし、俺の喉と下半身にあるのだ。女では有り得ない物が。
すぐに髪に触れる。
「短い……嘘だろっ!?」
声すらもそうだった。今の俺は、前世の姿へと戻っていたのだ。
やばいやばいやばいやばい……なんで前世の姿に……? 俺はどうしたらいい!?
頭を抱えて、どうにか思考を回転させる。が、上手く頭で考えるという事ができない。
「んぁ……あれ……安曇?」
横で寝ているリグが、前世での俺の名を呼んだ。
不味い。この姿を見られたら……リグが 男とは付き合えない とか言って……どこか遠くに行ってしまうかもしれない!
すぐに布団を頭から被って身を隠す。
「おぉ〜い、安曇」
リグが布団を剥いできた。
くそっ……リグに嫌われたくないっっ!!
──チュッ
「えっ…………」
唇にリグの長い口先が触れて、思わず目を見開いた。
「どんな姿でも、俺はお前が大好きだ」
「ちょ、ちょっとリグっ! お前っ……」
リグの手が、俺の下半身に付いている物に触れてきた。
「や、やめっ……!」
「愛してるぞ」
「やめてくれぇぇぇぇ──」
◆◇◆◇◆
「──ぇぇぇぇぇ……ゆ、夢か……」
汗を大量にかきながら、起き上がって叫んでいた。
すぐに身体を確認すると、しっかり胸もある。下半身もしっかり戻っている。
周りを見ると、まだぐっすりと眠っているようだ。リグもどこか安心したように眠っている。
「はぁ……酷い夢だ……」
どうして幸せな旅行の時にこんな夢を見てしまうのだろうか。
部屋を見渡すと、こっちに来る時に着ていた服が部屋の隅に畳まれて置いてあった。
「汗かいたし、着替えるか」
◆◇◆◇◆
浴衣から私服に着替えた。といっても、防寒服はまだ着ない。薄着のまま、再び布団の中に潜る。
「昨日の記憶……あるな」
一先ず、昨日お酒で酔った勢いで変な事をしていないか記憶を確かめて安心する。
その後、リグの寝顔を見つめた。
「……ずっと好きでいてくれよ」
リグは寝ているから聞いていないと分かっているからこそ、普段言わないような事が言えるのだ。
そうして再び眠りについた。
◆◇◆◇◆
「おぉ〜いクロア、起きろ〜」
──ペチペチ
リグに頬をペチペチ叩かれながら、目を覚ました。
私服のサタナが、何か騒いでいる。
「あっクロア! 聞いてよ! こいつ僕が着ていた浴衣にこんなの付けやがった!」
サタナの浴衣の股の部分に、白い液体が付着していた。
「ごめん……で、でもそれは不可抗力で──」
「不可抗力〜? 僕昨日の夜の事覚えてないんだけど、酔った女の子に男が何するか知ってるよ〜?」
まあ、でもイザナギも男だしな。故意じゃなく出してしまう事もある。昨日の2人は良い雰囲気だったしな。
「妊娠したら良かったのにな」
「僕はこんな弱っちい男と付き合うなんてごめんだね!」
俺が冗談でそういうと、クロアは全力で拒否してきた。この2人がくっつくのは流石に難しいか。
「まあ浴衣は……ここの従業員がなんとかしてくれるよ」
「はぁ、クロアは大丈夫だった?」
俺は起きた時に浴衣には何もなかったし、大丈夫だな。
「何も無かったけど、嫌〜な夢なら見たな」
「えっ? どんな夢〜? 僕気になる」
「い〜や」
皆の前で話せる様な内容じゃないしな。
俺達はしばらくゆっくりしながら、エリフォラとアリスが目を覚ますのを待った。
この後の予定は街にお買い物だ。お土産や美味しそうなスイーツ、お菓子なんかも買いたいな。
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