女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

256話 クラウディアの恋愛



 魔王セルフィリアとバルディリスが帰って、数分の時が流れた。
 クラウディアは料理をボーッと見つめ、エリフォラは美味しそうに食べ進めている。


「ク、クラウディア。別に全部食べる必要は無いからな? 残した分は私達が食べるから」
「そうなのか。じゃあ俺はもうギブだ」


 頑張ってくれてたんだな。なんか……申し訳ないな。


 クラウディアはソファに座って、膨れたお腹を両手で抑える。


「……ほんと急なんだけどさ、クラウディアは子供とか作らないのか?」


 なんとなくクラウディアの姿が、妊婦さんのように見えたのでそんな質問をしてみた。


「子供……そうだな。もしも俺が惚れるような男が現れたら……考えないでもない」


 おお、ということは作る気はあるのか。ただ相手を決めるのが難しいと……クラウディアが惚れる男ってどんな奴だ?


「どんな人が好きなんだ?」
「それは俺でも分からない。まず男と恋愛なんていうのが思いつかないからな」


 まだクラウディア女になってから恋をした事がなく、自信もないという事か。


「じゃあ一度だけさ、適当な男でいいから付き合ってみたらどうだ?」
「……それはどういう事だ?」


 クラウディアは少し目を細めて、こちらを向いた。


「一度男と付き合うっていう事を体験すれば、どんな男の人が好きか分かるんじゃないかなって思ってな」


 まあ知らない奴といきなり付き合うっていうのも勇気いるけどな。軽くデートみたいな感じにすれば、良い体験になるのではないだろうか。


「あっ! 俺彼氏役にばっちり!!」
「イザナギは黙ってろ」


 というかイザナギ居たのか。
 イザナギはサタナがいるだろうし、俺はそっちを応援したい。


「他に手軽な男はいないのか?」
「ん〜リグは私の夫だしな。他に男ってそんなに……」


 今思えば俺の周りって女だらけだな。


「転移者の中に良い感じの男が居ればいいが」
「いや、なるべく知り合いがいいと思うんだけど……まあ今から無理に考えなくてもいいよ」


 別に付き合わないなら付き合わないで、1人でいるのも良いしな。


「そうだな。じゃあ俺はもう帰る」
「気をつけて」
「暇があったら会いに来いよ。皆待ってる」


 おお、待ってくれてるのなら今度行こう。


「それじゃあ、また」
「また」


 クラウディアは転移で帰っていった。


◆◇◆◇◆


 俺とサタナとイザナギは、魔王達が残していった料理の残りを食べている。
 エリフォラは未だに食べ続けていて、そのペースは落ちることが無い。


「そんなに食べて大丈夫なのか?」
「だいひょうふってはひがへふか?」
「飲み込んでからでいいよ」


 本当にエリフォラはよく食べるな。それでよく太らないものだ。


「大丈夫って何がですか?」
「太ったりしないのか?」
「大丈夫です! 私は太りにくい体質なので!」


 俺もそんな体質が欲しいな。


「あ、それ一つ頂戴」
「ああいいぞ」


 目の間で、サタナとイザナギがイチャイチャしている。
 ここは何も言わず、暖かい目で見守っているのが良いだろう。


 数日後にはセルフィリアさんの国に旅行に行くから、その日の為に準備もしないといけない。
 リグは二階で一人何かしてるみたいだし、そろそろ二階で準備でも始めるか。


「ご馳走様」
「えっ? もう食べないんですか?」
「普通これだけ食べたらお腹いっぱいだよ」


 エリフォラの胃袋と俺と胃袋は違うんだ。


◆◇◆◇◆


 寝室に入ると、リグはガサゴソとベッドの上で何かをしていた。


「リグ〜?」
「っ、な、なんだ?」


 布団からリグが顔を出した。


「旅行の準備早めにした方が良いかな?」
「ん、ああ〜……そうだな。それに畑作業もあるみたいだから、着替えとお土産を変えるリュックは必要だな」


 俺のリュック小さいからなぁ……お土産くらいなら入るだろうけど、大きな荷物は手で持たないとな。


 俺はクローゼットから着替えをいくつか取って、自分のリュックの中に雑に詰め込む。
 それから、あっちは寒いらしいし暖かい何かを買わないとな。


「マフラーとかコート買いに行こうか」
「ああ、すぐ行くから外で待っててくれ」
「はいよ」


 リグも大変だな。

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