女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

253話 酒には弱い



 真夜中。俺とサタナはベロベロに酔っ払ったまま家に帰ってきた。


「ただ〜……いま」
「あえ? なんで誰もおかえりって言わないの……?」
「そりゃあれだよ……寝てる」


 フラフラする身体をお互いに支えながら、靴を脱いでリビングのソファに2人で倒れ込む。


「いんやぁ〜! 凄かったぁ〜」
「あはは〜……なんかアレだね、あは」
「分かんね〜けどアレだな、んははは」


 よく分からないのに笑いが起こる。
 二人はそのまま、ソファで一緒に眠った。勿論、いつ家に帰ってきたかなんて、翌日の二人は覚えていない。


◆◇◆◇◆


「お〜い、2人ともいつまで寝てるんだ? 酒臭いぞ」
「んん…………リグ……?」


 ぼやける視界には、リグのシルエットが見える。しかし、今は胃が気持ち悪い。
 あ、マジでやばい。


「……吐く」
「待て! 吐くならこっちだ」


 リグに紙袋の入った桶を渡されたので、そこに勢いよく吐いた。
 横では、サタナも同じくゲロっている。貰いゲロしそうだ。


「うぅ〜……」
「昨日はどんだけ飲んでたんだ?」


 どれだけ……4杯目から記憶が曖昧になってるな。


「分かんね……サタナ大丈夫?」
「大丈夫じゃない……」


 ラスボスに不意打ちされた時より辛そうな声で、また桶の中に吐いていた。


 最悪の二日酔いだ。


◆◇◆◇◆


 もう胃酸しか吐く物が無くなったので、キッチンで水を飲んでしばらくボーッと立っていた。


「クロア、本当に大丈夫?」
「ああ。それでエリフォラとアリスは?」
「寝てるよ。両親もな」


 起きてるのはサタナとリグだけか。


 飲み込んだ水を吐いてから、俺はリグの向かいの席に座る。


「昨日は凄かったよ」
「おお、聞かせてくれ」


 気持ち悪さを耐えながら、ダンジョンの難しさ。ボスとラスボスの話をした。
 ついでに精霊のおじさんに剣を貰ったことを伝えて、剣をリグに見せた。


「おぉ……すげぇ剣だな」
「分かるのか?」
「いや、なんとなくだけどよ。精霊に貰ったんなら、それだけ凄いんだろうなってのは分かる」


 今度は皆でダンジョンに行ってみるか。その時にこの剣を使おう。


「今度は皆で行こうか、ダンジョン」
「すっかりハマったみたいだな」


 こんなに楽しいのなら簡単に稼げるしな。それに、ダンジョン攻略の道で有名になるのも悪くない。


「クロア……僕上で寝るね」
「ああ、私もすぐ行くよ」


 俺も早く横になりたいな。


「いででででで、ごめん! ごめんってば!」


 何やら二階から懐かしい声が聞こえてきた。
 声の主は、サタナに引っ張られながら階段を降りてきている。


「いった……あ、元気にしてたか? クロア」


 イザナギだ。イザナギがサタナに耳を引っ張られながら下にやってきた。


「コイツがベッドで寝てたから、引っ張り出してきた。今度こそ寝るよ」
「ああ、サタナおやすみ」


 それで、イザナギは何の用で来たのだろうか。


「あ、その目は……何の用? って思ってる目だな。悪いが、俺は特に用があって来たわけじゃない」
「ああそう……じゃあ好きなだけゆっくりしてけ。でも私達のベッドには寝るな」


 するとイザナギは悲しそうな顔をした。


「なぁリグリフ。お前……ほんと羨ましい」
「はぁ?」
「女だらけのベッドで寝れるなんてよ……」


 あぁ確かに。今思えばリグってハーレム築いてるよな。


「心の中で ぐへへへ って思ってるんじゃないか?」
「クロアまで……まあ確かに嬉しいけど、そんな ぐへへ とは思ってない」


 やっぱりリグも男だな。


「それじゃ、私も寝るから。イザナギをよろしく」


 こんなに気持ち悪い時にイザナギと話すと、暑苦しくて悪化しそうになる。


 俺は二階の寝室で、久しぶりのふわふわベッドであっという間に眠りについた。

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