女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

251話 ダンジョン攻略!



 ラスボスの猛攻を避けつつ、後少しで魔力全てをダンジョン内に貯めることができる。もう少しで、ラスボスを仕留める威力の魔法を使うことができる。


 それまで、なんとか転移者2人には気づかせないようにしなければならない。


「もっと撃ってこい!!」


 注意を引く為に挑発を続けていると、ラスボスは更に左手にも魔力を集めだした。
 まだ撃てるのかよ……。


 左手に集まって水によって、更に二倍の速度で放たれる水。


──バシュッ
「あ゛ぁ゛っ!!」


 左の足首を撃たれて、俺の移動する速度が落ちる。
 俺の動きを先読みして撃ってきているようだ。


 ……まずい、足が上手く動かない。このままだと蜂の巣になる……。


「クロアさん! 俺達が時間を稼ぎます!」
「何をするのか分からないが、任せろ」


 転移者2人が俺の前に立ち、大きな炎の壁を生み出した。


「っ……無理するなよ」


 俺は炎の壁の後ろで、ダンジョン内にいままでの倍の速度で魔力を送った。


 ラスボスはこれ以上魔法を使っても意味が無いと分かったのか、今度はこちらに走ってきていた。


「右にアタック!」


 1人の転移者が、そう声を上げながらラスボスの胴体を左側から蹴り飛ばした。


「カウンター!」


 右によろめいたラスボスを、もう1人の転移者が左側に更に蹴り返す。
 これは何だ……? 戦ってるようには思えない。まるでボールを使って遊んでいるような……いや、これはまさか転移者達の遊びなのか。
 それをラスボス相手に……それでも時間は対して稼げないだろう。


 急いで残りの魔力を……よし! 準備はできた!


「あがぁっ!!」
「かっっっ…………」


 ついに、転移者2人がやられてしまった。1人は薙ぎ払いに巻き込まれ、もう1人は正面から蹴りを受けていた。


「くそったれがぁぁぁあああ!!!!」


 その瞬間、俺の全ての魔力を注いだ大きな落雷が、天井からラスボス目掛けて、鼓膜を破りそうな程の爆発音と共に落ちた。


 眩しい光と、残る耳鳴りで状況が理解できない。
 ラスボスは倒したのか……? それとも生きているのか。もしも生きているのなら、もう俺に勝ち筋はない。


 少しずつ、視界が戻ってくる。
 目の前にはラスボスが真っ黒になり、ゆっくりと倒れていくのが見えた。


「終わっ…………た……」


 安心して、その場に座り込む。


 結局、誰も守りきることはできなかったが、なんとかラスボスを倒すことができた。


「驚いた。ほれ、立ちなされ」
「精霊のおじさん……立たせてくれ……」


 全身に力が入らない。


「仕方ないな。ほれ」


 おじさんはラスボスの攻撃を受けた俺の左足を回復させた後、手を差し伸べてくれた。
 その手を掴み、なんとか立ち上がる。


「おぉっと……」


 ついバランスを崩して、おじさんに抱きつく形になってしまった。


「肩を貸そう。あの扉が見えるな?」


 おじさんに肩を借りながら、大きな扉の方を見る。


「見えるよ」
「あそこにダンジョン攻略の宝が入っておる。それと、宝とは別にワシからもプレゼントしようかの」


 プレゼント? 正直宝だけで十分なのだが。というかどうやって持って帰るんだ。


「とりあえず行くぞ。そこで話をしよう」


 おじさんと一緒に宝のある部屋に向かった。


◆◇◆◇◆


「うおぉぉ……」


 扉の奥には、大量の金の延べ棒や金貨。綺麗なアクセサリーや鉱石等。大量の宝があった。
 気づけば自分で歩きながら、宝の山の中にあるアクセサリーなんかを手に取っては眺めたりしている。


「その宝はまとめて外に転移するからの。今の内に欲しい物はポケットの中にでも入れるといい」


 とりあえず金の延べ棒を5個……重っ! これポケットに入れたら服が破けるな。
 なんとか片手で3個持って、ポケットの中には金貨を入れれるだけ詰め込んだ。


「ふへへ……」


 自然と笑いが零れる。


「さて、こんなに楽しませてくれたお礼じゃ。お主、剣が使い物にならないからって使わなかったじゃろ。ほれ」


 おじさんは、俺に一本の剣を渡してきた。
 黒と赤の鞘に、綺麗な刀身を持つ剣。見た目はかなりかっこよく、良い感じに重みもある。


「切れ味も抜群。それにどんなに乱暴に使っても壊れることはない」
「おぉ……ありがとう……」


 剣を脇に挟んで、礼を言う。


「全く……欲に正直だな」
「そうか?」


 まあ両手が塞がるくらい持ってるからな。


「それじゃ、まとめて野営地に転移するからの」
「ああ、頼む」


 初めてのダンジョンは、最高の思い出になっただろう。俺は両手の宝を大事に抱えながら笑っていた。

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