女嫌いの俺が女に転生した件。
246話 ダンジョン攻略開始
「もうそろそろダンジョン攻略を始めようと思います!」
日本人の男子高校生1人が、声を上げた。異世界人達は、皆魔力量が多いので頼りになるな。
「サタナさんが来てくれたので、このダンジョンも簡単に攻略されると思いますが、気を抜かずに全員で頑張りましょう!」
「「おぉっ!!」」
周りの冒険者達が大きな掛け声を上げる。そんな様子を、俺とサタナは少し離れた日陰から見ていた。暑いからな。
「それでは行きましょう!」
学生達、冒険者達がダンジョンの入り口に向かい始めたので、俺とサタナも行くことにした。
「攻略は得意だ」
「本当〜? 気をつけてね。ダンジョンの魔物は野生の魔物より凶暴だから」
元ゲーマーの俺を舐めてもらっちゃ困る。初見クリアも夢じゃないぞ。
皆で地下のダンジョンに降りる階段を下っていくと、明るい場所にやってきた。壁や床は全てレンガてできていて、かなり魔素の濃度が高い。
入ってすぐ、二つの分かれ道が現れた。
「どうする?」
「どちらか罠っていう可能性もある」
皆がいきなり集まって相談を始めたので、俺とサタナも精霊のおじさんと集まる。
「おじさん、どっち行ったらいい?」
「そんなもん教える訳ない。好きにせい」
「僕は右でも左でも、どっちでも良いと思うよ。入ってすぐ死ぬような詰まらない事はしないと思うし」
ふむふむ。じゃあ単純にどちらが良いか選ぶことになるな。
「半分に別れて、右と左両方を進んでいこうよ」
サタナが皆に提案した。
「おお!」
「大丈夫なのか?」
「やっぱ頼りになるなぁ」
その発想が思いつかなかった人。危険性を心配する人。リーダーシップを憧れを抱く人など、様々な反応を見せる。
「じゃあ、今ここにいる人で戦闘に自信がある人は手を挙げて。推薦してもいいよ」
「はいっ!」
「俺も自信ある!」
「はい」
「お前はない」
大体半分くらいの、本当に力のある人達が手を挙げた。
「じゃあその人達は右に進んで。残った人達は私達と一緒に行動」
おぉ、確かにそれが1番良いな。
今手を挙げていた冒険者や転移者達が、分かりやすく落ち込んだのが分かった。そういう考えもサタナは見通していたんだろうな。
綺麗に二つに別れて、俺達は左側を探索する事にした。
「サタナさん! 頑張ってください!」
「スタイル良い〜……」
「俺こんな美人さん生まれて初めてみた……」
後ろを振り返ると、皆がキラキラした目でサタナを見ていた。
精霊のおじさんは、更に後ろ側から皆を観察するように見ているし、先頭を歩く俺とサタナは魔物と罠を警戒しながら進んでいる。
真ん中にいる冒険者達は、皆サタナに釘付けだった。
「大丈夫なのか……?」
「僕達が守ればいいんだよ」
何度か曲がり角を曲がって順調に進んでいると、サタナが突然足を止めた。
「ここを左に曲がったところに、ゴブリン達がかなり居るみたいだから気をつけて」
ゴブリン? ゴブリン程度なら簡単に倒せるんじゃないか?
「よっしゃ! 行くぞ!」
「経験値稼ごう!!」
皆がサタナの後ろから飛び出し、ゴブリンのいる方へ走っていった。
「あ、皆行っちゃったけど?」
「まあこういう事もあるよ、助けに行こ」
助けに?
サタナと一緒に曲がり角を曲がると、鎧や兜で武装したゴブリン達が冒険者や転移者達を追い込んでいた。
なんとか数体は倒せているみたいだが、かなりの数生き残っている。
「弱い魔物でも装備を強化すれば強くなる……って事か。負傷者が出る前に助けた方がいいよね?」
「うん。行こう」
サタナがゴブリン達の群れに飛び込んで行ったので、俺も剣を抜いて手伝う事にした。
大きな鉄の棍棒を構えているゴブリンを、兜ごと直接叩ききる。兜は大きく凹んで、次の瞬間には頭を飛んでいった。
この剣の切れ味は、そこまで良くはないものの無理矢理扱っても折れることは無い。かなり良いな。
俺とサタナで、次々とゴブリン達を無力化していく。傷を負った冒険者達は後で治癒するとして、そんな人達を巻き込まないように、1体1体確実に殺していった。
そして完全にゴブリンの群れが無力化されたのを確認して、俺は剣についた血を払い、鞘に収めた。
「今治癒するから、リラックスして」
怪我をしている冒険者に触れて、自然治癒能力を高めてあげる。
治癒魔法というのは、身体の傷の治りを早める分本人のエネルギーもかなり消費する。同じ人に何度も使う、というのは難しい。
全員を完全に治癒した後、俺はサタナの元に戻る。
「今みたいに勝手な行動をすると、下手したら君達全滅するからね。次からは気をつけて進むこと。倒せそうにない魔物が現れたら無理しないで頼ること。良いかな?」
珍しくサタナが真面目になっている。ダンジョン攻略の時はいつもこんな感じなのだろうか。
皆はサタナの話をしっかり聞いている。
「じゃあ行こうか」
「あ、待って。ここ罠があるっぽい」
少し先に進んだところに、細い魔力を纏った糸が見えた。
誰かがその糸に触れた瞬間、罠を発動するのだろう。俺の 【女神の魔眼】 じゃないと気づかなかっただろうな。
「どうする? 後ろの人達に、その罠に触れないように進めって言っても無理そうだし」
「その場合、離れた場所から先に罠を起動するといいんだよ」
サタナが手の平から氷の粒を出して、罠の糸に当てた。
すると床が大きく開いて、下に剣山が現れた。この罠は流石に死にそうだな。
俺も少し気を引き締めることにした。
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