女嫌いの俺が女に転生した件。
228話 下品な男
目を覚ました俺は、まだ少し残る眠気を振り払うよう身体を起こし、深呼吸をする。
あれ……呼吸ってこんなに気持ちよかったっけ?
完全に目を覚ましていないからだろうか。息を吸う度に、清々しい気持ちになる。
「"おはよう"」
しばらく酸素を吸い込んでいると、Rの声が聞こえた。
「ん゛ぁぁ……おはよう」
眠くておっさんの様な声が出てしまった。
「"結局許可は貰えなかったよ"」
「あぁ……そうなのか。うん……」
「"……寝た方が良いんじゃない?"」
そうしたいけど……変な体勢で寝たっぽい。
「首寝違えてさ……すっごい痛いの」
目を覚ましてから数分後に気づいた。ちょっと傾ける事すらできない。
「"じゃあ研究員手伝わせてマッサージしてもらう?"」
「あぁ〜それで良くなるならお願い」
すると、部屋に1人の研究員が入ってきた。わざわざ悪いなぁ、寝違えた首治すためにこんな事してるんじゃないって思ってるよな。
「適当に座ってくれる?」
「あぁはいはい。いたたた……」
自然に女の子座りして待っていると、研究員の人は背後に回った。
「どっちが痛い?」
「えぇっと……右首」
少し首を傾けて、どちらが痛いか確認した後に研究員に伝える。
すると右腕を掴まれて、ゆっくり後ろに上げられていく。
「……いっ……」
「この状態を少し保って」
ギリギリ痛くない角度まで腕があげられ、しばらく状態を保ってからゆっくり腕を下ろす。
「はい。これ後2回から3回やって」
なんか1回しただけでも少し良くなった気がする。凄いな。
◆◇◆◇◆
「おぉ〜……結構楽になった」
「他にマッサージしてほしいところあったらするよ」
この人マッサージ美味そうだし、肩と腰のマッサージもお願いしようかな。
「じゃあ腰お願いします」
「うつ伏せになって」
その場にうつ伏せになり、マッサージが始まった。
「んおぉぉぉぉ……凄い……」
本物のマッサージは違うなぁ。ゴリゴリと解されて血行が良くなっているのが分かる。
自分がどのにいるのかなんて忘れて、気持ち良さでぐっすり眠れそうだ。
指圧で押したり、軽く揉んだりと繰り返される手が、腰の色んな気持ち良い部分を捉えていく。
「あぁ〜そこそこ……っ!」
今、ちょっとだけお尻を触られたような気がして振り返る。
「小さなお尻をしていたのでつい」
「……そこは正直なんだな」
「マッサージしてあげてる対価として、ね?」
ね? じゃないよ。でもまぁ、何の見返りもなくマッサージしてるのは悪いよな……いやいや、俺を監禁している時点で五分五分の関係じゃないか。危ない危ない。
「もうこのまま肩までお願いしようかな」
「……」
「ひゃっ!?」
突然脇を揉まれて、声を上げる。
「面白いリアクションするよね」
「普通にマッサージしてもらえます?」
「俺も男だからさ、少しはしてみたくなる訳よ」
知らないよ。
「はぁ……じゃあもうマッサージはいいよ」
仕方なく身体を起こして、マッサージから逃げるように距離を取る。
「そんなに警戒しなくていいのに」
「"こらこら、する事終ったら帰ってくるんだよ"」
「はいはい」
帰る素振りを見せた瞬間、一瞬で俺の背後に回ってお尻をガチッと掴まれた。それも布の中に手を入れて。
「やっ、やめろっ! いい加減にしてくれ……」
もういいから、と目で訴えると研究員はうんうんと頷いて転移で帰っていった。
「はぁ……酷いセクハラを受けた」
「"でも随分楽になったでしょ? 女好きな面はあるけど、マッサージは普通に上手いんだ"」
ああいう男は苦手だな。下品すぎて気持ち悪い。
「もう二度とあうことがないのを祈る……」
「"あはは"」
やっぱりここではRが一番優しいな。
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