女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

223話 こんなの、聞いてない



「お前達2人には、反逆罪とその協力者としての罪がある。何か言い訳でもしてみるがいい」


 言い訳……。


「わ、私は反逆罪なんて物がなんて知らなかった! ただ友人を救う為に頑張っていただけだ!」


 咄嗟にそういうと、王は「はっはっはっ」と大きな笑い声を上げた。


「だろうな。だが、どんな罪であろうと "知らなかった" で許される程甘くはない」
「わ、分かってます……」


 べナードを見ると、少しだけ冷たい目で見られていた。


「しかし、クロア。お前は面白い魂をしておるな。まるで運命に導かれているかのような人生を送っておる」


 運命に導かれている……か。よく分からないや。


「ふむ、後で2人だけで話がしたい。良いか?」
「えっと……はい。よろ……はい」


 期限を取るために 喜んで と言おうとしたが、それだと変だと思いすぐに言うのをやめた。


「さて、べナード」
「はい」
「死神にとってタブーである、殺す相手への感情移入をした罪は大きい。何をして罪を償う」


 罪を償う……やはり、殺すという選択肢は出てこない。本当に優しいのだろう。


「なんでも……します。死ぬ以外ならなんでも」
「ほう、なんでもか。ではクロアと話した後に決めるとしよう」


 すると、王の目が俺の方を向いた。


「クロア。そこの部屋についてこい。話だ」
「は、はい」


 王が指を指した場所の扉に歩いていくと、王も扉の方に向かいだした。2人きりかぁ〜……嫌だなぁ……。


「ふぅ〜〜……」
「ため息が出るほど嫌か?」
「い、いえっ! 緊張をほぐそうとしているだけです」


 王を目の前にして改めて大きさに驚く。身長が大体2m以上はあるだろう。


「さあ、入れ」
「あっ、申し訳ないです」


 王が扉を開けてくれて、俺が先に部屋の中に入った。
 ごく普通の応客室のようになっていて、横長のテーブルに向かい合うように置かれたソファがある。
 部屋には誰もいない。


「さぁ、座るといい。何緊張する事は無い。食べたりはしない」
「あはは……」


 あれ、笑うタイミング合ってるだろうか。緊張してよく分からない。
 ソファに座ると、向かいに王も座った。


「さて、まずいくつか質問がある」
「はい……」
「お前はなぜこの世界にいる」


 きゅ、急に難しい質問がやってきた。どう答えたら良いのだろうか。


「えっと……生まれたから……です」
「運命がそう導いたのだ」
「あ、はい。そうです」


 緊張して上手く喋れない。


「前世の記憶も持っているだろう?」
「ど、どうしてそれを……?」
「魂の質が違う。一目見て分かったわ」


 魂の質なんてあるのか。


「お前は考えたことは無いか? 何故自分がここにいるのか。何故この世界に生まれたのか」
「う、運命だから?」
「それはそうだが、考えた事はあるか?」


 確かにある。なぜ俺は転生者だとかじゃなく、ただ普通に記憶を持って産まれただけの存在なのか。なぜイザナギの器としてイザナミに作られたのか。


「あります」
「だろう。つまり、自分でも自分の存在に違和感を持っているという事だ」


 自分の存在に違和感。改めて考えれば、確かに俺は不思議な人生を送ってきた。


「そこでだ。調べさせてくれないか?」
「調べる……? 何をですか?」
「お前の魂の目的。そして目的を与えた人物、他にも色々だ」


 調べて分かるのなら、そりゃ勿論喜んで調べてほしいけど。


「もし断ったら?」
「その場合は死、だ。どちらかを選べ」


 じゃあやはり、調べてもらうしかない。


「分かりました。調べてください」
「よろしい」


 すると、王は両手で パン と音を立てた。
 部屋に1人の使用人が入ってきて、テーブルの上に2錠の薬と水の入った紙コップを置く。


「これを飲め」
「これは何ですか……?」
「知る必要は無い。調べる為だ。飲め」


 少し怖いが、飲むしかないか。


 1錠ずつ、しっかり飲んで水も飲み干した。


「うぅ……薬飲むと喉奥に異物感がして苦手なんですよ……」
「それは嫌だな。もう一杯飲むか?」
「あ、はいお願いします」


 またコップが運ばれてきたので、それを一気に飲み干す。


「ふぅ……」


 何か胃が気持ち悪い。……昔ODオーバードーズしたのを思い出すな。
 もうODなんて絶対にしたくない。大量に溶けた薬が逆流してくる感覚。


 あの時は酷かったな……一時的に耳が悪くなって低音が聴こえなくなった。それに数日間は吐きっぱなしだった。


 あんまり思い出すな。ふぅ……薬を飲んだけど、特に何も起きないな。


「少し時間がかかる」
「そうなんですか」


 王は薬の効果が出るまでゆっくり待機しているようだ。


「どんな効……か……あれ……? 急にまわりが……くる〜って……あえ……なにあおひへるの……?」


 視界がクルクル回り、呂律が回らなくなり。平衡感覚が失われた。


「ソファに横になるといい」
「へ……?」


 一気に思考能力も落ちて、くらくらする世界を眺めていると、だんだん眠気が襲ってきた。


「ふあ……ねむ……」


 そのまま眠気に耐える事ができず、倒れるように意識を失った。


◆◇◆◇◆


「んっ…………」


 どこだ……床が冷たい。
 意識を取り戻して、目を開ける。


「っ!?」


 真っ白な壁、そして一面だけ大きな鏡があった。
 そして自分の身体には、二枚の布で体の前後を隠しただけの恥ずかしい格好になっていた。
 下には何も履いていない。


 二枚の布も小さい。胸がギリギリ隠れるくらい、股ががギリギリ隠れるくらいの大きさだ。少し膝を曲げれば前から見えてしまうほど露出が激しい。
 というか、明らかに横の隙間から見えている。映画バイ〇ハザードを思い出す、ほぼ裸同然の格好で謎の白い部屋にいた。


「なんだこれ……聞いてないぞ!!」


 出口のない部屋で叫ぶが、この声が誰かに届いているのかすら分からない。


「"起きたようだね。初めまして"」
「っ! 誰だ!!」


 男の声がするが、どこから聞こえているか分からない。


「"まあ落ち着いて、といっても魔力を封じている今落ち着けるはずもないか"」
「魔力を……っ!?」


 魔法が使えない。


「"僕が説明するよ。ここは君を調べる為の研究施設の中だ。君は常に監視されている。しばらくの間君にはここで過ごしてもらう。でも、安心してほしい。ちゃんと美味しい食事は3食。トイレは安易式の物を部屋に送るよ"」


 部屋の隅が一瞬光って、ただのビニール袋が現れた。


「何なんだよっ!! 調べるって、これじゃただの監禁じゃねぇか!」
「"そんなに暴れると色んなところが見えちゃう、というか見えてるよ"」
「くっ…………」


 俺はその場に座って、どこから見ているか分からないが胸と股を隠す。


「"僕にできる説明はここまでだ。後であのべナードもここに来て我々の研究を手伝ってもらう"」
「研究……? 調べるだけじゃないのか?」
「"……"」


 くそっ……何が目的なんだ。死ななかったから良かったとはいえ、俺はこれからどうなってしまうんだ……。


「"あ、そうそう。定期的に気分が悪くなると思うけど、その度に薬を送るよ"」


 俺の身体はどうなってしまったのだろうか……不安しかない。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品