女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

221話 寝ない…寝な、寝zzZ



「クロアまだ寝ないの?」
「ん〜じゃあ寝ようか。リグも来るんでしょ?」
「ああ。ここの寝室ってどうなってるか気になるしな」


 普通の寝室だけどな。
 3人で寝室に入って、寝る準備をする。


「おぉ〜……女子の匂い」
「あ、ベッドの大きさ足りないかも」


 俺とアリスでほんの少ししかスペースの開かないベッドだから、リグは横に座るくらいしかできないかもしれない。


「ああ大丈夫だ。帰ってから寝るし、座ってた方が話しやすいしな」


 そういうと部屋の角にある椅子を持ってきた。
 じゃあ遠慮なく横になるか。


「ふぃ〜……」
「おっさんか」


 こうやってツッコミを入れられるのは何日ぶりだろうな。


 俺の右手側であっという間に寝息を立てて寝ているアリスを起こさないよう、小声でリグに話しかける。


「今日は会いに来てくれてありがとう」
「本当はもっと早く会いたかったんだけど、こっちの世界に来る方法が分からないからな。またこっちに来れる機会があったらすぐ行くよ」


 それは嬉しい。またすぐに会えると嬉しいな。


「リグ、手」


 布団から左手を出すと、握ってくれた。頼れる大きな手と、布団と同じくらいの温かさ。こうして繋がっていると安心して眠くなってくる。


「寝ていいんだぞ」
「まだ起きてる……頑張る」


 リグの方を向いてなんとか意識を保つ。


◆◇◆◇◆


 かっ……可愛い……。
 眠そうなボーッとした顔で、じっと見つめてくるっ!


 頑張って眠気を堪えてるんだろうけど、そのままだとゆっくり……あぁ……ゆっくりと瞼が閉じていく……。


「はっ……ね、寝てないよ……?」
「無理するなよ?」
「大丈夫……リグが帰るまで……起きてるから……」


 また段々と瞼が閉じていく。
 完全に目を閉じて寝息を立て始めた。寝ちゃったか。


 俺はクロアの頬にキスをして、帰ろうと立ち上がっ……。


「待って……」


 俺の手を掴む左手が離さなかった。


「ん」


 クロアが両手をこちらに向けてきた。


「……?」
「抱きしめて」
「寝るか甘えるかどっちかにしないか」


 とはいいつつも、甘えてくれるのは嬉しい事だ。俺は笑顔で寝たままのクロアを抱きしめる。


「じゃあ今度こそ……って、もう寝てる」


 今のは最後の力を振り絞った甘えだったのだろう。


「おやすみ」


◆◇◆◇◆


「──ロア。クロア、起きて」
「んっ……んん〜……あれ? リグは……?」
「昨日帰ったじゃん」


 ああそうか……リグと風呂に入ってたんだが、夢だったか。


「おはようアリス……」


 昨日いつ寝たっけ……思い出せないな。
 今日からまた訓練が始まるし、リグが座ったこの椅子。そしてリグが使ったコップを宝物として頑張るか。


◆◇◆◇◆


 その日から、いつものように朝からべナードが来て戦闘訓練をしてくれた。
 晴れの日も、雨の日も。屋外、室内で訓練を行い確実に教えてもらった技術を自分の物にしていく。


 べナードからは、「夫に会ってから随分とやる気が出たみたいだな」 とか言われた。やはりリグの力は偉大だ。


 イザナギは、リグに会ってからいつもより俺への恋愛的アプローチが強くなった気がする。
 家に来て家事を手伝ってくれたり、訓練で疲れた俺をマッサージしてくれたり。本当に偉い神様なのか疑うほどだ。


 イザナギは好きな人には尽くしたいってタイプだろう。このタイプはMが多い。ちょっと酷い事を言ってしまっても、すぐに立ち直って俺の役に立とうとする。
 いまの関係がお互いにとって最も長続きする関係なのかもしれないな。

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