女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

215話 恥ずかしいっ!



 次の日の朝、来るはずだったイザナギが来る気配が無く。ベッド横のテーブルに紙が置いてあった。


──悪い、今日は来れそうにない。ウキウキ気分で行こうとしたらイザナミが怒って、今日は行くなって言われた。悪いけど今日は1人で頑張ってくれ。明日はべナードってのが来るんだろ? あぁ〜……早く会いたい。もしもイザナミから逃げ出せたらすぐにそっちに行く。心配するな。


 どうやらイザナミが荒れてるらしい。ウキウキ気分で行こうとしたのが問題だな。
 昨日俺がイザナミと話したのが問題だろう。あれで警戒が高まって独占欲が動いたか。


「アリス、今日は休めそう」


 昨日頑張った分、今日はゆっくりと1日を過ごしてみるか。


「じゃあ寝よう」
「まずは朝ご飯だよ」


◆◇◆◇◆


 その日、結局イザナギが来たのは夕方頃。もうすぐ外が暗くなる時間になってやっと逃げ出せたようだ。


「いやぁ〜はっはっはっ、イザナミの奴すげぇ悔しがってた」
「何してたんだ?」
「すごろく。それで俺が勝ったら行っていいって話でな、あいつ魔法とか使ってズルするんだよ」


 なんだかんだで仲良いよな。心配しなくてよかった。


「やっと勝ってきたんだけど……もう遅いな」
「そんなことない。今日の夜は一緒に過ごそう」


 この世界に居れる時間が限られているのなら、なるべく一緒に居た方が良いだろうしな。


「とりあえず寝室に」
「お、入っていいのか?」
「ああ。片付いてるし、さっきまでアリスとおままごとしてた」


 子供の遊びだけど、やってると意外と楽しいんだなこれが。小さい子の想像力は凄いというか、予想の斜め上を超える事をしてくる。


 イザナギを寝室に入れると、アリスはいつの間にかベッドに入って眠っていた。


「……寝るの好きだな」
「起きてる。けど疲れた」


 アリスが身体を起こしてこちらを向いた。


「クロアは絶対に渡さない」


 何やらイザナギに敵対心を抱いているようだ。


「絶対に嫁にしてみせる」
「ダメ」
「イザナギ、お前イザナミにもアリスにも好かれてるな」
「私は嫌い」


 イザナミとアリスを合わせたらどうなるのだろうか。お互いに協力して俺とイザナギの関係を全て消し去る事も可能かもしれない。


「でもクロアの大事な友達だから我慢する」
「おっ? クロア、俺のこと友達って思ってくれてたんだ」
「当たり前だろ? 友達だ」


 神様と友達が当たり前って、俺も色々と感覚が麻痺してきたかもしれない。


「クロア、お前の事好きって言ってた」
「えぇっ!? ま、マジ……?」
「い、言い方が悪いって! 友達として好きだってだけだ!」
「そ、そうだよなぁ……いや、それでも嬉しいな」


 アリスを見ると今にも、してやったぜ、と言いそうな顔でこちらを見ていた。


「よし、今日は恋バナだ! クロア、今の夫について語ってくれ」
「私も聞きたい」
「えぇ……嫌だよ恥ずかしい」


 リグの事か……思い浮かべたら会いたくなってきた。


「ク、クロアってそんな反応するんだな。ビックリした」
「そんな反応ってどんな反応だよ……でもまぁ……話すかな」
「まずは夫の紹介と関係について」


 俺はリグとの運命的な出会い、そして好きという気持ちによって起きた事件や大変だった事。子供の事やリグの性癖、他にも色んなことを話した。


◆◇◆◇◆


「──つまり、私とリグは本当に運命の赤い糸で結ばれていて、幸せに生きてるんだよ」
「ロマンチックだな〜」
「大人っぽい」


 自分でもリグについてここまで熱く語るなんて思ってなかった。
 あ、やばい。今になって一気に恥ずかしくなってきた……顔が熱い。


「恥ずかしい〜っ!!」


 布団に潜って顔を隠す。


「いいなぁ……俺もクロアにそれくらい好かれたい」
「私も……」


 俺は2人の言葉も聞かずに、恥ずかしさを堪えていた。


 そう、ここまで好きなのはリグが特別だからだ。恥ずかしがる事はない。俺はリグが大好き……やっぱ恥ずかしい。
 顔が熱くて変な汗まででてきた。


「そんなに恥ずかしいか?」
「あぁったり前だろぉっ↑!?」
「声が凄い事になってる」


 ついつい大声を出してしまった。


「よし、そんなに恥ずかしいなら思い切って叫べばいい。窓の外に向かってこう叫ぶんだ。『私はリグが大好きだ!』 ってな」
「さ、叫ぶ訳ないだろ! ったく……からかうな……」


 少し深呼吸して自分を落ち着かせる。


「も、もう終わり! この話は終わりだ。このままだと私だけ辛い思いをするだけだ」
「クロアの面白い一面を見れて俺達は嬉しいよ。なっ、アリスちゃん」
「うん」


 こ、こいつら……いつの間にか手を組んでやがったのか!

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