女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

207話 お兄ちゃんが来る



「ひゃっほぉ〜〜〜いっ!」


 今、俺の目の前には最高にテンションの高いイザナミがいる。


「聞いて! 聞いて聞いて! 明日お兄ちゃんがこっちに来る!」
「あぁ……そう」
「やったぁ〜〜っっ! 何話そうかなっ!? いやぁぁぁぁっ楽しみっっ!!」
「そりゃ良かった」


 そうだった……どんなに忘れたい現実があっても、こいつのせいで忘れる事ができない。
 イザナギが明日ねぇ……面倒な事にならないならいいんだけど。


「……あれ? クロアちゃん、もうお兄ちゃんに会ってるの?」
「ど、どこからそんな情報が……?」
「本当なんだ……お兄ちゃんは……私より先にクロアちゃんを……」


 イザナミのテンションが一気に落ちて、いつもキラキラ光ってる瞳が真っ暗になった。


「お兄ちゃんは私じゃなくてクロアを取るんだ……そうなんだ……どうして……?」


 あ、イザナミが病んだ。
 ブツブツとほぼ聞き取れない程小さな声で呟いている。


「お、おいイザナミ。やっとお兄ちゃんに会えるんだから、笑顔で会わないとイザナギも悲しむぞ?」
「それもそうだねっ! 明日会ったらぶん殴ってやるんだから!」


 お、おう。真っ暗な目のまま笑顔で笑われると恐怖しか感じないわ。


「それで、お兄ちゃんと何話したの?
「何話したって……まあ、特に内容は無いよ」
「そうなんだ。私については?」
「イザナミについても何も」


 もう俺に夢中だったからな。あの童貞。


 それを聞いたイザナミは、少し声が低くなった。


「そうなんだ。明日はお兄ちゃんと沢山話さなきゃ」


 怖い怖い……もしかして、イザナミってヤンデレ属性だったのか? あまり刺激するのはやめよう……。


「な、なぁ……そろそろ帰っていいか?」
「え? どうして?」


 え……。


「嘘嘘、冗談だよ。じゃあ明日はお兄ちゃんと二人っきりで色んな事話すよ」
「ああ。楽しんで。それじゃ」


 イザナミに手を振ると、そのまま眠気と共に視界が暗転していった。


◆◇◆◇◆


「クロアおはよ」
「……いつも起きるの早いな」


 俺が起きてる間、アリスもずっと起きてるんじゃないかと思う程寝ている姿をほぼ見たことがない。


「今日は休もう?」
「ん〜……そうしたいところだけど、頑張らないとな」
「……駄目だよ。しっかり休まないと体壊しちゃうよ」


 そうだな〜……じゃあ明日休むか。今日は夕方まで地下で筋トレする。


「じゃあ、明日はゆっくり寝ような」
「うん」


 布団から出て、軽く水分を取った後地下室に降りた。
 少し前に電力は貯めておいたし、機械は作動するよな。


 ランニングマシンで動くか確認した後、俺は様々な機具を使った筋トレを始めた。
 こういう本格的な筋トレは初めてで、機具もどうやって扱えば良いのかさっぱりだが、なんとかなりそうだ。


◆◇◆◇◆


 地下に誰かが来ることは無い為、俺は下着姿でランニングマシンで走っていた。
 かなり汗をかくので、スポーツブラと普通のパンツだ。元から持っているのしかないし、今度クラウディアかべナードに動きやすい下着を買ってきてもらおう。


「クロア〜! 来たぞ!」
「っ!」


 階段のある方から声がした。が、ランニングマシンはそれの反対側を向いている為見ることができない。


「誰?」
「もう忘れたか! 俺だ! イザナギだ!」
「っ! うわっ」


 つい動揺して、走るフォームが乱れた為走るのを止めた。


「いたたた……訓練中になんで来るんだよ……」


 汗を拭く用のタオルを体に巻いて、イザナギの元に向かう。


「嫁になれ!」
「まだ言うか……」
「俺はお前が嫁になるまで言うぞ!」


 イザナミに怒られるぞ。


「ってか、イザナミに会ったか?」
「ん? まだだが?」


 これはいけない。イザナミが激怒して、運が悪ければ殺されてしまう。


「今すぐイザナミに会いにいけ!」
「行ったら嫁になってくれるか?」
「それは無理だけど……お願いだ!」


 これ以上イザナミを闇の中に送るのは良くない。早くイザナギとイザナミを会わせないと、ヤンデレが悪化する。


「むぅ……クロアのお願いとなると、会うしかないか……分かった。言ってくる」


 よし、これで筋トレに集中できるぞ!

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