女嫌いの俺が女に転生した件。
195話 魔眼の能力
「おはよう」
「んっ……? アリスおはよう」
珍しくアリスの方から俺を起こしてくれた。
「どうかしたか?」
「別に」
「そ、そうか」
脳も休んだ事だし、俺はもう1度本の内容を頭に入れることにした。
寝ながら眼鏡をかけて、本を読む。
改めて思うのだが、信仰心を一時的に増加させる能力とは何なのだろうか。それがどういう条件で発動するのかさえ分からない。
この本には書かれていないようだし、もう一冊の本読むか。
【信者と信仰心】
この本になら信仰心について詳しく書かれてそうだし、読んでみる価値はある。
俺は本の内容をしっかり頭のなかに入れていった。
◆◇◆◇◆
「分からんなぁ……」
やはり、限定されたスキルの能力については書かれてないみたいだな。【女神の魔眼】だけの特殊な信仰心の上げ方があるのだろう。自分で使って知る必要がある。
「アリス、後で実験に付き合ってくれるか?」
「めんどくさい……」
「頼む! 実験が終わったらしばらくは自由だから」
「……分かった」
よし、頼んだら聞いてくれた。
といっても、どういう風に実験したら良いのか分からないな。今の内に実験方法を考えておこう。
魔眼と聞いて思い浮かぶのはメデューサだな。目が合うと石化してしまうという話。
とりあえずそういうのから調べていくか。アリスと目を合わせて、何か変わったか本人に聞いたりしてな。
まずはそれを実験してから次の実験を考えよう。
◆◇◆◇◆
「それじゃあ、今から目を合わせるから何か変わったら言ってくれ」
「分かった」
じっ、とアリスの目を見つめる。綺麗な茶色の目で、長いまつ毛でより一層可愛い目になっているな。アリスの目は。
「何か変わったか?」
「分かんないけど……少しだけ、クロアの命令ならなんでも聞けるかなって思ってきた」
ほぉ、命令ならなんでも……ってことは、目を合わせる事が信仰心を増加させるキッカケになるのか?
「今私を見てどう思う?」
「えっと……かっこいい。目が」
目がかっこいいか。
とりあえず、目を合わせると信仰心が増加する。と考えて実験を続けよう。
今、アリスは俺に対する信仰心が増えているはずだ。この状態で何ができるか調べないといけない。
目に魔力を込めて、アリスを見ることに集中する。
(かっこいいなぁ〜……私も欲しい)
おっ? 今何か……アリスは喋ってないのにアリスの声が聞こえたぞ。それも直接脳内に。
「ア、アリス。今から1から、10までの間のどれか一つの数字を頭の中で数えててくれ」
「分かった。それでどうするの?」
「それを私が当てて見せよう」
「分かった」
もう1度アリスに集中する。
(本当かな。2、2、2、2、2、2、2、2)
「2……だな?」
「凄い! どうして?」
やはり。この声はアリスの脳内の声で間違いない。
信仰心が高い相手の思考は読み取る事ができるのか。便利だな。
「多分、この魔眼の能力だな」
「いいな」
思考読み取り以外にも能力はあるんだろうけど、今日はこれくらいで大丈夫だな。また今度実験に付き合ってもらうとして、今日は休もう。
「はい終わり。アリスありがとう」
「それじゃあ寝る。クロアも寝る?」
寝ることしか頭にないのだろうか。
「私はしばらく下でのんびりしてるよ」
「分かった」
アリスが再び布団の中に潜ったところで、俺は下のリビングに降りた。
「外の空気でも吸うか……」
俺は少しだけ充実感に包まれていた。ワクワクする実験と、実験によって分かってくる能力。その二つが順調に進んでいるお陰で、気分が良い。
外に出て空を見上げると、うっすらと魔素の流れが見える。
深呼吸をして、美味しい空気を吸い込む。
「よしっ!」
頬を叩いて気合いを入れ直した。
明日は普通の訓練をしよう。
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