女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

194話 本を読む条件



 【スキルの条件】という本の1ページ目。目次らしいのだが、知らない言語で書かれていてさっぱり分からない。
 まさか死神界にも言語があるのか……。


「読めない……」


 アリスなら読めるだろうか。


「ア、アリス……起こしてごめんな。この本読めるか?」
「……無理」
「だよね。うん、ごめん。おやすみ」


 どうしたものか……。
 俺は頭を抱えた。結局この本もべナードがいないと読めないような物なのか。なぜ表紙は日本語なのに中身は知らないのか。


「っ?」


 ふと、この二冊の本が入っていた宝箱の中に、必要なさそうな眼鏡があった事を思い出した。
 まさか……あの眼鏡が特別で、アレをかけて読まないと本が読めないとか……。
 なんて現実逃避も良いところだ。


「……でも、試してみるか」


◆◇◆◇◆


 バカバカしい思いつきから、俺は再び屋根裏に登った。


 穴が空いてしまった事で、床がギシギシと今にも崩れそうな音を立てている。
 これ以上穴を開ける訳にはいかない。慎重に、ゆっくりと、確実に宝箱に近づいていく。


──ギシッ……パキッ


 だ、大丈夫……あと数歩で宝箱に手が届くんだ。頑張れ床!


 そしてついに……。


「眼鏡ゲット!」


──バキッ
「あっ」


 眼鏡を手に取った瞬間、再び下に落下した。


 ダンッと大きな音を立ててお尻から落下し、衝撃が骨を通って脳に響く。


「あうっ……」


 咄嗟に魔力で身体強化して助かったが、もし間力が封じられたままなら背骨を骨折していたな。
 さて、どこに着地し……た……。


「さっきから騒がしい……」
「あっ、ども。ま、また起こしちゃったか」


 綺麗に椅子に座っていた。
 上を見上げると、綺麗に真上に穴が空いており、俺は綺麗に椅子に落ちていったのだろう。


 べナードに怒られそうだけど、とりあえず眼鏡をかけて本を開く。
 どうせ眼鏡には何の効果も……あったわ。


 本が読める。いや、正確には文字の上に小さく日本語訳が現れるだけなのだが、それでも訳された内容が読める。
 早速、【信仰心】についてかかれたページまで適当に読み飛ばしていった。


「あったあった」


 早速内容を読んでいく。


◆◇◆◇◆


──条件-【信仰心】


 スキルの中には、信仰心を必要とするスキルが存在する。そういったスキルで重要なのは、これだけである。


【元から存在する信仰心】


 信仰心を必要とするスキルには、【元から存在する信仰心】を一時的に増加させる能力が確実と言っていいほどある。
 それらを使って相手の【信仰心】を高めることにより、様々な能力が有効となる。


──【元から存在する信仰心】をエネルギーとして使い、新しい能力を発動する。


──【信仰心】の高い相手に、それ相応の何らかの効果を発動する。


 信仰心を持つ人が複数いれぱ、それだけ力も大きくなる。宗教でも作って信仰してもらうといい。
 複雑そうにも思える条件だが、扱い方をマスターすれば君も今日から最強だ!


◆◇◆◇◆


 随分と難しそうだな。一度に入る情報が多すぎて頭が痛くなってきた。
 いや、普段から頭を使っていないから脳が悲鳴をあげているのだろう。少しだけ休んでから読み直そう。


 大量の文字を読んで頭が痛くなった俺は、寝ているアリスの横に入って目を閉じる。


「本、読めた?」
「あぁ起きてたのか」


 アリスの方を見ると、寝ながら身体全体をこちらを向けていた。


「うん、一応眼鏡をかけたら読めた。けど難しすぎて頭が痛くなってさ」
「じゃあ一緒に寝よう」
「ありがとう……でもくっつく必要は無いかな」


 アリスが手足を使って俺を抱きしめてきた。
 確かに温かくて気持ち良いけど、これじゃ寝返りができない。


「おやすみ、クロア」
「う、うん。おやすみ」


 どうやらこのまま寝なければならないようだ。

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