女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

189話 レンとの別れ



「こんにちは」
「こんにちは……」


 レンが挨拶すると、アリスは俺の後ろに隠れてから挨拶を返した。


「可愛いですね」
「見た目に騙されるな。ただのワガママで面倒くさがり屋の神だ」
「酷い」


 アリスは頬をプクッと膨らませて、俺を睨んできた。まだ幼い顔でもあるから、意外と可愛い顔はしている。


「小さい子がいると家族みたいですね」
「ま、私には既に夫も子供もいるからそんな妄想はしないかな」


 ハーレム主人公の口車には乗らないぞ!


「眠い。早く暖かい布団に戻らないと、布団が冷える」
「はいはい」


 またアリスを寝室に連れていくのであった。


 その後、俺とレンも眠った。
 俺は明日からも訓練を続けなければならないからな。剣術には自信あるし、それを活かす為の身体能力をそれなりに鍛えなければならない。


◆◇◆◇◆


 次の日の朝から、俺は適当に切った果物をアリスから少し離れたテーブルに置いて訓練に向かった。


 今日は泳ぐのではなく、池の周りを走って体力作りだ。汗をかいたら泳ぐか。
 家から池へ。池から家へ。それを毎日続けていると、少しだけ体力が付いてきた。それから更に体力を付ければ訓練効率も良くなるだろう。


 いつもの池に到着すると、いつもの動物達が出迎えてきた。


 今日は何するの〜?


 そんな顔で集まってくる動物達の頭を撫でて、オレは池の周りを走り出した。
 動物達も尻尾を振って、俺に続いて走ってくる。


 楽しい。やっぱりここは最高の森だ。


「あぶねっ!」


 しばらく走っていると、どこからか声が聴こえた。


「よ、よぉ」
「なんだクラウディアか」


 動物達に噛まれながら、クラウディアは近づいてきた。


「皆、この人は大丈夫だから警戒しなくていいよ」


 そういうと、動物達は噛むのを辞めて俺の周りに集まってきた。可愛い。


「随分と馴染んできたみたいだな」
「まあね。……あっ、転移者が来たから預かってくれるか?」


 こんなに早く別れることになるとは思わなかったが、レンには頑張ってほしい。


「ああ問題ない。それで、そっちは順調に訓練は進んでいるか?」
「ん〜……何したらいいのか分からないけど、とりあえず泳いだり体力付けたりはしてる。やっぱり魔法が使えないと大変だな」
「そうか。今度べナードに首輪を外してもらうよう頼もう」


 有難い。


「そうそう、気をつけろよ」
「ん? 何が?」
「竜神のアリスの封印を解いたんだ。それに気づいた神が来るぞ」


 あぁ……クラウディアにもバレるのか。んじゃあ隠す必要はないか。


「アリスと話してて、スキルをくれる神様の話を聞いてさ。その神に会うまではアリスとは一緒にいなくちゃならない」
「そこは任せる。家に連れてってくれ」
「あいよ」


 レンもアリスも、クラウディアに会うのは初めてだな。


◆◇◆◇◆


「ただいま〜」
「あれ、随分と早いで……すね。そちらの方は?」
「クラウディア。転移者を育てたりしてる魔王だ」


 レンは目を丸くしてクラウディアを見た。


「魔王が転移者を……?」
「クラウディアは元日本人の転生者だからな。分かるだろ?」
「ああなるほど。では……クロアさんとはお別れですか」


 途端に寂しそうな顔をするレン。だが、仕方ない事だ。


「今までありがとうレン」
「全く……クロアは罪な女だな」
「ど、どういう事だよ」


 クラウディアが突然俺の肩に触れた。


「少しは男付き合いの距離感というのを考えた方が良い」
「っ〜〜!」


 小声でそう言われたが、耳元で言われてゾクゾクした為に聞いていなかった。


「それじゃ、行くぞ」
「あっはい。クロアさん……またいつか会えますよね?」
「ああ。いつか会いに行くよ」
「良かった。また会いましょう!」


 俺とレンは、お互いに手を振って別れた。
 こうして家に残ったのは俺とアリスだけとなったのだが……どうしたものか。


 寝室に行くと、アリスは目を開いていた。


「おはよう」
「っ! 私は寝ている」
「寝てる人は寝てるって言わないよ」


 起こすのも面倒なので、椅子に座って話を始める。


「封印が解かれたから神様が来るらしいよ」
「多分その神様がスキルを与えた神様。封印を解いたクロアも狙われるかも」


 でもまあ、アリスがこんなに無気力だって事を説明すれば分かってくれるだろう。


「ってか、アリス起きてるなら散歩行くよ」
「これは寝言……寝てるから動けない〜……う〜ん」


 そういいながら寝返りを打つアリスに、俺は苦笑した。


「いつになったら回復するんでしょうね〜?」
「神様懲らしめないと回復しない」


 はぁ……スキルの神様、早く来てくれ。
 俺はそう願いながら、再び訓練する為に池に戻った。

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