女嫌いの俺が女に転生した件。
181話 天国から地獄へ 〜2nd〜
フカフカのベッドに全身を包まれて、あまりの心地良さに思考が停止する。
今まで服を着て寝ていたのが馬鹿らしくなってきた。
「すぅ…………はっ!」
気持ちよくてつい夢の世界に入ってしまいそうになった。
「……でもまぁ、寝ていいよな」
俺1人しか寝ていないベッドの上で、寂しさを感じながらも眠りについた。
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次の日から、早速4度寝を達成した俺は全身筋肉痛に苦しんでいた。
「うぅ……胃も気持ち悪い……」
気持ち悪さと筋肉痛が合わさり、ベッドの上で苦しんでいた。
やはり一人暮らしが始まると不健康な生活になり、体調を崩してしまう。
昨日は結局何も食べずに寝たからな。料理ができないからって先延ばしにする意味は無い。
頑張って朝食を作らねば……。
なんとか起き上がって、床に足をつけて立ち上がる。
ふらふらして平衡感覚が掴めない。視界がグルグル回って、吐き気がやってくる。
咄嗟に近くにあったゴミ箱に顔を近づけ、空っぽの胃の中から無理矢理胃液を吐き出す。
「うぅっ……何なんだ……」
胃酸で喉が痛くなり、ゴミ箱に入っている袋を持って下の階に降りる。
キッチンで、コップを水を入れて喉を潤わせる。
なぜこんなに気持ち悪いのだろうか……昨日の糞掃除で変な病気に感染したか。
水を一口飲むと、皿に吐き気がしてきた。
「お゛ぇっ……」
飲んだばかりの水を袋の中に戻す。
これで少しは胃の中も洗浄できただろうか……。もう一口水を飲んで、ソファに倒れ込む。
「はぁ……」
おでこに手を当てると、かなり暑くなっていた。やはり病気を疑った方が良い。しっかり休まないとな。
吐き気を耐えながら、ソファの上で目を閉じる。
病気になるなんて何年ぶりだろうか。確実にこの世界に来てからは初めてだ。
魔力が使えなくなり、免疫力が低下したのだろう。
「誰か……」
薄れていく意識の中、手を伸ばした先にリグの姿が見えた気がした。
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おでこが冷たい。
目を開けると、リグが俺の横に座っていた。
「あれ……なんでいるの……?」
俺は幻覚でも見ているのだろうか。1度目を擦ってもう1度横を見る。
「……リグだ」
「いきなり困ってる事が無いか心配して、クラウディアに頼んで来たんだ。ったく、なんで早速病気になってんだか」
「ごめん……」
「いいよ。無理すんな。寝てていい」
今日のリグは優しいなぁ……俺はまだ気持ち悪いのに、妙な安心感がある。
「優しいな……」
「あ、おい動くな。服着せてないんだから」
「あ……リグのえっち」
ぼんやりしているせいか、普段言わないような事まで言ってる気がする。
はだけた布を上からかけ直して、リグはキッチンに向かった。料理を作ってくれるのだろう。
「っていうか、なんで裸なんだ?」
「裸……? なんでだっけ……」
「ああいい。考えるな」
確か開放感とか言って裸になってたっけ。
「……昨日裸で寝たからそれで病気になったのかも」
「馬鹿なのか……」
「へへへ」
やはりリグと一緒にいると落ち着くな。心無しか気持ち悪さも……いややっぱり気持ち悪い。
「どうした? 険しい顔して」
「……吐く……」
「ちょ待て! 袋! これに出せ!!」
リグが急いで俺に袋を渡す。俺はその袋をギュッと握って床に胃液を垂らす。
「袋に出せって……まあそんくらいならいいや。大丈夫か?」
「水……」
「あぁはいはい」
1度座って、いつでも袋に吐けるよう構える。
「いまお粥作ってるから、食べれなかったら残していいからな」
「ありがと……」
目が覚めてきて、段々と気持ち悪さも増してきている。
「リグに病気移る……」
「あぁ俺は魔力があるから平気だ。自分の心配をするんだ」
「そうだっけ……」
「そうだっけって……」
水を一口飲んで、すぐに吐き気がしたので袋を構える。
「うぶっ……けほっ……鼻に入った……」
「大丈夫かよ……お粥食べたらしっかり寝よう」
リグが涙を拭いてくれた。
「ふふ、ありがとう……」
「笑ってる余裕は普通ないからな……」
リグと一緒にいるから笑っていられるんだ。もし俺1人だったら、今頃床は胃酸だらけ。もしかすると死んでいたかもしれない。
「リグなんで顔赤いの……?」
「……いや」
「もしかして病気移っちゃった?」
「違う。なんか病気のクロアが色っぽく見えて……気にするな」
色っぽい……か。思考能力が落ちてるからかな。
「いつも色っぽいでしょ」
「はっ、よく言う」
「なんで笑ったぁ〜」
「あぁ泣くな泣くな! お前は子供か!!」
こうして俺は、リグに看病される事になった。
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