女嫌いの俺が女に転生した件。
179話 天国から地獄へ
最後に改めて別れの挨拶をしたあと、べナードに死神界まで転移してもらった。
明るくて綺麗な森の中、一件の木製の建物が太陽の光を浴びて輝いている。
その建物には、ツタや苔、更には虫なんかが沢山……。
「帰ろう」
「待て。ちゃんと綺麗にしてやるから」
虫、嫌だ。帰る。
しかし、べナードが建物に触れると一瞬にして新築の建物のようにピカピカになった。
窓から見える部屋の中は豪華。あまりに綺麗すぎて、死神界でこんな場所で住んで良いのか迷う。
「ここは長年誰も住んでいない場所でな。というより、そもそも死神は綺麗な場所を好まない。ここに住むといい」
「わぁい!」
俺はすぐに玄関から建物の中に入る。
そして……入ってすぐに廊下と階段が現れた。
「……」
「どうした? 急にテンション下がって」
「玄関入ってすぐ階段って……霊を寄せ付けやすいってどこかで聞いたことある」
作りは二階建てで、廊下もピカピカだ。それに不思議な石で廊下の奥まで明るい。
「確かに、この建物を事前に様子見しに来た時に何度か心臓が痛くなったな」
「それってお前に殺された人間達の恨みなんじゃないの」
「そうかもな」
笑い事じゃない。それで俺が殺されたらどうするんだこの野郎。
「まあ外には動物がいるし、五分五分だ」
「はぁ……まあいいや。とりあえず案内してくれ」
べナードに建物の中を案内してもらった。
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内装はともかく、実用性はバッチリだ。
二階に寝室と書庫と倉庫とトイレ。一階にリビング、キッチン、トイレ。
ここに皆で住みたいな。
「じゃあ俺は帰るぞ」
「えぇ〜……もう少し話さないか?」
「ダメだ。あまり長時間人格を乗っ取り続けるのは良くない」
まあエリフォラの為か……。
「窓を開けてれば動物達が入ってくるから、そいつらと遊んでやれ。ちゃんと訓練も続けろよ」
「へいへい……」
「じゃあな」
べナードが転移して、俺は1人寂しくリビングの椅子に座っていた。
「……寂しい……」
杜の木が風で揺れる音。動物達の鳴き声がおれの心を更に寂しくさせる。
「はぁ……なんで寂しいとこうも泣きたくなるんだか」
子供じゃあるまいしと自分を慰めて、窓を開ける。
「ニャ〜」
「っ!?」
「ワォ〜〜」
「ナ〜〜」
次から次へと可愛い鳴き声の猫達が入ってきた。
「こ、これは……天国!!」
妙に人懐っこい猫達と一緒に遊び始める。
もしかして……今回の訓練はかなりイージーなのでは!?
期待と沢山の猫で胸を膨らませながら窓の外を見ると、「何何〜?」 と言ってそうな雰囲気でキツネやウサギや犬、鳥。それ以外にも見たことのない可愛い生き物などが集まってきた。
「あぁ……私は死んだのか……ここが天国……」
ゾロゾロと家の中に入ってくる動物を見て、俺は大きな幸福感を手に入れた。
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しばらく戯れていると、重大な事に気づいてしまった。
「あぁ〜! そこでうんちしないで!!」
「おしっこぉっ!!」
「ウサギ交尾やめっ!!」
「うんちぃぃ〜〜!!」
そう。臭いのだ。家の中で容赦なく糞尿を垂らしていく動物達に、さっきまでの幸福感とは違う怒りにも似た感情が生まれ始めた。
「おら!! 出てけ!!」
キッチンにあったフライパンとお玉を合わせて、カンカン音を鳴らして動物達を追い払う。流石にこれ以上俺のテリトリーを汚す訳にはいかない。
「あぁ掃除……どうしたら……」
汚くなった部屋を見て俺は絶望した。首輪のせいで魔法が使えないのだ。掃除が大変。
この世界に希望という言葉は存在しない。もう何も信じない。俺は2度と、動物達を家の中に入れないと誓った。
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