女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

166話 酒×男は怖い

 酒を飲み始めてどのくらい経っただろうか。
 俺の記憶では、おっさん達に足や脇、胸なんかを触られ始めたところまで覚えている。
 そして今、目を覚ました俺はどこかの建物の裏側。暗い場所で、全裸で横になっていた。


「いてて……」


 地面に寝ていたので、かなり全身が痛い。少し肌寒くて全身を丸めると、身体に何かザラッとする物が付いていた。
 なんとか手足を確認すると、白くて固まった物がこびり付いている。


「マジかよ……っ!」


 すぐに股を確認するが、どうやらそこは使われてないらしい。


「……なんでこんな事に……お゛え゛ぇっ……」


 吐き気がして、口からボトボトッと飲んだ酒と白い液体が出てきた。


 どうやら、俺はレイプされたらしい。


「クソ……リグと喧嘩して……家出して……レイプされて…………何なんだよ」


 もう俺の精神状態はボロボロだった。
 服がない。帰る家もない。こんな姿じゃ人に会えない。


 ここから動けなくなった俺は、身体を丸めて寒さを凌ぐしかなかった。
 たまたま近くに魔物の皮が敷いてあり、俺はその上で寝た。なぜそんなことにあるのか、なんて判断すらできなくなっていた。


「……なんで喧嘩したんだっけ……」


 リグと喧嘩した理由……本当に些細な事じゃないか。なんで俺はあの程度で家出なんてしたのだろうか。
 こんなことになるくらいなら……リグに謝った方がマシだった。


 気持ち悪さと寒さが合わさり、俺の思考はほぼ停止した状態になっていた。
 考える事をやめた俺には、眠けがやってくる。


ーーーーー


ーーーーー


「クロア起きろ。朝だぞ」
「……あれ……?」
「ん? どうした?」


 気付くと、俺は家のベッドでリグと横になっていた。
 ……そうか、夢だったのか。


「……リグ……」
「どうした? 何か怖い夢でも見たか」
「うん……リグと喧嘩して……」
「俺とクロアが喧嘩なんてしないだろ」


 リグが俺を優しく抱きしめた。


「暖かい……」
「……」
「リグ……?」


 急に何も喋らなくなって、リグの顔を見た。


「っ!?」


 リグ……じゃない。


「それじゃあ、始めるか」


 気持ち悪いおっさんの顔に変わったリグが、暗い闇となって俺を包み込んできた。
 恐怖で悲鳴を上げながら、俺は意識が遠のいていく。


ーーーーー


ーーーーー


「…………もう何が夢なんだか……」


 夢から覚めた俺は、未だに魔物の皮の上で寝ていた。


「……くしゅっ!」


 身体が冷えて、くしゃみと鼻水が止まらない。


「おっ、クロアちゃん大人しく待ってたみたいだね〜」
「えっ」


 声が聞こえた方に目をやると、あのおっさん達3人がいた。


「それじゃあ、始めるか」


 おっさんの1人が、ニヤニヤした顔をしながらこちらに近づいてきた。


「まっ、待ってっ……! 何……するんだ……」
「何する? 昨日した事と一緒。気持ち良い事するんだよ」
「昨日の君は凄かったね〜。必死に腰振って何回も──」
「お前らなんかとする訳ない……いくら酔ってたからって……男と……」


 必死におっさん達の言葉を信じないように、聞かないように耳を塞いだ。


「覚えてないの〜? やったら思い出すよ」


 おっさんがズボンを脱ぎ始めた。


「何…してんの……」
「決まってんだろ」


 無理矢理足を開かされ、俺の下半身が男達に見られた。


「うぅ〜良いね〜……」
「やめ、やめろよ……見るなぁ……」


 必死に足を閉じようとするが、おっさんの力に勝てない。
 魔力で足を強化しようとするが、何故か魔法が使えない。


「どうしてっ!?」
「あ〜そうそう。魔法が使えないように、魔力の通り道を麻痺させといたよ」


 そういって内ポケットから取り出したのは、小さな注射器。


「もう1本打ち込むか」


 腕に注射された後、おっさんがニッコリと笑った。


「君、もうこんなに濡れてるよ?」
「ぬ、濡れて……濡れてなんかない……」
「こりゃ早速入れられそうだ……なっ!」
「んんっ〜〜〜!!」


 入れられた。入れられてしまった。


「あら、ショックで失神したか」


ーーーーー


ーーーーー


「──きろオラァッ!!」
「がはっっ!!」


 腹を思いっきり蹴られて目を覚ます。


「怪力のクロアがこんなに弱いなんてなぁ?」
「うっ……助け……て……」
「助けなんてこねぇよ。ここは人なんて来ねえ」


 獣人族のおっさんが、俺の胸を握った。


「痛いぃっっ!!」
「ほら叫べ叫べ。お前の声を聞いた誰かが来るかもな。ま、そいつが助けてくれるかって言ったら無理だろうけど」
「うっ……」


 その時だった。


「こっちから聞こえたな〜」


 サタナの声。


「お、どうやら女が来たみたいだな。へへへ」
「お前ら善意……死ね」


 サタナが来れば、俺は助かる。


「あっクロア〜……と、不審者3人発見」
「助けてっっ!!」
「りょうか〜い」


 サタナが一瞬で俺の近くに転移して、おっさん達を全員蹴り飛ばした。


「こんなところにいたんだね」
「良かった……サタナ……」
「リグリフも心配してたよ〜? 妊娠してない?」
「多分大丈夫」
「じゃあこの3人は僕に任せて、家に転移させるよ?」


 サタナに任せると怖いが、今はとにかくここから離れたい。
 俺は縦に頷いた。



「女嫌いの俺が女に転生した件。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く