女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

164話 オーガのボスもただの雑魚



「サタナ、気をつけて入った方が良い」
「そうだね〜」


 俺とサタナは、急に襲われても大丈夫なようになるべく近づいて穴の中に入っていった。
 俺の近くに入れば、物理的な攻撃は全て防がれる。その範囲内にサタナが入れば、サタナも守られる事になる。


 真っ暗な穴の中では、たった一つの唸り声しか聞こえない。奥の方から、明らかにこちらに殺意を向けられているのが分かる。


「じゃあ……一気に明るくするぞ」
「うん」


 俺は全身に雷を纏わせ、自らの身体を発光させた。どういう原理なのかは分からないが、べナードによる訓練のお陰でこういう事もできるようになった。


 そして見えてきたのは、奥の方に立つオーガの姿。
 他のオーガよりも約1.5倍は大きい。手にはピッケルを持っていて、目は真っ赤に充血している。


「やっぱりアレがボスだな」
「どのくらいのお金になるかな?」


 ん〜……角が他のオーガより大きい事は確かだけど、他のオーガの金額が分からないからな。


「楽しみに殺すよ」


 オーガのボスが瞬きをした瞬間に、首を切り落とす。
 ……そうしようとしたのだが、首に触れた剣がビクともしない。首が太くて切り落とせそうにないし、とにかく硬い。


「あぁ……」


 いままで使ってきた剣がポッキリ折れてしまった。
 オーガと目が合い、掴まれそうになったので一先ずサタナの元に帰る。


「あ〜あ、剣が折れちゃったね〜」
「ボスも怒ったみたいだし、どうしようか」


 俺の剣が通らないということは、サタナの剣も通らない。後は魔法で攻撃するしかない。


「あっ、やばい来たぞ」


 そんなことを考えていると、オーガのボスがピッケルを振りかざしてこちらへ突進してきている。
 大きな腕に武器が合わさって、狭い穴の中での安置はない。


「穴の外に逃げた方が良──」
──キィン


 目の前で何らかの攻撃が防がれた。


「逃げた方がいいな」


 どうやら、俺の剣の折れた部分を投げてきたらしい。バリアが無ければ俺は頭から貫通していただろうな。
 別にビビった訳ではないが、穴の外に出ることにした。


ーーーーー


ーーーーー


「お〜いクロア〜! どうだ〜?」
「待ってくださいリグリフさん。まだ穴から何か出てきます」


 穴の外に出ると、リグとエリフォラが暇そうにこちらを眺めていた。
 オーガのボスが一気にこちらへ距離を詰めてきて、ピッケルをブンブンと振り回している。


「リグ! エリフォラ! こいつを魔法で倒す場合どうしたらいい!」


 オーガの攻撃をガードで防ぎながら、2人に聞く。


「魔法で? ……ってことは剣が効かなかったってことだよな。じゃあ……氷漬けにするとか、とにかく高温の熱で燃やすとか」
「殺せますか?」


 リグとエリフォラが答えを見つけるまで、俺達はオーガの様子を見て待っていた。


「よしクロア! そいつの頭に触れて全力でビリビリやっちゃえ!!」
「なんで?」
「電気って高温だろ? オーガの脳細胞から殺すんだ」


 リグの癖にエグい事を考えるもんだ。
 ただ、オーガの身体が電気を受け付けるかどうかが問題だな。もしかすると魔法すらも効かない可能性が……それは考えすぎか。


 とりあえずオーガの頭上に移動して、思いっきり右手から雷を落とす。
 本気の威力を出す場合、右手に魔力を集中させた方が良い。


 大きな雷と音と、オーガの叫び声が合わさってとてもうるさい。


 しばらくすると、オーガはその場に倒れてピクピクと全身を痙攣させている。


「よし、それをギルドまで運ぼう」
「めんどくさっ!」


ーーーーー


ーーーーー


 臭いオーガを風魔法で浮かせながら、俺達はギルドに帰った。


「どうしたんですかそれ!?」


 受け付けの人だけでなく、街の人や他の冒険者からも驚きの声が上がった。


「オーガ借り尽くすって言ってまさかそんな大物を狩るとはな!」
「流石怪力のクロアだ!」
「あはは……」


 正直怪力のクロアと呼ばれるのはあまり好きじゃない。

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