女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

161話 これか本当の魔力操作



「よし。次は自分でやってみろ」
「分かった」


 俺が直接命令すれば、魔力は命令を聞こうと全身に広がる。
 俺の命令を聞くんじゃない。俺の願いを感じてくれ。


──動け


 念じた。魔力に意識を向けるでもなく、ただ念じた。


──ゾクゾクッ


 そして魔力は動き出した。まるで俺の意思を全ての見通しているかのように、指先から頭の天辺まで動く。


「おめでとう。基礎訓練は終わりだ」


 べナードの口から、初めて褒めるような言葉が出てきて、俺は思わず照れてしまう。


「お、おめでとうって…………ありがとう」
「何照れてんだお前」


 照れた俺に、べナードは少し睨みながらも安心したような表情を浮かべた。


「これで今日からお前と魔力は一心同体。魔力が勝手に意思を読み取り、願い通りに動いてくれる」
「試しに魔法を使ってみてもいいか?」
「ああ。それをやって満足に出来れば今日は終わりだ」


 今日は終わり。それを聞いて、俺のモチベーションはぐんぐん上昇した。


「よし……」


 魔力に意識は向けずに、片手で剣を握る動作をする。


──バチチチッ


 握る動作をしただけなのに、握った時には既に雷の剣が片手に生まれていた。
 俺は何も意識していない。俺の願いを魔力が感じ取り、それ叶えてくれたのだ。


「やっ……やったぁぁぁっっ!!!」


 あまりの嬉しさに、俺はクラウディアとべナードの手を掴んではしゃぎまくってしまった。


「お、おい喜びすぎだ」
「だって! 魔力コントロールがこれで完璧になったんだろ!? 今度から感覚的に分からない魔法も、願えば魔力が叶えてくれる!!」
「そ、そうだが……」
「クロア。べナードが困ってるぞ」


 べナードの手を握ってブンブン振り回していると、変な表情で下を向いていた。


「べナードどうした? ありがとう」
「良かったな。お前はやっぱり才能がある。俺の方こそお前を育てれる機会をくれてありがとう」
「あ……」
「……んだよ」


 今、初めてべナードの笑顔を見た気がする。
 エリフォラとしての笑顔は見たことあるが、べナードの笑顔なんて初めてだ。


「ふふ、ありがとう」
「気持ちわりぃな。城に帰るぞ」


 嫌そうな顔をしているべナードと一緒に、クラウディアの城へ転移した。


ーーーーー


ーーーーー


「……あれっ? 私、また気を失ってましたか?」
「エリフォラちゃんおはよう」
「……? クロアちゃんおはよう……?」


 城に戻ると、べナードはエリフォラと変わったようだ。
 意識を取り戻したエリフォラは、突然時間が過ぎ去っている事に戸惑いながらも、俺を見て一言。


「クロアちゃんの魔力、細かくなったね」
「あっ分かった?」


 やはりエリフォラは、俺が少しでも変わるとすぐに気づいてくれるな。


「さて、クロアとエリフォラ。2人はもう帰るな?」
「ああ。今日はありがとう」
「えっと……すみません。どうやら私寝てたみたいで……」
「ああいや……俺が悪いんだ。エリフォラは気にするな。
 じゃあクロア、訓練する時は俺じゃなくてアイツが言うから。それまで自由に待ってるんだ」


 じゃあ、べナードが話しかけてくるまではしばらく自由か。


「ありがとう。またな」
「おう。気をつけて帰れよ」


 俺とエリフォラはクラウディアに手を振って、リグ達の待つ家へと帰った。
 その間、エリフォラは頭を傾げたりしては俺と腕を組んで「えへへ」と笑ったりと、よく分からない状況なのに俺で落ち着こうとしていた。


ーーーーー


ーーーーー


「たっだいま〜!」
「ただいま帰りました」


 家に帰ってリビングに行くと、リグとサタナが待っていた。


「おっ、おかえり〜。その様子だと訓練は良い感じっぽいな」
「嬉しそうだね〜!」


 今の俺はサタナよりも魔力の扱いが上手い! もしかすると、この中で最も……いや、べナードを除いては俺が一番魔力コントロールに優れているだろうな。


「ミリスとバルジは夕飯買いに行ってるから、皆でゆっくりしようぜ」
「リグッ!」
「うおっ! な、何かやけにテンション高いな」


 俺はリグの腕を掴んだ。


「私は訓練前と今でかなり変わりました。さて、どこが変わったでしょう」
「どこが……?」


 エリフォラが分かったんだ。夫のリグが分からなくてどうなるんだって話だよな。


「当然、答えれるよな?」
「ま、待て……髪は違う……服も……んん〜……? おっぱい縮んだか?」
「……それは元からだよっ!!」
「いででででで」


 リグの頬をつねってお仕置き。残念な事にリグは俺が変わった事に気づかなかったようだ。


「サタナは分かるよな〜?」
「そりゃ勿論。それだけ魔力が細かくなってると嫌でも気付くよ」
「はい! 今日リグは私のオモチャになれよ!」
「あ、ああ……サタナに答えを言われてもまだ違いが分からない俺を好きに使ってくれ」


 リグには違いの分かる男になってほしい。今度リグの女子力を上げるか。


 俺は魔法が上達したという達成感で、その日はかなりのハイテンションで過ごすことができた。そのせいでリグをオモチャにすること無く、抱き枕にしてあっという間に眠りについた。

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