女嫌いの俺が女に転生した件。
144話 帰りは最高のお迎え
「私の準備は出来ました。執事には旅に出ると伝えたので、問題は無いと思います」
問題有りそうだけど……本当に良いのか執事は。
「まあ、お互いに準備出来たし転移お願い」
「はい。カーカー君、転移」
するとエリフォラのスカートの中から黒いカラスのカーカーが現れて、俺とエリフォラを黒い輪で包んだ。
「えっ!?」
いままでに見たことのない転移の方法に驚いたが、ちゃんと転位できている事に気づいた俺は、少しだけ安心する。
しっかりと見慣れたクラウディアの国の街景色だ。
「エリフォラ、今の……転移なのか?」
「はい。カーカー君の魔法で、転移といいます。知りませんでしたか?」
どうやらエリフォラにとっては、この転移が普通らしい。
俺の知っている転移は、浮遊感と視界の歪みが同時に来て気持ち悪くなるのが転移だ。
だが、今の転移は浮遊感も視界の歪みもなく、一瞬でパッと世界が切り替わった。気持ち悪くもないし、そもそもいつ転移したのかも気づけない程影響が無い、
「……良かったら、その転移魔法を教えてくれないか?」
「すみません……実は私も転移魔法は使えないんです。カーカー君だけ使えるので聞いてみたのですが、カーカーとしか言わず……」
あ、一応聞いてみたんだな。
「カーカー君、言葉分かる?」
「ガーガー」
いや、これガーガー君じゃね?
ーーーーー
ーーーーー
とりあえず、珍しい転移魔法は自分で研究するとして、俺とエリフォラはルイス達が待っている家に向かった。
ここらへんの人達は、エリフォラを見ても特に変わったリアクションは無い。魔王だとは思ってないからな。
その分、エリフォラも穏やかな生活がしやすいのではないだろうか。俺との趣味も会いそうだし、今度一緒にマッサージ点なんかにも行って癒されてみるか。
しばらく歩いて家に到着。玄関のドアを開けて第一声。
「ただいま〜」
「お母さん!!」
「あ〜! ルイスゥゥゥ〜ッッ!」
俺の声が聞こえるなり、リビングの方からルイスが走ってきた。俺はすぐに抱きしめて我が子の温かみを確かめる。
「おかえりクロア。と、そっちは隣の魔王様、送ってくれてありがとうございます」
「いえ、私もこの家で生活する事になりました」
「は……」
「ぷっ」
懐かしいリグの顔を見て、つい嬉しくて笑ってしまった。
「ただいまリグ。部屋は空いてるし、エリフォラちゃんと一緒に生活しよう。人は多い方が楽しいだろ?」
「ん、んんまあそうだが……俺とのクロアの2人きりの世界が作れないんだが……」
相変わらずリグは俺にデレデレだな。
抱き抱えたままのルイスを降ろして、頭を撫でた後に俺は部屋の奥を覗く。
「お母さん達は?」
「デートだってさ。どうやらハマったらしい」
「あぁそれならいいや。じゃあエリフォラちゃん、上がって」
「失礼します」
靴を脱いで、リビングに入る。
すると、イスにサタナが座ってこっちを見ていた。
「僕の事忘れてない?」
「ん? 忘れてないけど?」
「ミリスやバルジを心配するまでは分かるよ。そこから、『サタナは?』 くらい聞いても良かったんじゃない?」
「あぁ……ごめん」
いくらドMのサタナでも、存在を忘れられるのは嫌らしいな。
「キュー」
『サタナは心の中で喜んでるので、気にしなくて大丈夫ですよ』
「ごめん、アノスの事は完全に忘れてた」
「キュッ!?」
しかし、こうして皆で集まると安心するな。
エリフォラにはミリスに料理を教わってもらうか。役目も与えた方が馴染みやすい。
「ガーガー」
「キュッキュー」
アノスとガーガ……カーカー君が何やら話している。お互いの言葉は分かるのだろうか。
とりあえず椅子に座って、ルイスとリグの顔を見て疲れを癒した。
「あぁ……やっぱりここが一番落ち着く」
「私の国は落ち着きませんでしたか?」
「いや、そんなことは無いんだけど、やっぱり慣れた場所は落ち着くよ」
冷たい木製テーブルに顔を伏せて木の匂いを嗅いでいると、横にルイスが座って肩を叩いた。
「ん?」
「カーカー君が、転移魔法教えてあげる。って言ってたよ」
「……ん?」
俺はまた新しい物を発見してしまったのか、という気持ちに包まれた。
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