女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

143話 エリフォラと愛



 しばらくして帰ってきてエリフォラは、とても満足そうな笑みを浮かべていた。


「それではクロアちゃん、そろそろ帰りましょう」
「あ、もういいのか?」
「はい。満足できましたし、一緒に歩いて帰りましょう」


 普段なら転移で帰りそうだが、帰るまでが遠足っていうしな。


「えっと、マスター……? さん。またいつか会う機会があったらお話しませんか?」
「えっ……私と、ですか?」
「日本人、なんですよね?」


 そういうと、男性は少し目を丸くした後にふっと微笑んで。


「ここに来ていただければいつでもお話しますよ」
「いつ来れるかは分からないけれど、いつか話に来るよ」


 そういう約束をした後、俺とエリフォラは店の外──地上に出た。


「歩いて帰りましょう」
「ああ。荷物持つよ」
「いいんですか?」
「いいよ」


 俺はエリフォラの荷物を持って、2人で一緒に城に帰ることにした。


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 細い道から広い道に出て、段々と沢山の人がいる道にやってきた。
 上を見れば城が見える程近づいてきたし、エリフォラもまだ疲れてないようだ。


「あ、最後にちょっとお店によってもいいですか?」
「ん、いいいけど。何買うんだ?」
「クロアちゃんにお土産です」


 そのままエリフォラに着いていくと、雑貨屋についた。


「これを下さい」


 エリフォラが手に取ったのは、小さなペン付きの手帳と髪を結ぶためのゴム。
 特にゴムは有難いな。そろそろ今使っているゴム千切れそうなんだ。


 エリフォラが金を支払った後、俺に渡してきた。


「本当にいいのか?」
「はい! クロアちゃんの嬉しそうな顔が見れて良かったです」


 どうやら表情が緩んでいたようだ。


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 またしばらく歩いていた時だ。


「リーダーまた振られちゃいましたね」
「周りの女は見る目が無いんだよ」


 あのエロ少年達が歩いていた。
 良かった。リーダーは意外と平常心を保ててるみたいだな。


「あっ……」


 そしてリーダーと目が合った。


「リーダー? あ、あのお姉さんだ」


 リーダー少年の顔がどんどん赤くなっていき、表情筋が緩んでだらしない顔。更には涎を垂らして、下半身には小さなブツがテントを張っている。


「あ……お姉さん……また僕をいじめてくらひゃい……」
「……」


 俺がした事とはいえ、流石にこれは酷い。


「エリフォラ、行こう」
「あ、はい!」


 俺はエリフォラと一緒に早歩きで城へ帰った。


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 城に到着した俺達は、執事に汗をかいてるだろうと言われてタオルを渡された。
 エリフォラの部屋で全身を吹いていると、エリフォラが身体を密着させてきた。


「ど、どうした?」


 子供が甘えてきている、考えればなにも気にすることはないのだが、どうしても意識してしまう。


「クロアちゃんの汗の匂い、凄く良いです」
「ただの汗だよ……」
「すんすん」
「ん……」


 全身の匂いを隈無く嗅いでいかれて、少しくすぐったく感じた。


「私はクロアちゃんが好きです」
「あ、ありがとう。急にどうした」
「クロアちゃんの噂を聞いて、カーカー君にクロアちゃんの事を調べてもらって。こうして会って話してみて、私はクロアちゃんが大好きになりました」


 好かれるっていうのは悪い気はしないな。
 抱きしめてくるエリフォラの頭を撫でてやる。


「辛い事があったりしたら、いつでも私に会いに来るといい」
「……私……生まれた時から両親がいないんです」
「…………話さなくていいよ。私がいる」


 今度は俺の方からエリフォラを抱きしめた。愛情を十分に貰えなかったエリフォラだからこそ、まだ幼い心が残っている。
 今までに貰えなかった愛情を、俺が上げることでエリフォラの為にもなるだろう。


「今度は私達の国に遊びに来ないか?」
「実はそのつもりでした」


 エリフォラは俺がいないとダメみたいだな。

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