女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

137話 幼いエリフォラ



「キスは友達同士でもすると聞きました」


 誰から聞いたんだ……。


「まあ、キスくらいならいいよ。動くなよ」
「っ! はい!」


 エリフォラは目を瞑って、唇をクッと前に突き出していた。
 いや、口同士ではしないからな。


 俺はエリフォラの頬に軽くキスして終える。


「こっ、ここ、これが……キス……不思議と変な気分になりますね……!」
「そろそろ帰りたいんだけど」
「あ、はい。では戻りますね」


 エリフォラが俺の肩に触れて、そのまま真っ暗な世界に色が戻ってきた。


「ふぅ……」
「ありがとうございましたクロアちゃん」
「どうやら終わったみたいだな」
「え? な、なぁクロア、今触られただけだよな?」


 何も知らないリグと俺の両親は何が起きたのか困惑している。なんせ触れただけで全て終わったような雰囲気になっているのだから。


「ちゃんと話してきたよ」
「そ、そうなのか……よく分からないけど仲良くなったみたいだな」
「はい。クロアちゃんにキスしてもらいました」
「は!?」


 リグが俺を見た。


「いや、エリフォラがしてほしいって言って聞かないからしただけで、口にはしてないぞ」
「クロアお疲れ。エリフォラと仲良くなれそうか?」


 クラウディアが俺の前にやってきた。


「ああ。友達として仲良くなったよ。今度エリフォラちゃんの国に遊びに行くことになった」
「クロアちゃんを私が案内するんです」
「良かったなエリフォラ」
「はい!」


 出会った頃と比べて明らかにテンションが変わっているエリフォラに、リグは少しだけ戸惑っている。


「リグ、ごめんけど今度エリフォラと2人きりで出掛けることになった」
「クロア……浮気とかしないよな……」
「心配すんなって! 私はリグだけの物だよ」


 それを見ていたエリフォラが。


「お2人は子供がいるのでしたよね?」
「ああ、ルイスっていう可愛い子が二階にいるぞ。俺とクロアの可愛い息子だ」
「ということはセック〇したのですね。良い関係です」
「なっ……」


 どうしてエリフォラはセック〇にそこまで拘るのだろうか。


「あぁごめんリグ、エリフォラちゃんちょっと変わってるから」
「……いつ行くんだ?」
「エリフォラちゃん、いつ行く?」


 俺は特に予定もないし、今から言っても問題は無いが。


「では早速行きましょう」


 だそうだ。


ーーーーー


ーーーーー


 俺は最後にルイスにも伝えて、エリフォラと一緒に外に出た。
 そこでクラウディアとも別れて、俺とエリフォラ2人きりに。


「では行きましょうか」
「何日くらい泊まるんだ?」
「好きなだけ泊まってどうぞ。お城に招待します」


 おぉ、ついに俺も城の中に住めるのか。


 エリフォラが俺の肩に触れると、一瞬で綺麗で大きな椅子の前にやってきた。


「エリフォラ様っ!」
「「エリフォラ様っ!!」」


 後ろから声が聞こえて、振り返ると鎧を着た獣人族等が膝をついていた。


「緊張しなくて大丈夫ですよ」
「ああ、緊張はしてない」


 まだエリフォラの魔法が聞いているようで、身体がポカポカと温かく安心している。


「では、今から私とクロアちゃんが一緒に寝る部屋に行きます」
「一緒に寝る……?」
「友達は一緒にお泊まりなどをするそうですよ」


 ん、まあいい……のか? いや良くない良くない。ベリアストロとかとは一緒に寝たことあるけど一国の王で魔王のエリフォラと一緒に寝るなんて……。
 綺麗な床に膝まづいている人達を見るが、特に変な顔はしていない。


 大丈夫なのだろうか。


 エリフォラに部屋に案内された。


「すみません。散らかってますが、ここがいつも私が寝ている部屋です」


 床には本や服が沢山落ちていて、部屋の真ん中にドンと置かれた大きなベッドは綺麗にシワなく整えられているが、上には可愛い動物の人形が沢山置いてあった。


 壁には絵画や写真、落書きなどが描いてあったりした。
 オモチャ箱なんかも部屋の隅に置いてある。その周りには積み木。


「あのオモチャ、エリフォラちゃんが使ってるのか?」
「え? ……あっ! ち、違います! 執事が来て遊んでるんです! べ、別に、私が遊んでる訳じゃありませんよ!? 子供ではないので……こほん、取り乱してしまいました」


 分かりやすい。母のような雰囲気で子供のような性格。不思議な人だな。


「今日からここで気楽に過ごしていいですよ。兵士達には客が来ることは既に伝えてありますので、暇な時はいつでも外出を。私が案内します」
「ありがとう。じゃあお茶でも──」
「お待たせしました」


 俺がお茶を頼もうとした時、丁度部屋の扉が開いて1人の男が入ってきた。お盆の上にコップとお茶がある。タイミング良いな。


「ありがとうございます」


 エリフォラは真央だというのに、執事の男に頭を下げてお茶を受け取った。


「クロアちゃんどうぞ」
「あ、ありがとう」


 冷たいお茶を一気に飲み干して、俺は部屋の中を見て回った。


「あ、あまり見ないでください……恥ずかしいので」
「いいじゃん。知り合いにもこんな部屋に住んでる人いるし」


 ベリアストロの事だけど。


 棚には難しそうな本が並んで……はいなかった。絵本だらけだ。
 ふとエリフォラを見ると、ベッドの上で人形を抱き抱えながら体育座りをしていた。


 か、可愛い……。はっ、俺は今何を考えてたんだ。


「どうかしましたか?」
「い、いや。……もう外も暗くなり始めたな」
「そうですね。今から一緒にお散歩しようと思いましたが、執事に怒られそうなので辞めときましょう」


 本当にエリフォラは子供みたいだな。身長高いくせに小さく感じる。



「女嫌いの俺が女に転生した件。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く