女嫌いの俺が女に転生した件。

フーミン

122話 ルイスの能力とは



 ルイスも外で遊べるようになって、よく運動するようになった。
 1歳なのに走り回って遊んでいる姿は、流石俺とリグの子だ。としか言えない。


 何か特別な能力があるらしいのだが、未だに判明していない。神の子であり転生者。それに人間と獣人のハーフ。かなり珍しい方だろう。
 きっと物凄い才能をを隠してるはずだ。


「サタナ〜遊んだらルイスお風呂に入れてあげて」
「分かったよ〜。ルイス君、そろそろ疲れた?」
「まだ疲れてない。オーガごっこ! 今度はサタナが逃げて」
「手加減しないよ〜?」


 いつの間にかサタナとルイスはかなり仲良くなっている。それでも甘えてくるのは俺だけだ。


「ママも遊ぼ〜?」
「私はいい。見えるから遊びな」
「2人じゃつまんないよ〜」


 どうやらサタナはもう飽きられてしまったようだ。


「じゃあ魔法の練習する?」
「する!」


 俺に出来ることと言ったら、魔法や数学を教える程度。身体を使う遊びは苦手なんでな。


「その前にお風呂に入ってからな」
「ママと入る!」
「じゃあ僕はお買い物」
「あっサタ……」


 どうやら俺がお風呂に入れてやらないとダメらしい。


ーーーーー


 体を洗ってやって、一緒に浴槽に浸かる。


「気持ちいいね〜……」


 ルイスは俺の膝の上に立っている。そうしないとかなり1歳のルイスには深すぎるからな。


「ママ〜」
「ん?」
「僕ね。バレないように魔法を1人で勉強してた」
「へぇ〜、使えるようになったか?」
「うん! 見てて」


 ルイスはそういうと、お風呂の水面に指だけを入れてゆっくりと上にあげた。


「……す、凄いね」


 その指先には、丸く集まったお風呂のお湯が付いていた。ルイスの拳よりも大きい。それが宙に浮かんでいる。
 正直、俺でもできない。


「ど、どうやったの?」
「えっとね。こう……持ち上げる感じ」


 分からん。子供の感覚というのを理解したいができない。


「でねでね。これをこうやって」


 指を上に向けてクルクルと回し始めた。
 丸い水が渦を巻き始めて、竜巻のような物がルイスの指の上に出来始めている。


「で、投げるとほら」


 竜巻の形を維持したまま、その水は壁に当たって弾け飛んだ。
 凄い、凄すぎる。これはもう練習とかそういう問題じゃなく、ルイスが持つ能力だろう。


 遠くに離れても魔力を維持させることができ、複雑なイメージも完璧。もう俺を超えたかもしれない。


「ルイスは凄いな〜」
「ママは出来ないの?」
「う〜ん……じゃあちょっと試してみる」


 ルイスが説明した通り、水を持ち上げてみる。


「っ…………あぁ……零れた」
「ちゃんと包まないと落ちちゃうよ」
「う〜ん……難しい」


 魔力で物を包んで、ちぎれないように持ち上げる技術は俺にはない。


「後、他にもできるよ」
「何?」
「ピリピリするの出したり、燃え燃えするの出したり。他にも色んなの」


 ピリピリっていうのは……光魔法? で、燃え燃えは炎……もしかしてルイスは全属性の魔法を使えるのかもしれない。


「凄いな! あ、ここでは使うなよ。後で皆に自慢しよう!」
「自慢……うん! 驚くかなぁ?」
「凄く驚くと思う。凄いなルイスは」
「えへへ」


 頭を撫でると無邪気な笑顔で笑った。
 転生者だとは思えないほど幼い笑顔。きっと成長していくにつれて、脳が発達して前世のように考えたり話したりできるようになるのだろう。
 いつか俺の元から離れていってしまうのだろうか。


「僕はずっとママと一緒にいるよ?」
「うん…………? あれ、喋ってた?」
「ううん? ここに見える」


 ルイスがそういって、何も無い空間を指さした。


「何が見えるんだ?」
「えっと……ママの名前……くろあ? と、20って文字。他にも……かみって。それと、今考えてる事だったり」


 凄いな……相手の状況が見れるのか。ということは、サタナを邪神と気づいたのもこの能力の影響か。


「あ、集中したら僕のも見えた」
「教えてくれる?」
「うん。えっと〜」


 これでルイスの能力も判明するだろう。


「せいちょ〜そくど2倍? と、鑑定? とか、かみのこ……ふかしのて……うぅ〜頭が痛くなってきた……」


 ルイスが頭を抑えて苦しそうにしている。


「だっ、大丈夫!? とりあえず上がろうか。休もう」


 かなり身体的に負担がかかるらしいな。ただ少しは知れたな。
 成長速度2倍に鑑定、神の子。そして不可視の手……か。まるで小説に出てくるスキルみたいだ。


 もしかすると、転生者や転移者は皆そういうのを貰っているのだろうか。


ーーーーー


「あれ? ルイス君どうしたの〜?」
「魔法使ったら頭が痛くなったって。休ませてあげよう」
「魔法使ったのか。あんまり危ないことはさせるなよ?」
「リグに言われなくても分かってる」


 風呂上がり、冷えないようにルイスを布団に寝かせた。しばらく休ませた方が良い。
 小さい子に無理させてしまったな。


「ただいま〜」


 ミリスとバルジが帰ってきた。


「なんだ、もう寝てるのか」
「育ち盛りなんだしいいでしょう? バルジったらルイスと遊ぶことしか考えてないのよ」
「ははは……」


 二人共夕飯の食材を買ってきたみたいだ。


「ご飯にするわね」
「僕も手伝うよ〜」
「クロア、お前も手伝ってきたらどうだ?」
「私は料理とかできないから……」


 俺はとりあえずリグと一緒に夕飯が出来るのを待つだけだ。


「もう20歳なんだし、そろそろ家事全部できるようになった方が良いぞ」
「リグが言うな。働いてすらいないくせに」
「そ、それはクラウディアに貰った金があるからで……」
「二人共〜イチャイチャしないで待ってるんだぞ」


 バルジにニヤニヤした顔で注意された。


 俺とリグはそれほどイチャイチャしてるように見えるのだろうか。よく分からない。
 でも、リグの事は嫌いな訳じゃないし、まあイチャイチャなのかもしれないな。


「おっ、今日の夕飯はシチューとパンみたいだぞ」
「おぉ〜」
「「美味いよな」」


 見事に二人の言葉が重なった。
 だから俺とリグはイチャイチャしてるように見えるんだろう。ペットは飼い主に似るって言うしな。


「リグ、ちゃんとお座りして待ってるんだぞ」
「ん? どこか行くのか?」
「お茶。喉渇いてるだろ?」
「よく分かったな。ありがとう」


 お座りについては気づいてないらしい。犬扱いされるのも慣れたってか。

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